通 達
令和5年度における建設業の安全衛生対策の推進について(要請)
一般社団法人日本クレーン協会会長 殿 基安安発0331第7号
基安労発0331第4号
基安化発0331第3号
厚生労働省労働基準局安全衛生部
安全課長
労働衛生課長
化学物質対策課長
令和5年3月31日
 平素より労働安全衛生行政の推進に格別の御理解と御協力を賜り厚く御礼申し上げます。
 建設業における死亡災害発生状況を見ると、令和4年の死亡者数(令和5年3月速報)は273人となっており前年同期の283人と比べ減少しているものの、全産業に占める割合は死亡者数758人のうち36.0%となるなど、依然として高い状況を継続しています。
 厚生労働省では、従前より、労働安全衛生法令に基づく対策の徹底、建設工事従事者の安全及び健康の確保の推進に関する法律(建設職人基本法)に基づく措置の的確な実施、自主的な安全衛生活動の促進等を図ることにより、建設業における安全衛生対策を推進してきたところですが、労働災害のなお一層の減少に向けて、労働災害防止対策を更に推進することが求められています。
 このような中、2023年4月から2028年3月までの5年間を計画期間とする第14次労働災害防止計画(令和5年3月8日厚生労働省策定、令和5年3月27日公示)が策定されたところ、その初年度である令和5年度における建設業の安全衛生対策の推進に係る留意事項について別添のとおり定めましたので、別添を傘下の関係者等に御周知されること等により、引き続き、建設業の安全衛生対策の推進に特段の御配慮を賜りますよう御協力をよろしくお願いいたします。
 
別添
 
令和5年度における建設業の安全衛生対策の推進に係る留意事項
 
1 労働者の安全確保のための対策
(1) 足場等からの墜落・転落防止対策
 【厚生労働省が行うこと】
  建設業における死亡災害のうち、墜落・転落災害が約4割を占めていることから、墜落・転落災害防止対策の充実強化のため、一側足場の使用範囲の明確化、足場の点検を行う際の点検者の指名の義務化などを内容とする改正労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号。以下「安衛則」という。)が公布されたところ、改正内容について周知・指導を行うとともに、今後改正予定の「手すり先行工法に関するガイドライン」(平成21年4月24日付け基発第0424001号)の周知を図る。
 【事業者が行うこと】
  上記改正内容を含む墜落・転落災害防止に係る安衛則の遵守の徹底を図るとともに、足場からの墜落・転落災害を防止するために「足場からの墜落・転落災害防止総合対策推進要綱」(平成24年2月9日付け基安発0209第2号、平成27年5月20日、令和5年3月14日一部改正)に基づく「より安全な措置」等の措置を適切に講ずること。
  併せて、墜落・転落災害の防止に関するリスクアセスメントに取り組むこと。
(2) はしご・脚立からの墜落・転落防止対策
 【厚生労働省が行うこと】
  建設業における墜落・転落災害による死傷者数のうち、はしご・脚立からの墜落・転落が約3割と最も多くなっているため、「リーフレット「はしごを使う前に/脚立を使う前に」を活用した墜落・転落災害防止の徹底について」(令和3年3月17日付け基安安発0317第2号)に基づく指導、周知を図る。
 【事業者が行うこと】
  「リーフレット「はしごを使う前に/脚立を使う前に」を活用した墜落・転落災害防止の徹底について」(令和3年3月17日付け基安安発0317第2号)に基づく措置を適切に講ずること。
  特に、脚立からの墜落・転落については、令和4年に6件の死亡災害が生じており(※)、その全ての事案において、被災者は、保護帽(ヘルメット)を未着用又は墜落時に脱げた状態であったことから、労働者に脚立を使用させる場合には、適正な保護帽の着用を確認すること。
 (※) 令和5年3月速報時点。脚立から脚立を設置する地面に落ちた事案のみ(不安定な高所で脚立を使用し、高所から落ちた事案は含まない)。
(3) 墜落制止用器具の適切な使用
 【厚生労働省が行うこと】
  事業者に対して、リーフレット等を活用して改正内容の周知を図るともに、「墜落制止用器具の規格」(平成31年厚生労働省告示第11号)に適合した墜落制止用器具の使用を指導する。
 【事業者が行うこと】
  フルハーネス型墜落制止用器具の使用について「墜落制止用器具の安全な使用に関するガイドライン」(平成30年6月22日付け基発0622第2号)に基づく措置を適切に講じるとともに、「墜落制止用器具の規格」に適合した墜落制止用器具の使用を徹底する。
(4) 建設工事の現場等における荷役災害防止対策
 【厚生労働省が行うこと】
  昇降設備の設置及び保護帽の着用が必要な貨物自動車の範囲を最大積載量2トン以上にまで拡大することなどを内容とする改正安衛則等が公布されたところ、改正内容について周知・指導を行う。併せて、荷役作業中の災害を防止するためには、荷主等の立場となる事業者(以下「荷主等」という。)の協力も必要となることから、荷主等を対象として「陸上貨物運送事業における荷役作業の安全対策ガイドライン」(平成25年3月25日付け基発0325第1号)に基づく荷主等による安全設備の設置等の取組の必要性を説明し、同取組の促進を図る。
 【事業者等が行うこと】
  荷主等は、リーフレット「荷役作業の安全確保が急務です!」(令和3年1月18日付け基安安発0118第2号)に示す取組を実施する等により、建設工事の現場等における荷役災害防止対策を適切に講ずること。
(5) 転倒災害の防止
 【厚生労働省が行うこと】
  転倒災害は労働災害のうち最も多い災害の型であるため、「転倒防止・腰痛予防対策の在り方に関する検討会」における検討を踏まえた取組を進める。
 【事業者が行うこと】
  厚生労働省により別途示されるリーフレット等に基づき、転倒災害防止のための職場環境の改善や労働者の身体機能の維持向上に取り組むこと。
(6) 交通労働災害防止対策
 【厚生労働省が行うこと】
  「交通労働災害防止のためのガイドライン」(平成25年5月28日付け基発0528第2号、平成30年6月1日最終改正)について、周知及び指導を図る。
 【事業者が行うこと】
  上記ガイドラインに基づく措置を適切に講ずること。とりわけ、建設資材等の運搬を発注する際は、過積載運行にならないよう実際に荷を運搬する事業者に協力すること。
(7) 建設工事の現場等で交通誘導等に従事する労働者の安全確保
 【厚生労働省が行うこと】
  建設工事の現場等において、交通誘導等に従事する警備業等の労働者が死傷する労働災害が発生していることを踏まえ、令和元年度に作成した警備業の未熟練労働者への安全衛生教育に活用できるマニュアルを周知する。
 【事業者が行うこと】
  建設工事の現場等で交通誘導等に従事する労働者に対する安全衛生教育を実施する場合には、同マニュアルを活用すること。
(8) 車両系建設機械等を運転中の墜落・転落防止対策
 【厚生労働省が行うこと】
  車両系建設機械を運転中に当該機械と一緒に墜落・転落し、運転者が死亡した災害が令和4年に6件発生している(※)。全ての災害が不安定な場所から崖下、河川、調整池等に墜落・転落したものであることから、安衛則に基づく墜落・転落防止等の各種措置の徹底を指導する。
 【事業者が行うこと】
  労働者に車両系建設機械を使用させる場合は、安衛則に基づき、運行経路等を示した作業計画を定め、関係労働者に周知するとともに、転倒又は転落により労働者に危険が生じるおそれのある場合は、誘導者を配置するなど、必要な安全対策を講ずること。
 (※)令和5年3月速報時点。
(9) 専門工事業者等の安全衛生活動支援事業
 【厚生労働省が行うこと】
  建設業における労働災害の被災者の約9割は、店社で規模が30人未満のものに所属していることを踏まえ、建設業労働災害防止協会(以下「建災防」という。)が実施する中小の建設会社(以下「専門工事業者等」という。)における集団指導、現場パトロール等の安全衛生活動を支援するための事業に対して補助を行う。
 【事業者が行うこと】
  専門工事業者等は、上記事業を活用する等により、自主的に安全衛生活動を行うこと。
(10) 高年齢労働者等の労働災害の防止
 【厚生労働省が行うこと】
  「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」(令和2年3月16日付け基安発0316第1号)(以下「エイジフレンドリーガイドライン」という。)及び中小企業による高年齢労働者の安全・健康確保措置を支援するための補助金(エイジフレンドリー補助金)の周知を図る。
 【事業者が行うこと】
  エイジフレンドリーガイドラインに基づき、高年齢労働者の就労状況等を踏まえた安全衛生管理体制の確立、職場環境の改善等の取組を進めること。
(11) 外国人労働者に対する労働災害防止対策
 【厚生労働省が行うこと】
  外国人労働者が容易に理解できる労働安全衛生に関する視聴覚教材等を作成し、「職場のあんぜんサイト」及び厚生労働省ホームページにおいて公表しているため、その教材等を周知するなど、効果的な安全衛生教育の実施を促進する。
 【事業者が行うこと】
  外国人労働者に対する安全衛生教育を行う場合には、これらの教材を活用しつつ、外国人労働者がその内容を確実に理解できる方法で実施すること。
  また、外国人労働者が労働災害に被災した場合に労働者死傷病報告(安衛則様式第23号)を提出する際、被災労働者の国籍・地域及び在留資格を、在留カード等により確認し、記入すること。
(12) 一人親方等の安全衛生対策
 【厚生労働省が行うこと】
  建設業に従事する一人親方等の死亡災害の把握に努めるとともに、令和5年度委託事業により、建設業の一人親方等に対する安全衛生教育に係る支援として全国で研修会を開催するとともに、建設現場において、一人親方等に対して技術指導を行う。
 【事業者等が行うこと】
  建設業に従事する一人親方等については、上記研修会等に積極的に参加すること。
(13) 自然災害の復旧・復興工事における労働災害防止対策
 【厚生労働省が行うこと】
  日本各地で地震、豪雨、台風等による大規模な自然災害が発生しているが、復旧・復興工事における労働災害を防止するためには、工事の進捗状況を踏まえて、現場の実態に即した労働災害防止対策を講ずることが必要となる。このため、建災防に対して、安全衛生専門家による復旧復興工事の巡回指導等を行う事業を補助する。
 【事業者が行うこと】
  自然災害に係る復旧・復興工事では重機による災害、墜落・転落災害等の発生が懸念されることから、当該災害に着目した労働災害防止対策を適切に講ずること。
(14) 伐木等作業の安全対策
 【厚生労働省が行うこと】
  令和2年8月に施行されたチェーンソーによる伐木等作業における特別教育に係る安衛則の一部を改正する省令(平成31年厚生労働省令第11号)及び令和2年1月31日付けで改正した「チェーンソーによる伐木等作業の安全に関するガイドライン」(平成27年12月7日付け基発第1207第3号、令和2年1月31日付け基発0131第1号改正)について、令和5年度も委託事業により、安全衛生推進者等を対象に、伐木等作業の安全対策の理解を深めるための安全対策講習会を全国7会場で開催する。
 【事業者が行うこと】
  伐木等作業を行う場合にあっては、集団指導、安全対策講習会等への参加に留意するともに、伐木作業等における安全対策を適切に講ずること。
(15) 安全な建設機械の普及
 【厚生労働省が行うこと】
  建設機械による災害を防止するためには、近年の技術の進展に伴い開発されている事故防止技術の活用の促進が重要であることから、安全な建設機械の導入を積極的に勧奨する。特に、中小建設事業者等に対しては、「高度安全機械等導入支援補助金」の活用等を積極的に周知する。
 【事業者が行うこと】
  上記補助金の活用を積極的に検討すること。
(16) 建設工事関係者連絡会議の運営等
 【厚生労働省が行うこと】
  「建設工事関係者連絡会議の設置について」(平成26年4月11日付け基安発0411第1号)により、建設工事の安全衛生に配慮した発注、安全衛生経費の確保、統括安全衛生管理の徹底のための相互パトロール、安全衛生教育等について、発注者、施工者及び安全衛生行政関係者が協議し、必要な取組を行う。
(17) 建設職人基本法・基本計画に基づく取組等
 【厚生労働省が行うこと】
  建設工事従事者の安全及び健康の確保の推進に関する法律(平成28年法律第111号)に基づく基本計画の変更があった場合には、当該変更計画について周知する。また、都道府県計画を策定・変更する都道府県及び策定された計画に基づき対策を実行する都道府県に対して他の都道府県の好事例等を紹介するなど取組を支援するとともに、「建設工事関係者連絡会議の運営に当たって配慮すべき事項等について」(令和5年1月31日付け基安安発0131第2号)に基づき都道府県に対して必要な配慮を行う。併せて、都道府県労働局から管内の労働災害発生状況の分析結果、実施する施策等に係る情報について積極的に提供するなど、都道府県との連携の強化を図る。
 
2 労働者の健康確保のための対策、化学物質等による労働災害防止対策
(1) 建設業におけるメンタルヘルス対策の推進
 【厚生労働省が行うこと】
  建設業においても精神障害が多く発生しており、建設業の事業場におけるメンタルヘルス対策の取組割合が47.0%(令和3年)と低調であることから、メンタルヘルスケアの充実等の取組を推進する。
 【事業者が行うこと】
  ストレスチェック制度の実施を徹底するとともに、労働災害を防止する上でもメンタルヘルス対策が有効との調査結果(建災防実施)もあることから、建災防とも連携して、建設工事の現場等におけるメンタルヘルス対策を適切に講ずること。なお、事業主団体等や労災保険の特別加入団体については、当該団体が、傘下の中小企業や労災保険の特別加入者(一人親方等)等に対して、ストレスチェック後の職場環境改善支援等の産業保健サービスを提供する費用の一部を助成する「団体経由産業保健活動推進助成金」が活用できるものであること。
(2) 熱中症対策
 【厚生労働省が行うこと】
  事業者の熱中症予防対策の実施を促進するために、日本産業規格(JIS)に適合した暑さ指数計や熱中症予防に効果的な機器・用品の普及を図る。あわせて、熱中症予防対策への理解を深めるために、先進的な取組の紹介や労働者等向けの教育ツールの提供を行うほか、「職場における熱中症予防基本対策要綱」の周知・指導を行う。また、「STOP!熱中症クールワークキャンペーン」(5月から9月まで、準備期間:4月、重点取組期間:7月)を実施する。また、熱中症に関する資料やオンライン講習動画等を掲載しているポータルサイトを運営する。
 【事業者等が行うこと】
  「職場における熱中症予防基本対策要綱」を踏まえ、暑さ指数の把握とその値に応じた熱中症予防対策を適切に実施すること。あわせて、作業を管理する者及び労働者に対してあらかじめ労働衛生教育を行うほか、衛生管理者等を中心に事業場としての管理体制を整え、発症時・緊急時の措置を確認し、周知する。その他、熱中症予防に効果的な機器・用品の活用も検討すること。
  また、労働者は、熱中症を予防するために、日常の健康管理を意識し、暑熱順化を行ってから作業を行うこと。あわせて、作業中に定期的に水分・塩分を摂取するほか、異変を感じた際には躊躇することなく周囲の労働者や管理者に申し出ること。なお、前述の「団体経由産業保健活動推進助成金」が活用できるものであること。
(3) じん肺予防対策
 【厚生労働省が行うこと】
  令和5年度から令和9年度を期間とする「第10次粉じん障害防止総合対策」に基づき、①呼吸用保護具の適正な選択と使用の徹底、②ずい道等建設工事における粉じん障害防止対策、③じん肺健康診断の着実な実施、④離職後の健康管理等を推進する。
  ずい道等建設工事を対象として、粉じん作業に従事する労働者のじん肺健康診断等の情報を管理するために建災防が運用している「ずい道等建設労働者健康情報管理システム」について、建災防と労働基準監督署が連携の上、未登録事業場に対する登録依頼を実施する。
 【事業者が行うこと】
  粉じん濃度の測定、換気装置等による換気の実施等、また、発注者は必要な経費の積算等、第10次粉じん障害防止総合対策に基づき適切にずい道等建設工事における粉じん対策を講ずること。当該防止総合対策に基づく措置を適切に講ずること。また、解体作業等において、法令上必要であるにもかかわらず現場監督など事業者側の判断により防じんマスクを外させることなく、労働者に防じんマスクを確実に使用させること。
(4) 騒音障害防止対策
 【厚生労働省が行うこと】
  「騒音障害防止のためのガイドライン」(平成4年10月1日付け基発第546号)の改正を予定しており、建設業においては、ずい道工事や土木工事に従事していた労働者などに依然として騒音性難聴の発生がみられることから、改正ガイドラインの周知を図る。
 【事業者が行うこと】
  事業者は、ガイドラインに基づき屋内作業場に限らず、騒音レベルの把握とその結果に応じた騒音ばく露防止対策、健康診断、労働衛生教育等に取り組むこと。なお、前述の「団体経由産業保健活動推進助成金」が活用できるものであること。
(5) 化学物質による健康障害防止対策
 【厚生労働省が行うこと】
  建設業においても、塗装や作業に使用する製剤など多くの化学物質を用いていることから、使用前にラベル・SDSを確認し、その情報に基づき、当該化学物質を用いる作業に応じたリスクアセスメント及び当該結果に基づく措置等を実施するよう周知・指導する。リスクアセスメント及び当該結果に基づく措置等については、代表的な化学物質取扱作業におけるばく露実態を踏まえた有効な保護具の選定等のリスク低減措置を盛り込んだマニュアル作成を行う建災防の取組を支援する。また、引き続き特定化学物質障害予防規則や有機溶剤中毒予防規則等の遵守の徹底を図る。
  塗膜の剥離や掻き落とし作業について、鉛等有害物の有無、気象条件等により工事に要する安全衛生経費・工期は大きく変わることから、発注者に対し、有害物の有無、気象条件等に応じた必要な安全衛生経費の積算等、必要な対応を行うよう求める。
  金属アーク溶接等作業で発生する溶接ヒュームにばく露することによる神経障害等の健康障害を防止するため、特定化学物質障害予防規則の改正内容について周知・指導する。
 【事業者が行うこと】
  建設業においても、塗装や作業に使用する製剤など多くの化学物質を用いていることから使用前にラベル・SDSを確認し、その情報に基づき、当該化学物質を用いる作業に応じたリスクアセスメント及び当該結果に基づく措置等を講ずること。その際、建災防が作成する化学物質管理に関する資料や管理マニュアル等を必要に応じ活用すること。また、引き続き特定化学物質障害予防規則や有機溶剤中毒予防規則等の遵守の徹底を図るため、作業主任者等に必要に応じ能力向上教育等を行うこと。さらに、保護具を着用する作業現場においては、改正省令の施行前ではあるが、店社ごとに化学物質管理者、保護具着用管理責任者の養成に留意すること。
  鉛、六価クロム、PCB等の有害物は上塗りから下塗りまでの塗膜に含有しうることにも留意し、有害物の含有状況や作業内容に応じて適切なばく露防止対策(剥離剤等作業で使用する保護具の着用も含む。)を講ずること。
  また、研磨材の吹き付け(ブラスト)や研磨材を用いた手持ち式動力工具(ディスクサンダー)による鋼構造物の研磨等においては、塗膜中の有害物の有無にかかわらず、粉じん障害防止規則に基づき、労働者に対して、呼吸用保護具(送気マスク等)を使用させる等の措置を講ずること。
  作業者に対して、ラベル等により作業に用いる化学物質の危険性・有害性や適切な保護具の使用について周知するようにすること。
(6) 石綿健康障害予防対策
 【厚生労働省が行うこと】
  石綿障害予防規則等の一部を改正する省令(令和2年7月1日厚生労働省令第134号)を公布しており、一部の規定を除き令和3年4月1日から施行されていることから、改正後の石綿障害予防規則に基づく措置等を実施するよう地方公共団体とも連携して周知・指導を行う。また、建築物の解体・改修工事について、適切に対象選定を行い、遵法意識の確保のための予告なしの立入りを行う。
  建築物の解体・改修作業の発注者への対応について、建築物等の解体・改修工事の前に施工業者に実施が義務付けられている石綿の有無の調査(事前調査)の実施、事前調査の結果、石綿が使用されていることが明らかになった場合に、石綿除去等の工事に必要な費用等を含めた工事の費用、工期、作業の方法に係る発注条件について、施工業者が法令を遵守して工事ができるように配慮するなどの発注者による必要な措置が講じられるよう厚生労働省が作成した周知リーフレットを用いて必要な周知啓発を図る。
 【事業者が行うこと】
  改正後の石綿障害予防規則に基づき、解体・改修工事前の石綿含有の有無の事前調査、石綿事前調査結果報告システムを用いた事前調査結果等の報告、写真等による作業の実施状況の記録の作成及び保存などの措置を徹底するとともに、令和5年10月1日から着工される(工作物については、令和8年1月1日)建築物等の事前調査を実施するために必要な知識を有する者に行わせることが義務付けられることから、建築物石綿含有建材調査者講習の受講を計画的に行うこと。
(7) 危険有害な作業を行う場合に請け負わせる一人親方等への措置
 【厚生労働省が行うこと】
  請負人や同じ場所で作業を行う労働者以外の者に対しても、労働者と同等の保護措置を講ずることを事業者に義務付ける改正省令が令和5年4月1日より施行されるため、事業場に対して指導、周知・啓発を図る。
 【事業者が行うこと】
  改正内容について、理解を進めるとともに、同改正で保護対象となる一人親方等に適切に周知すること。
(8) 職場における新型コロナウイルス感染症の拡大防止対策
 【事業者が行うこと】
  元方事業者はじめ、施工に携わるそれぞれの事業者は、各関係団体において作成された「業種ごとの感染拡大予防ガイドライン」(※)等を実践する際に、厚生労働省において作成した「職場における新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するためのチェックリスト」(令和5年3月13日最終改正。以下「感染防止チェックリスト」という。)等を活用し、労使協力の下、職場の状況に応じた感染防止対策の徹底を図ること。
  なお、感染防止対策の検討に際しては、国土交通省ホームページにおいて建設現場の「3つの密」回避等の取組事例及び新型コロナウイルス感染予防対策に伴う熱中症リスク軽減等のための取組事例等が公開されていることから、これらも参考にすること。
 (※)建設業については、「建設業における新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」(令和2年5月14日国土建第18号(令和3年5月12日改訂)が策定され、建設現場やオフィスにおける感染予防対策の基本的事項が示されている。
 
3 その他の安全衛生に係る対策
(1) 労働安全衛生マネジメントシステムの普及と活用
 【厚生労働省が行うこと】
  労働安全衛生マネジメントシステムに関する国際規格(IS045001)、日本産業規格(JIS Q 45001及びJIS Q 45100)を踏まえて改正した「労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針」(平成11年労働省告示第53号、令和元年7月1日最終改正)の周知を図る。
 【事業者が行うこと】
  同指針に準拠した建設業労働安全衛生マネジメントシステムを導入した企業の労働災害の減少幅は大きく、労働災害防止に効果があることから、建設工事現場の実態を踏まえたシステムである「ニューコスモス」、「中小事業者向けのコンパクトコスモス」の導入・活用に留意すること。
(2) 建設業における安全衛生教育の推進
 【厚生労働省が行うこと】
  建設工事従事者の経験、能力、立場等に応じた継続的な教育の重要性について十分な理解を促しつつ、能力向上教育等の原則実施を促進する。
 【事業者が行うこと】
  「建設業における職長等及び安全衛生責任者の能力向上教育に準じた教育について」(平成29年2月20日付け基発0220第3号)に基づき、建設業における職長等及び安全衛生責任者を対象に、概ね5年ごとに及び機械設備等に大幅な変更のあった場合に、労働災害の防止に係る当該教育を受講させること。
  また、「建設工事に従事する労働者に対する安全衛生教育について」(平成15年3月25日付け基安発第0325001号)に基づき、建設工事に従事する労働者を対象に、建設現場で働く労働者が守らなければならない労働安全衛生法令の遵守事項等の基本的事項について教育を受講させること。
(3) 各種ガイドライン等に基づく安全衛生対策の推進
 【厚生労働省が行うこと】
  建設業の安全衛生対策を推進するために、各種のガイドライン等を発出していることから、現場での活用のための周知等を通じて、ガイドライン等に基づく安全衛生対策を推進する。
 【事業者が行うこと】
  当該ガイドライン等に基づく安全衛生対策を適切に措置すること。
 
(参考)
 
令和4年度における建設業の安全衛生対策の推進に係る関連通達等(略)
 

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