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「高年齢者の労働災害防止のための指針」の周知について(依頼)
一般社団法人日本クレーン協会会長殿 基発0225第1号
厚生労働省労働基準局長 令和8年2月25日
「高年齢者の労働災害防止のための指針」の周知について(依頼)

 

 労働基準行政の運営につきましては、平素より格別の御理解、御協力をいただき厚く御礼申し上げます。
 令和7年5月14日に公布された労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)による改正後の労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第62条の2第2項の規定に基づき、令和8年2月10日、「高年齢者の労働災害防止のための指針」(以下「指針」という。)が別添1のとおり公表され、令和8年4月1日から適用されることとなりました。
 改正の趣旨等は下記のとおりですので、指針に基づき高年齢者の労働災害防止対策が適切に講じられるよう、傘下会員等に対する周知等に御協力をお願いいたします。
 
 
1 趣旨について(指針第1関係)
 この指針は、改正法により事業者の努力義務とされた高年齢者の特性に配慮した作業環境の改善、作業の管理その他の必要な措置について、その適切かつ有効な実施を図るため必要な事項を示したものであること。
 国、事業者、労働者等の関係者においては、一人の被災者も出さないとの基本理念の実現に向け、高年齢者の労働災害を少しでも減らし、労働者一人一人が安全で健康に働くことができる職場環境の実現に向けて取り組むことが求められるものであること。
 事業者は、高年齢者の特性に配慮した作業環境の改善、作業の管理その他の必要な措置を講じるよう努めるとともに、事業場の実情に応じて関係団体の支援を活用し、労働者とも連携・協力して取組を進めることが重要であること。
 
2 事業者が講ずべき措置(指針第2関係)
 事業場における安全衛生管理の基本的体制及び具体的取組の体系については別紙のとおり。
 
3 安全衛生管理体制の確立等(指針第2の1関係)
 事業場における安全衛生管理の基本的体制及び具体的取組の体系については別紙のとおり。
(1) 指針第2の1(1)イ②の「労働者の意見を聴く機会」については、安全衛生の委員会のほか、職場で行っている定例の会議や業務ミーティング等も活用できること。なお、必ずしも会議体の構成をとる必要はなく、安全衛生推進者等、指針第2の1 (1)ア②の安全衛生方針に基づき指定された担当者等を中心に意見の聴取を実施することも考えられること。
(2) 指針第2の1(2)の「危険源の特定等のリスクアセスメントの実施」については、以下の点に留意すること。
ア リスクアセスメントにより職場の改善を進めた事例として、厚生労働省ホームページの事例でわかる職場のリスクアセスメント等を参考にすること。また、リスクアセスメントにおける危険源の洗い出しに際し、厚生労働省ホームページの労働災害事例集やヒヤリ・ハット事例集等を参考にすること。
イ リスクアセスメントの実施に際し、職場環境改善ツールとして「エイジアクション100 改訂版」のチェックリスト(2021年中央労働災害防止協会、別添2)等を活用することも有効であること。また、チェックリストでは業種別に優先的に取り組む事項も示されており、これらも踏まえてチェックリストを活用するものであること。
ウ フレイルとは、加齢とともに、筋力や認知機能等の心身の活力が低下し、生活機能障害や要介護状態等の危険性が高くなった状態であり、ロコモティブシンドロームとは、年齢とともに骨や関節、筋肉等運動器の衰えが原因で「立つ」、「歩く」といった機能(移動機能)が低下している状態のことをいうこと。
エ 「身体負荷を軽減する個人用の装備」については、アシストスーツ等があること。
オ 「職場環境改善等の実施に当たり安全衛生教育と併せて行うこと」の具体的な方法については、例えば、実際に行った職場環境改善の内容と期待される効果について安全衛生教育に含めることが考えられること。
 
4 職場環境の改善(指針第2の2関係)
(1) 指針第2の2(1)の「情報機器作業への対応」については、パソコン等を用いた情報機器作業において、情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン(令和元年7月12日付け基発0712第3号)等を参照すること。
(2) 指針第2の2(2)の「共通的な事項」については、以下の点に留意すること。
ア 注意力や判断力の低下による災害の防止については、複数の作業を同時進行させるような負担はできるだけ避けることが望ましいこと。なお、複数の作業を同時進行させる場合は、管理監督者が優先順位を判断した上で作業指示をすることが望ましいこと。
イ 腰部に過度の負担がかかる作業に係る作業方法については、重量物を取り扱うときの腰痛のリスクアセスメント手法については、JIS規格(日本産業規格JIS Z 8505)を参照してリスクアセスメントを行うことが望ましいこと。
(3) 指針第2の2(2)の「暑熱作業への対応」については、作業の休止時間及び休憩時間を確保し、高温多湿作業場所での作業を連続して行う時間を短縮するよう努めること。また、作業者の水分及び塩分の摂取状況や、作業者の健康状態を確認し、熱中症を疑わせる兆候が表れた場合において速やかに作業の中断その他必要な措置を講ずること。積極的に熱中症が生じた疑いのある作業者を早期に発見する観点から推奨される方法として、責任者等による作業場所の巡視、2人以上の作業者が作業中に互いの健康状態を確認するバディ制の採用、責任者、労働者双方向での定期連絡やこれらの措置の組合せなどが挙げられること。
 
5  高年齢者の健康や体力の状況の把握 (指針第2の3関係)
(1) 指針第2の3(1)の「健康状況の把握」については、以下に掲げる例を参考に、高年齢者が自らの健康状況を把握できるような取組を実施することが望ましいこと。
・労働安全衛生法で定める健康診断の対象にならない者が、地域の健康診断等(特定健康診査等)の受診を希望する場合は、必要な勤務時間の変更や休暇の取得について柔軟な対応をすること。
・労働安全衛生法で定める健康診断の対象にならない者に対して、事業場の実情に応じて、健康診断を実施するよう努めること。
・健康診断の結果について、産業医、保健師等に相談できる環境を整備すること。
・健康診断の結果を高年齢者に通知するに当たり、産業保健スタッフから健康診断項目毎の結果の意味を丁寧に説明する等、高年齢者が自らの健康状況を理解できるようにすること。
・日常的なかかわりの中で、高年齢者の健康状況等に気を配ること。
(2) 指針第2の3(2)の「体力の状況の把握」については、以下の点に留意すること。
ア 体力チェックの範囲については、歩行能力等の筋力、バランス能力、敏捷性等の労働災害に直接的に関与するものとし、事業場の実情に応じて全身持久力、感覚機能や認知機能等を含めて差し支えないこと。
イ 体力チェックの対象については、身体機能の低下は、20代、30代などの若い頃から始まるとの調査結果もあることから、事業場の実情に応じて高年齢者だけでなく青年期、壮年期から体力チェックを実施することが望ましいとしたものであること。
ウ 体力チェックの方法としては、厚生労働省が作成した「転倒等リスク評価セルフチェック票」(別添3)、独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所が開発したステップテストによる簡易体力測定、質問紙による全身持久力評価の手法、文部科学省が実施している新体力テスト等があること。
エ 体力チェックの評価基準については、評価基準を設ける場合、高年齢者が従事する職務の内容等に照らして合理的な水準に設定し、職場環境の改善や高年齢者の体力の向上に取り組むことが重要であり、また、評価に当たっては、仕事内容に対して必要な能力等が有るかという観点にも留意する必要があること。
オ 体力チェックを行う場合には、対象者の状況に応じて高負荷にならないように安全に十分配慮する必要があること。
 
6  高年齢者の健康や体力の状況に応じた対応(指針第2の4関係)
(1) 指針第2の4(2)の「高年齢者の状況に応じた業務の提供」については、以下の点に留意すること。
ア 高年齢者の業務内容の決定に当たり、労働者の健康や体力の状況に応じた対応が求められるが、在宅勤務が長期間に及ぶと筋力等の身体機能が低下する場合があることにも留意すること。
イ 高年齢者の業務内容の決定については、個々の健康や体力の状況に応じ、安全と健康の観点を踏まえた適合業務を高年齢者とマッチングさせるよう努め、継続した業務の提供に配慮することが重要であること。
ウ 何らかの疾病を抱えて治療のための服薬をしながら働く労働者については、治療と就業の両立支援指針(令和8年厚生労働省告示第28号)及び別途示す予定の通達に基づき取り組むよう努めること。
(2) 指針第2の4(3)の「心身両面にわたる健康保持増進措置」については、事業場における労働者の健康保持増進のための指針(昭和63年9月1日健康保持増進のための指針公示第1号、令和8年2月10日最終改正)及び労働者の心の健康の保持増進のための指針(平成18年3月31日健康保持増進のための指針公示第3号、平成27年11月30日最終改正)等に基づき、労働者の健康保持増進対策やメンタルヘルスケアに取り組むこと。その実施に当たっては、以下に掲げる対策例があること。なお、こうした身体機能の維持向上等の措置については労使が協力して取り組むこと。
・健康診断や体力チェックの結果等に基づき、必要に応じて運動指導や栄養指導、保健指導、メンタルヘルスケアを実施すること。なお、栄養指導や保健指導においては、労働者の個別の状況に応じて指導すること。栄養指導や保健指導を行う際には、食べる量、栄養素について、従来の生活習慣病改善の観点だけでなく、フレイルやロコモティブシンドロームの予防の観点からの指導にも留意すること。
・身体機能の低下が認められる高年齢者については、フレイルやロコモティブシンドロームの予防を意識した健康づくり活動の実施等、身体機能の維持向上のための支援を行うことが望ましいこと。例えば、運動をする時間や場所への配慮、トレーニング機器の配置等の支援が考えられること。
・保健師や専門的な知識を有する運動指導の専門家等の指導の下で高年齢者が身体機能の維持向上に継続的に取り組むことを支援すること。
・労働者の健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践する健康経営の観点から企業が労働者の健康づくり等に取り組むこと。
・保険者と企業が連携して労働者の健康づくりを効果的・効率的に実行するコラボヘルスの観点から職域単位の健康保険組合が健康づくりを実施する場合には、連携・共同して取り組むこと。
 
7 安全衛生教育(指針第2の5関係)
(1) 指針第2の5(1)の「高年齢者に対する安全衛生教育」及び5(2)の「管理監督者等に対する教育」について、安全衛生教育の年間計画を立案する際には、単一の災害にのみ焦点を当てるのではなく、腰痛、転倒のような複数の災害を対象としつつ、行動災害一般に共通する教育や、腰痛や転倒に焦点を当てた教育の両方を行うようにすることが望ましいこと。また、高年齢者が作業に慣れることで危機意識が薄くなること、体力に応じた作業の危険性等の気づきを促すことが重要であること。
(2) 指針第2の5(1)の「高年齢者に対する安全衛生教育」については、高年齢者が自らの身体機能等の低下が労働災害リスクにつながることを自覚し、体力維持や生活習慣の改善の必要性を理解するため、以下の項目についても高年齢者への教育の一環として周知することが望ましいこと。
・骨密度が低いと転倒した際に骨折しやすくなり、労働災害リスクが高くなること
・食事や運動などの適切な対応により骨密度を維持することができること
・骨粗鬆症検診について、地域で実施している場合もあり、必要に応じて受診できること
(3) 指針第2の5(2)の「管理監督者等に対する教育」については、管理監督者は、高年齢者が実際に働いている現場を見て、声がけすること等を通じ、作業に無理がないか等を把握することも重要であること。
 
8  労働者と協力して取り組む事項(指針第3関係)
 指針第3の「労働者と協力して取り組む事項」については、労使の協力の下、労働者自身が以下の取組を実情に応じて進めることが必要であること。なお、労使が協力して高年齢者の労働災害を防止するため、ヒヤリ・ハット事例を活用する場合には、厚生労働省ホームページのヒヤリ・ハット事例集等を参考にすること。
・高年齢者が自らの身体機能や健康状況を客観的に把握し、健康や体力の維持管理に努めること。なお、高齢になってから始めるのではなく青年、壮年期から取り組むことが重要であること。
・事業者が行う労働安全衛生法で定める定期健康診断を必ず受けるとともに、短時間勤務等で当該健康診断の対象とならない場合には、地域保健や保険者が行う特定健康診査等を受けるよう努めること。
・事業者が体力チェック等を行う場合には、これに参加し、自身の体力の水準について確認し、気付きを得ること。
・日ごろから足腰を中心とした柔軟性や筋力を高めるためのストレッチや軽いスクワット運動等を取り入れ、基礎的な体力の維持と生活習慣の改善に取り組むこと。
・各事業所の目的に応じて実施されているラジオ体操や転倒予防体操等の職場体操には積極的に参加すること。また、通勤時間や休憩時間にも、簡単な運動を小まめに実施したり、自ら効果的と考える運動等を積極的に取り入れたりすること。
・適正体重を維持する、栄養バランスの良い食事をとる等、食習慣や食行動の改善に取り組むこと。
・青年、壮年期から健康に関する情報に関心を持ち、健康や医療に関する情報を入手、理解、評価、活用できる能力(ヘルスリテラシー)の向上に努めること。
 
9  国、関係団体等による支援の活用(指針第4関係)
(1) 指針第4(3)の「補助金等」については、厚生労働省で実施する補助制度があること。
(2) 指針第4(4)の「社会的評価を高める仕組み」については、安全衛生に係る優良事業場等の表彰等があること。
 
高年齢者の労働災害防止のための指針
令和8年2月10日高年齢者の労働災害防止のための指針公示第1号
 
第1 趣旨
 この指針は、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第62条の2第2項の規定に基づき、同条第1項に規定する高年齢者の特性に配慮した作業環境の改善、作業の管理等、高年齢者の労働災害の防止を図るために事業者が講ずるよう努めなければならない措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るため定めたものである。
 事業者は、この指針の第2に規定する事業者が講ずべき措置のうち、各事業場における高年齢者の就労状況や業務の内容等の実情に応じて、国のほか、労働災害防止団体、独立行政法人労働者健康安全機構(以下「健安機構」という。)等の関係団体等による支援も活用して、高年齢者の労働災害防止対策(以下「高年齢者労働災害防止対策」という。)に積極的に取り組むよう努めるものとする。
 また、労働者が自己の健康を守るための努力の重要性を理解し、積極的に自らの健康づくりに努めることができるよう、事業者は、労働者と連携・協力して取組を進めることが重要である。
 国、関係団体等は、それぞれの役割を担いつつ必要な連携を図りながら、事業者の取組を支援するものとする。
 
第2 事業者が講ずべき措置
事業者は、次の1から5までに掲げる事項について、各事業場における高年齢者の就労状況や業務の内容等の実情に応じて、第4に規定する国、関係団体等による支援も活用して、実施可能な高年齢者労働災害防止対策に積極的に取り組むことが必要である。
1 安全衛生管理体制の確立等
(1) 安全衛生管理体制の確立
ア 経営トップによる方針表明及び体制整備
高年齢者労働災害防止対策を組織的かつ継続的に実施するため、次の事項に取り組むこと。
① 経営トップ自らが、高年齢者労働災害防止対策に取り組む姿勢を示し、企業全体の安全意識を高めるため、高年齢者労働災害防止対策に関する事項を盛り込んだ安全衛生方針を表明すること。
② 安全衛生方針に基づき、高年齢者労働災害防止対策に取り組む組織や担当者を指定する等により、高年齢者労働災害防止対策の実施体制を明確化すること。
イ 安全衛生委員会等における調査審議等
① 安全委員会、衛生委員会又は安全衛生委員会(以下「安全衛生委員会等」という。)を設けている事業場においては、高年齢者労働災害防止対策に関する事項を調査審議すること。
② 安全衛生委員会等を設けていない事業場においては、高年齢者労働災害防止対策について、労働者の意見を聴く機会等を通じ、労使で話し合うこと。
ア及びイを実施するに当たっては、次に掲げる点を考慮すること。
・高年齢者労働災害防止対策を担当する組織としては、安全衛生部門が存在する場合には同部門が想定され、業種又は事業場の規模によっては、人事労務管理部門等が担当することも考えられること。
・高年齢者の健康管理については、産業医を中心とした産業保健体制を活用すること。また、保健師等の活用も有効であること。産業医が選任されていない事業場においては、地域産業保健センター等の外部機関を活用することが有効であること。
・高年齢者が、職場で気付いた労働安全衛生に関するリスクや働く上で負担に感じている事項、自身の不調等を相談できるよう、企業内相談窓口を設置することや、高年齢者が孤立することなくチームに溶け込み、何でも話すことができる風通しの良い職場風土づくりが有効であること。
・働きやすい職場づくりは労働者のモチベーションの向上につながるという認識を関係者で共有することが有効であること。
(2) 危険源の特定等のリスクアセスメントの実施
高年齢者の身体機能等の低下等による労働災害の発生リスクについて、災害事例やヒヤリハット事例から危険源の洗い出しを行い、当該リスクの高さを考慮して高年齢者労働災害防止対策の優先順位を検討(以下「リスクアセスメント」という。)すること。
その際、「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」(平成18年3月10日危険性又は有害性等の調査等に関する指針公示第1号。以下「リスクアセスメント指針」という。)に基づく手法で取り組むよう努めるものとすること。
リスクアセスメントの結果も踏まえ、次の2から5までに掲げる事項を参考に優先順位の高いものから取り組む事項を決めること。なお、リスクアセスメント指針を踏まえ、リスク低減措置については、次のア~エに掲げる優先順位で措置内容を検討の上、実施することに留意すること。
ア 危険な作業の廃止・変更等、設計や計画の段階から労働者の就業に係る危険性又は有害性を除去又は低減する措置
イ 手すりの設置や段差の解消等の工学的対策
ウ マニュアルの整備等の管理的対策
エ 身体負荷を軽減する個人用の装備の使用取組に当たっては、年間推進計画を策定し、当該計画に沿って取組を実施し、当該計画を一定期間で評価し、必要な改善を行うことが望ましいこと。リスクアセスメントの実施に当たっては、次に掲げる点を考慮すること。
・小売業、飲食店、社会福祉施設等のサービス業等の事業場で、リスクアセスメントが定着していない場合には、同一業種の他の事業場の好事例等を参考に、職場環境改善に関する労働者の意見を聴く仕組みを作り、負担の大きい作業、危険な場所、作業フローの不備等の職場の課題を洗い出し、改善につなげる方法があること。
・高年齢者の安全と健康の確保のための職場改善ツールを活用することも有効であること。
・健康状況や体力が低下することに伴う高年齢者の特性や課題を想定し、リスクアセスメントを実施すること。
・高年齢者の状況に応じ、フレイルやロコモティブシンドロームについても考慮する必要があること。
・第三次産業のうち飲食店や社会福祉施設等では、家庭生活と同種の作業を行うため危険を認識しにくいが、作業頻度や作業環境の違いにより、家庭生活における作業とは異なるリスクが潜んでいることに留意すること
・社会福祉施設等で利用者の事故防止に関するヒヤリハット事例の収集に取り組んでいる場合、こうした仕組みを労働災害の防止に活用することが有効であること。
・労働安全衛生マネジメントシステムを導入している事業場においては、労働安全衛生方針の中に、例えば「年齢にかかわらず健康に安心して働ける」等の内容を盛り込んで取り組むこと。
・職場環境の改善等の取組と安全衛生教育を組み合わせて行うことにより労働災害防止の効果が高まることから、職場環境改善等の実施に当たり安全衛生教育と併せて行うことが望ましいこと。
2 職場環境の改善
(1) 身体機能の低下を補う設備・装置の導入
身体機能が低下した高年齢者であっても安全に働き続けることができるよう、事業場の施設、設備、装置等の改善を検討し、必要な対策を講じること。その際、次に掲げる対策の例を参考に、高年齢者の特性やリスクの程度を勘案し、事業場の実情に応じた優先順位をつけて、施設、設備、装置等の改善に取り組むこと。
〈共通的な事項〉
・視力や明暗の差への対応力が低下することを前提に、通路を含めた作業場所の照度を確保するとともに、照度が極端に変化する場所や作業の解消を図ること。
・階段には手すりを設け、可能な限り通路の段差を解消すること。
・床や通路の滑りやすい箇所に防滑素材(床材や階段用シート)を採用すること。また、滑りやすい箇所で作業する労働者に防滑靴を利用させること。併せて、滑りの原因となる水分・油分を放置せずに、こまめに清掃すること。
・墜落制止用器具、保護具等の着用を徹底すること。
・やむをえず、段差や滑りやすい箇所等の危険箇所を解消することができない場合には、安全標識や危険箇所の掲示により注意喚起を行うこと。
〈危険を知らせるための視聴覚に関する対応〉
・警報音等は、年齢によらず聞き取りやすい中低音域の音を採用する、音源の向きを適切に設定する、指向性スピーカーを用いる等の工夫をすること。
・作業場内で定常的に発生する騒音(背景騒音)の低減に努めること。
・有効視野を考慮した警告・注意機器(パトライト等)を採用すること。
〈暑熱な環境への対応〉
・一般に、高年齢者は暑さや水分不足に対する感覚機能が低下しており、暑さに対する身体の調節機能も低下しているので、涼しい休憩場所を整備し、利用を勧奨すること。
・保熱しやすい服装は避け、通気性の良い服装を準備すること。
・熱中症の初期症状を把握するのに有効なウェアラブルデバイス等のIoT機器を利用すること。
〈重量物取扱いへの対応〉
・補助機器等の導入により、人力取扱重量を抑制すること。
・不自然な作業姿勢を解消するために、作業台の高さや作業対象物の配置を改善すること。
・身体機能を補助する機器(アシストスーツ等)を導入すること。
〈介護作業等への対応〉
・リフト、スライディングシート等の導入により、抱え上げ作業を抑制すること。
・労働者の腰部負担を軽減するための移乗支援機器等を活用すること。
〈情報機器作業への対応〉
・パソコン等を用いた情報機器作業では、照明、画面における文字サイズの調整、必要な眼鏡の使用等によって適切な視環境や作業方法を確保すること。
(2) 高年齢者の特性を考慮した作業管理
筋力、バランス能力、敏捷性、全身持久力、感覚機能及び認知機能の低下等の高年齢者の特性を考慮して、作業内容等の見直しを検討し、実施すること。その際、以下に掲げる対策の例を参考に、高年齢者の特性やリスクの程度を勘案し、事業場の実情に応じた優先順位をつけて対策に取り組むこと。
〈共通的な事項〉
・事業場の状況に応じて、勤務形態や勤務時間を工夫することで高年齢者を就労しやすくすること(短時間勤務、隔日勤務、交替制勤務等)。
・高年齢者の特性を踏まえ、ゆとりのある作業スピード、無理のない作業姿勢等に配慮した作業マニュアルを策定し、又は改定すること。
・注意力や集中力を必要とする作業について作業時間を考慮すること。
・注意力や判断力の低下による災害を防止するため、複数の作業を同時進行させる場合の負担や優先順位の判断を伴うような作業に係る負担を考慮すること。
・腰部に過度の負担がかかる作業に係る作業方法については、重量物の小口化、取扱回数の減少等の改善を図ること。
・身体的な負担の大きな作業では、定期的な休憩の導入や作業休止時間の運用を図ること。
〈暑熱作業への対応〉
・一般に、高年齢者は暑さや水分不足に対する感覚機能が低下しており、暑さに対する身体の調節機能も低下しているので、脱水症状を生じさせないよう意識的な水分補給を推奨すること。
・健康診断の結果を踏まえた対応はもとより、管理者を通じて始業時の体調確認を行い、体調不良時に速やかに申し出るよう日常的に指導すること。
・熱中症のおそれがある作業者の早期発見のための体制整備、熱中症の重篤化を防止するための措置の実施手順の作成、これらの体制及び手順の関係作業者への周知を徹底すること。
〈情報機器作業への対応〉
・情報機器作業が過度に長時間にわたり行われることのないようにし、作業休止時間を適切に設けること。
・データ入力作業等相当程度拘束性がある作業においては、個々の労働者の特性に配慮した無理のない業務量とすること。
3 高年齢者の健康や体力の状況の把握
(1) 健康状況の把握
労働安全衛生法で定める雇入時及び定期の健康診断を確実に実施すること。その他、健康診断の結果を高年齢者に通知するに当たり、産業保健スタッフから健康診断項目毎の結果の意味を丁寧に説明する等、高年齢者が自らの健康状況を把握できるような取組を実施することが望ましいこと。
(2) 体力の状況の把握
高年齢者の労働災害を防止する観点から、事業者、高年齢者双方が当該高年齢者の体力の状況を客観的に把握し、事業者はその体力に合った作業に従事させるとともに、高年齢者が自らの身体機能の維持向上に取り組めるよう、主に高年齢者を対象とした体力チェックを継続的に行うことが望ましいこと。また、身体機能の低下は高年齢者に限られるものではないことから、事業場の実情に応じて、青年、壮年期から体力チェックを実施することが望ましいこと。
体力チェックの対象となる労働者から理解が得られるよう、わかりやすく丁寧に体力チェックの目的を説明するとともに、事業場における方針を示し、運用の途中で適宜当該方針を見直すこと。
具体的な体力チェックの方法として次に掲げるようなものが挙げられること。
・労働者の気付きを促すため、加齢による心身の衰えのチェック(フレイルチェック)等を導入すること。
・転倒等のリスクを確認する身体機能セルフチェック、労働者が自ら体力の状況を把握できるオンラインツール、質問紙による推定等を活用すること。
・事業場の働き方や作業ルールにあわせた体力チェックを実施すること。この場合、安全作業に必要な体力について定量的に測定する手法及び評価基準は、安全衛生委員会等の審議等を踏まえてルールを構築することが望ましいこと。体力チェックの実施に当たっては、次に掲げる点を考慮すること。
・体力チェックの評価基準を設けない場合は、体力チェックを高年齢者の気付きにつなげるとともに、業務に従事する上で考慮すべきことを検討する際に活用することが考えられること。
・体力チェックの評価基準を設ける場合は、高年齢者が従事する職務内容等に照らして合理的な水準に設定し、職場環境の改善や高年齢者の体力の向上に取り組むことが必要であること。
・作業を行う労働者の体力に幅があることを前提とし、安全に行うために必要な体力の水準に満たない労働者がいる場合は、当該労働者の体力でも安全に作業できるよう職場環境の改善に取り組むとともに、当該労働者も作業に必要な体力の維持向上に取り組む必要があること。
・高年齢者が病気や怪我による休業から復帰する際、休業前の体力チェックの結果を休業後のものと比較することは、体力の状況等の客観的な把握、体力の維持向上への意欲や作業への注意力の高まりにつながり、有効であること。
(3) 健康や体力の状況に関する情報の取扱い
健康情報等を取り扱う際には、「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」(平成30年9月7日労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱い指針公示第1号)を踏まえた対応をしなければならないことに留意すること。
また、労働者の体力の状況の把握に当たっては、個々の労働者に対する不利益な取扱いを防ぐため、労働者本人の同意の取得方法や労働者の体力の状況に関する情報の取扱方法等の事業場内手続について安全衛生委員会等や労働者の意見を聴く機会等の場を活用して定める必要があること。
例えば、労働者の健康や体力の状況に関する医師等の意見を安全衛生委員会等に報告する場合等に、労働者個人が特定されないよう医師等の意見を集約又は加工する必要があること。
4 高年齢者の健康や体力の状況に応じた対応
(1) 個々の高年齢者の健康や体力の状況を踏まえた措置
健康や体力の状況を踏まえて必要に応じ就業上の措置を講じること。
脳・心臓疾患が起こる確率は加齢にしたがって徐々に増加するとされており、高年齢者については基礎疾患の罹患状況を踏まえ、労働時間の短縮や深夜業の回数の減少、作業の転換等の措置を講じること。
就業上の措置を講じるに当たっては、次に掲げる点を考慮すること。
・健康診断や体力チェック等の結果、当該高年齢者の労働時間や作業内容を見直す必要がある場合は、産業医等の意見を聴いて実施すること。
・業務の軽減等の就業上の措置を実施する場合は、高年齢者に状況を確認して、十分な話合いを通じて当該高年齢者の了解が得られるよう努めること。また、健康管理部門と人事労務管理部門との連携にも留意すること。
(2) 高年齢者の状況に応じた業務の提供
高年齢者に適切な就労の場を提供するため、職場環境の改善を進めるとともに、職場における一定の働き方のルールを構築するよう努めること。
労働者の健康や体力の状況は加齢にしたがって個人差が拡大するとされており、高年齢者の業務内容の決定に当たっては、個々の健康や体力の状況に応じて、安全と健康の観点を踏まえた適合する業務を高年齢者とマッチングさせるよう努め、継続した業務の提供に配慮すること。
個々の労働者の状況に応じた対応を行う際には、業務内容に応じて、健康や体力の状況のほか、職場環境の改善状況も含め検討することとし、次に掲げる点を考慮すること。
・業種特有の就労環境に起因する労働災害があることや、労働時間の状況や作業内容により、個々の労働者の心身にかかる負荷が異なることに留意すること。
・危険有害業務を伴う労働災害リスクの高い製造業、建設業、運輸業等の労働環境と、第三次産業等の労働環境とでは、必要とされる身体機能等に違いがあることに留意すること。例えば、運輸業等においては、運転適性の確認を重点的に行うこと等が考えられること。
・何らかの疾病を抱えながらも働き続けることを希望する高年齢者の治療と就業の両立については、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和41年法律第132号)に基づく治療と就業の両立支援指針(令和8年厚生労働省告示第28号)に基づき取り組むよう努めること。
・複数の労働者で業務を分けあう、いわゆるワークシェアリングを行うことにより、高年齢者自身の健康や体力の状況、働き方のニーズに対応することも考えられること。
(3) 心身両面にわたる健康保持増進措置
3 (2)も踏まえ、集団及び個々の高年齢者を対象として、身体機能等の維持向上のための取組を実施することが望ましいこと。
併せて、「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」(昭和63年9月1日健康保持増進のための指針公示第1号)及び「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(平成18年3月31日健康保持増進のための指針公示第3号)に基づき、事業場における健康保持増進対策の推進体制の確立を図ること、健康診断の結果等に基づき、必要に応じて運動指導や栄養指導、保健指導、メンタルヘルスケアを実施すること、その他労働者の心身両面にわたる健康保持増進措置を実施すること等、事業場として組織的に労働者の心身両面にわたる健康保持増進に取り組むよう努めること。
5 安全衛生教育
(1) 高年齢者に対する教育
労働安全衛生法で定める雇入れ時等の安全衛生教育、一定の危険有害業務において必要となる技能講習や特別教育を確実に行うこと。
高年齢者を対象とした教育においては、作業内容とそのリスクについての理解を得やすくするため、十分な時間をかけ、写真や図、映像等の文字以外の情報も活用すること。中でも、高年齢者が、再雇用や再就職等により経験のない業種や業務に従事する場合には、特に丁寧な教育訓練を行うこと。
併せて、加齢に伴う健康や体力の状況の低下や個人差の拡大を踏まえ、次に掲げる点を考慮して安全衛生教育を計画的に行い、その定着を図ることが望ましいこと。
・高年齢者が自らの身体機能等の低下が労働災害リスクにつながることを自覚し、体力維持や生活習慣の改善の必要性を理解することが重要であること。
・高年齢者が働き方や作業ルールにあわせた体力チェックの実施を通じ、自らの身体機能等の客観的な認識の必要性を理解することが重要であること。
・高年齢者にみられる転倒災害は危険に感じられない場所で発生していることも多いため、安全標識や危険箇所の掲示に留意するとともに、わずかな段差等の周りの環境にも常に注意を払うよう意識付けをすることが有効であること。
・高年齢者に対して、第三次産業の多くでみられる軽作業や危険と認識されていない作業であっても、災害に至る可能性があることを周知することが有効であること。
・勤務シフト等から集合研修の実施が困難な事業場においては、視聴覚教材を活用した教育も有効であること。
・危険予知訓練(KYT)を通じた危険感受性の向上教育や、VR技術を活用した危険体感教育の活用も考えられること。
・介護を含むサービス業ではコミュニケーション等の対人面のスキルの教育も労働者の健康の維持に有効であると考えられること。
・IT機器に詳しい若年労働者と現場で培った経験を持つ高年齢者がチームで働く機会の積極的設定等を通じ、相互の知識経験の活用を図ること。
(2) 管理監督者等に対する教育事業場内で教育を行う者や高年齢者が従事する業務の管理監督者、高年齢者と共に働く各年代の労働者に対しても、高年齢者の特性と高年齢者に対する安全衛生対策についての教育を行うことが望ましいこと。
この際、高年齢者労働災害防止対策の具体的内容の理解に資するよう、高年齢者を支援する機器や装具に触れる機会を設けることが望ましいこと。
事業場内で教育を行う者や高年齢者が従事する業務の管理監督者に対しての教育内容は次に掲げる点が考えられること。
・加齢に伴う労働災害リスクの増大への対策についての教育
・管理監督者の責任、労働者の健康問題が経営に及ぼすリスクについての教育
また、こうした要素を労働者が主体的に取り組む健康づくりとともに体系的キャリア教育の中に位置付けることも考えられること。
併せて、高年齢者が脳・心臓疾患を発症する等緊急の対応が必要な状況が発生した場合に、適切に対応をとることができるよう、事業場において救命講習や緊急時対応の教育を行うことが望ましいこと。
 
第3 労働者と協力して取り組む事項
 高年齢者の労働災害を防止する観点から、事業者は、高年齢者の特性に配慮した作業環境の改善、作業の管理その他の必要な措置を講ずるように努める必要があり、個々の労働者は、自らの身体機能等の低下が労働災害リスクにつながり得ることを理解し、労使の協力の下で取組を進めることが必要である。
 
第4 国、関係団体等による支援の活用
 事業者は、第2に掲げる事項に取り組むに当たり、次に掲げる国、関係団体等による支援策を有効に活用することが望ましいこと。
(1) 中小企業や第三次産業の事業場における高年齢者労働災害防止対策の取組事例の活用
厚生労働省、労働災害防止団体及び独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(以下「JEED」という。)のホームページ等で提供されている中小企業や第三次産業を含む多くの事業場における高年齢者労働災害防止対策の積極的な取組事例を参考にすること。
(2) 個別事業場に対するコンサルティング等の活用
中央労働災害防止協会や業種別労働災害防止団体等の関係団体では、JEED等の関係機関と協力して、安全管理士や労働安全コンサルタント、労働衛生コンサルタント等の専門家による個別事業場の現場の診断と助言を行っているので、これらの支援を活用すること。
また、健康管理に関しては、健安機構の産業保健総合支援センターにおいて、医師、保健師、衛生管理者等の産業保健スタッフに対する研修を実施するとともに、事業場の産業保健スタッフからの相談に応じており、労働者数50人未満の小規模事業場に対しては、地域産業保健センターにおいて産業保健サービスを提供しているので、これらの支援を活用すること。
(3) 補助金等の活用
高年齢者が安心して安全に働く職場環境の整備に意欲のある中小企業における取組を支援する補助制度を活用して、職場環境の改善を図ること。
(4) 社会的評価を高める仕組みの活用
高年齢者のための職場環境の改善の取組を評価項目として考慮した労働災害防止に係る表彰、好事例コンクール等高年齢者労働災害防止対策に積極的に取り組む事業場の社会的評価を高める仕組みを活用すること。
(5) 職域保健と地域保健の連携及び健康保険の保険者との連携の仕組みの活用
職域保健と地域保健の連携を強化するため、各地域において地域・職域連携推進協議会が設置され、地域の課題や実情に応じた連携が進められているところである。また、健康保険組合等の保険者と企業が連携して労働者の健康づくりを推進する取組も行われている。
具体的には、保険者による事業者に対する支援策等の情報提供や、保健所等の保健師や管理栄養士等の専門職が、事業場と協働して、事業協同組合等が実施する研修やセミナーで、地域の中小事業者に対して職場における健康づくり・生活習慣改善についての講話や保健指導を実施するといった取組を活用するとともに、事業者においても、関係機関が提供する情報を基に、各自治体が取り組む各種支援策等を活用することが望ましいこと。
 
別添2及び別添3については、厚生労働省ホームぺージからご確認ください。
 
 

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