労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第44条及び第45条の規定による定期の健康診断(以下「定期健康診断」という。)における有所見率(健康診断を受診した労働者のうち異常の所見(以下「有所見」という。)のある者(以下「有所見者」という。)の占める割合をいう。以下同じ。)は,平成20年には51%に達し,半数を超える労働者が有所見者という状況となっています。
また,脳血管疾患及び虚血性心疾患等(以下「脳・心臓疾患」という。)による労災支給決定件数も高水準にあり,脳・心臓疾患の発生防止の徹底を図ることが必要な状況にあります。
さらに,第11次労働災害防止計画においては,「労働者の健康確保対策を推進し,定期健康診断における有所見率の増加傾向に歯止めをかけ,減少に転じさせること」を目標の1つとしているところです。
これらの状況から,労働者の健康保持増進対策を適切に推進し,定期健康診断における有所見率の改善に向けた取組を促進することが必要となっています。
貴団体におかれましては,会員事業場において,別添による定期健康診断における有所見率の改善に向けた取組が実施されるよう,業界紙,講演会等による啓発,情報提供等の継続的な取組について,特段の御協力をお願いいたします。
また,全国労働衛生週間及びその準備期間における重点的な取組の実施につきましても,併せて,特段の御協力をお願いいたします。
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趣旨等 |
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定期健康診断における有所見率が増加し続けていること及び脳・心臓疾患による労災支給決定件数も高水準にある現状にかんがみると,脳・心臓疾患の発生防止の徹底を図るには,長時間労働者に対する労働安全衛生法(昭和47年法律第57号。以下「法」という。)第66条の8の規定に基づく面接指導等の実施だけでなく,定期健康診断における脳・心臓疾患関係の主な検査項目(血中脂質検査,血圧の測定,血糖検査,尿中の糖の検査及び心電図検査をいう。以下同じ。)における有所見となった状態の改善(以下「有所見の改善」という。)に取り組むことが重要である。また,職業性疾病としての熱中症等の予防においても,有所見の改善が重要である。
有所見の改善のためには,事業者が行う保健指導等に基づき,労働者が栄養改善,運動等に取り組むこと,また,事業者が就業上の措置を適切に行うことなどが必要である。
以上を踏まえ,下記2により,定期健康診断における有所見率の改善に向けて取組を行うものである。 |
2 |
事業者及び労働者による有所見率改善の取組 |
(1) |
事業者は,次の事項について確実に取り組むこと。 |
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ア 定期健康診断実施後の措置 |
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法第66条の4の規定に基づく有所見についての医師からの意見聴取及び法第66条の5の規定に基づく作業の転換,労働時間の短縮等の措置は,労働者の健康保持及び有所見に関係した疾病発生リスクの低減のみならず,有所見の改善にも資することを踏まえ,事業者はこれらを適切に実施しなければならないものであること。 |
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イ 定期健康診断の結果の労働者への通知 |
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労働者が,その健康の保持増進のための取組に積極的に努めるようにするためには,自らの健康状況を把握することが重要であることも踏まえ,事業者は,法第66条の6の規定に基づき,定期健康診断の結果を労働者に通知しなければならないものであること。 |
(2) |
事業者及び労働者は,次の事項について取り組むよう努めること。 |
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ア 定期健康診断の結果に基づく保健指導 |
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(ア) |
法第66条の7第1項の規定に基づく医師又は保健師による保健指導(以下単に「保健指導」という。)は,これにより有所見者が,食生活の改善等に取り組むこと,医療機関で治療を受けることなどにより,有所見の改善に資するものであることから,事業者の努力義務であることも踏まえ,事業者は適切に実施するよう努めること。
したがって,保健指導は,再検査若しくは精密検査又は治療の勧奨にとどまらず,有所見の改善に向けて,食生活等の指導,健康管理に関する情報提供を十分に行うこと。 |
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(イ) |
保健指導は,事業者が実施するだけでなく,これに基づき労働者が自ら健康の保持に取り組まなければ予期した効果を期待できないことから,労働者は,法第66条の7第2項の規定に基づき,定期健康診断の結果及び保健指導を利用して,その健康の保持に努めること。 |
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イ 健康教育等 |
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(ア) |
法第69条第1項の規定に基づく健康教育及び健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るため必要な措置(以下「健康教育等」という。)は,これにより労働者が栄養改善,運動等に取り組むことにより,有所見の改善に資するものであることから,事業者の努力義務であること等も踏まえ,事業者は適切に実施するよう努めること。
なお,健康教育等は,有所見者のみならず,毎年検査値が悪化するなど有所見者となることが懸念される者についても重点的に行うこと。
おって,健康教育等の実施においては,脳・心臓疾患関係の主な検査項目の有所見率がおおむね増加傾向にあることから,当該有所見の改善に係る健康教育等を重点的に行うこと。
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(イ) |
健康教育等は事業者が実施するだけでなく,これに基づき労働者自ら健康の保持増進に取り組まなければ予期した効果を期待できないことから,労働者は,法第69条第2項の規定に基づき,事業者が講ずる措置を利用して,その健康の保持増進に努めること。 |
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ウ 留意事項 |
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事業者は,保健指導及び健康教育等においては,個々の労働者の状況に応じて,労働者が取り組むべき具体的な内容を示すとともに,その後の労働者の取組状況を把握し,必要に応じて指導を行うこと。
また,(1)イの際,事業者は,保健指導及び健康教育等において示された労働者自身が取り組むべき事項を実施するよう労働者を指導すること。 |
(3) |
計画的かつ効果的な実施のための取組事項事業者は,(1)及び(2)の事項を計画的かつ効果的に実施するため,次の事項について取り組むよう努めること。 |
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ア 計画的な取組 |
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(ア) |
事業者は,(1)及び(2)の事項のうち事業者が取り組む事項(以下「事業者の取組事項」という。)への取組について計画を作成するなど,計画的に取り組むこと。 |
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(イ) |
事業者は,毎月,産業医が作業場等の巡視を行う日などにおいて,計画的に,健康教育等を行うとともに,(2)の事項のうち労働者が取り組む事項の実施状況を確認すること。 |
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(ウ) |
事業者は,全国労働衛生週間及びその準備期間において,有所見率改善の取組を効果的に推進するため,重点的に,社内誌,講演会,電子メール,掲示等による労働者への啓発等を行うとともに,自主点検表等を活用した(1)及び(2)の事項の実施状況の点検を行うこと。 |
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イ 取組状況の評価 |
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事業者は,労働者ごと及び事業場全体について,実施した保健指導及び健康教育等の内容,労働者自身の取組状況,定期健康診断の結果等を基に,事業者の取組事項の実施状況及びその結果を評価し,その後充実強化すべき事項等をその後のアアの計画に反映させること。その際,衛生委員会等を活用すること。
なお,定期健康診断の結果の評価においては,必要に応じて,検査値が改善傾向であるかについても評価すること。 |
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ウ 高齢者の医療の確保に関する法律に基づく施策との連携 |
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保健指導及び健康教育等については,高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号)に基づき,医療保険者は,40歳以上の加入者に対し,生活習慣病に着目した特定健康診査及び特定保健指導を実施することが義務付けられており,平成20年1月17日付け基発第0117001号・保発第0117003号「特定健康診査等の実施に関する協力依頼について(依頼)」を踏まえ,事業者は,これらの施策との連携にも留意すること。 |