時下ますます御清祥のこととお慶び申し上げます。
貴団体におかれましては,労働基準行政の推進につき,日頃から御協力を賜り厚くお礼申し上げます。
さて,派遣労働者の労働条件及び安全衛生の確保については,厚生労働省としては,これまでも派遣元事業主及び派遣先事業主の双方に対して,その責任区分に対応した労働基準法,労働安全衛生法等の遵守徹底を図ってきたところです。
こうした中,今般,派遣労働の実態並びに「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」及び「派遣先が講ずべき措置に関する指針」を踏まえ,派遣労働者の労働条件及び安全衛生の確保に当たり派遣元事業主及び派遣先事業主が各自,又は両者が連携して実施すべき重点事項等について取りまとめた平成21年3月31日付け基発第0331010号「派遣労働者に係る労働条件及び安全衛生の確保について」を発出し,都道府県労働局に対して別添のとおり通知したところです。
つきましては,貴団体におかれましても,傘下会員事業場等に対し,本通知で示した重点事項等の周知徹底について御協力を賜りますようお願い申し上げます。 |
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別添 |
基発第0331010号
平成21年3月31日 |
都道府県労働局長殿 |
厚生労働省労働基準局長 |
派遣労働者に係る労働条件及び安全衛生の確保について |
派遣労働者の労働条件及び安全衛生の確保については,これまでも派遣元事業主及び派遣先事業主の双方に対して,その責任区分に対応した労働基準法(以下「労基法」という。),労働安全衛生法(以下「安衛法」という。)等の遵守徹底を図ってきたところであるが,依然として法廷労働条件の履行確保上の問題がみられるほか,派遣労働者の数が増加する中で派遣労働者に係る労働災害が近年増加している。
また,今般「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」(平成11年労働省告示第137号。以下「派遣元指針」という。)及び「派遣先が講ずべき措置に関する指針」(平成11年労働省告示第138号。以下「派遣先指針」という。)が改正されたところである。
このため,派遣労働の実態並びに改正後の派遣元指針及び派遣先指針を踏まえ,派遣労働者の労働条件及び安全衛生の確保に当たり派遣元事業主及び派遣先事業主が各自,又は両者が連携して実施すべき重点事項等について,下記のとおり取りまとめたので,職業安定行政の需給調整部署とも連携を図りつつ,監督指導,個別指導,集団指導等によりこの内容を徹底し,派遣労働者の労働条件及び安全衛生の確保に遺憾なきを期されたい。 |
記 |
第1 派遣労働者の労働条件及び安全衛生の確保に係る基本的な考え方 |
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派遣労働者にも当然に労基法,安衛法等の労働基準関係法令は適用され,原則として派遣労働者と労働契約関係にある派遣元事業主がその責任を負うものであるが,派遣労働者の危険又は健康障害を防止するための措置など労働者派遣の実態から派遣元事業主に責任を問いえない事項,派遣労働者の保護の実効を期する上から派遣先事業主に責任を負わせることが適切な事項については,労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(以下「労働者派遣法」という。)第3章第4節に定める労基法等の適用に関する特例等(以下「特例」という。)によって派遣先事業主に責任を負わせることとし,派遣元事業主と派遣先事業主との間で適切に責任を区分して派遣労働者の保護を図っているところである。
しかしながら,この特例についていまだ十分に理解がなされていないことや派遣元事業主と派遣先事業主との連携が十分に図られていないことなどから,労働時間管理が適正になされず割増賃金が支払われない,機械等の安全措置が講じられていない等の問題がみられるほか,特例が適用されない事項についても,賃金の不適正な控除,就業規則の未作成,安全衛生管理体制の未整備等の問題が認められる。
派遣労働者の労働条件及び安全衛生の確保に当たっては,派遣元事業主及び派遣先事業主が,自らの責任を十分に理解しそれぞれの義務を果たすとともに,労働者派遣契約の相手方の責任についても互いに理解し,その上で適切な連携を図ることが重要となるものである。特に,派遣労働者の安全衛生を確保するためには,派遣先事業主が派遣労働者の危険又は健康障害を防止するための措置を現場の状況に即し適切に講ずることが重要である。
このため,派遣労働の実態等を踏まえ,派遣労働者の労働条件及び安全衛生の確保に当たり派遣元事業主及び派遣先事業主が各自,又は両者が連携して実施すべき重点事項等について取りまとめたものであり,労働基準行政としては,派遣元事業主又は派遣先事業主に対し,これらの事項を中心にその責任に応じて適切に派遣労働者の労働条件及び安全衛生の確保を図るべきことを指導することとするものであること。 |
第2 派遣労働者の労働条件の確保に係る重点事項
……(略) |
第3 派遣労働者の安全衛生の確保に係る重点事項 |
1 |
派遣元事業者が実施すべき重点事項
派遣元事業者は,雇入れ時の安全衛生教育,一般健康診断の実施など安衛法上の措置を講ずる必要があること。 |
(1) |
派遣労働者を含めた安全衛生管理体制の確立(安衛法第10条,第12条,第13条,第18条等)
派遣労働者を含めて常時使用する労働者数を算出し,それにより算定した事業場の規模等に応じて,①総括安全衛生管理者,衛生管理者,産業医等の選任等,②衛生委員会の設置等を行うこと。
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(2) |
安全衛生教育の実施等(安衛法第59条,3.参照) |
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ア |
雇入れ時の安全衛生教育の適切な実施
派遣労働者を雇い入れたときは,当該派遣労働者に対し,遅滞なく雇入れ時の安全衛生教育を適切に行うこと。 |
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イ |
作業内容変更時の安全衛生教育の適切な実施
派遣労働者の派遣先事業場を変更するなどその作業内容を変更したときは,当該派遣労働者に対し,遅滞なく作業内容変更時の安全衛生教育を適切に行うこと。 |
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ウ |
安全衛生教育の内容等
雇入れ時及び作業内容変更時の安全衛生教育は,当該業務に関して,作業内容や取り扱う機械等,原材料等の取扱い方法,それらの危険性又は有害性等に応じて,派遣労働者の安全又は衛生を確保するために必要な内容及び時間をもって行うこと。
そのため,これらの情報について派遣先事業者から入手するとともに,教育カリキュラムの作成支援,講師の紹介や派遣,教育用テキストの提供,教育用の施設や機材の貸与など派遣先事業者から必要な協力を得ること。 |
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エ |
派遣先事業者に安全衛生教育の実施を委託した場合の対応
派遣先事業者に対し,雇入れ時等の安全衛生教育の実施を委託した場合は,その実施状況について確認すること。 |
(3) |
就業制限(安衛法第61条,3.参照)
派遣労働者が就業制限業務に就くことが予定されているときには,当該業務に係る有資格者を派遣すること。 |
(4) |
一般健康診断(安衛法第66条第1項に基づく健康診断をいう。以下同じ。)の実施及びその結果に基づく事後措置(3.参照)
常時使用する派遣労働者に対し,一般健康診断を実施し,その結果に基づく事後措置を講ずること。 |
(5) |
医師による面接指導等(安衛法第66条の8,第66条の9)
派遣労働者の時間外・休日労働時間に応じて,時間外・休日労働時間が1月当たり100時間を超える派遣労働者であって申出を行ったものに係る医師による面接指導等を適切に実施すること。 |
(6) |
労働者死傷病報告の提出等(派遣労働者が労働災害に被災した場合)(安衛法第100条)
派遣労働者が労働災害に被災した場合,派遣先事業者に対し,所轄労働基準監督署に提出した労働者死傷病報告の写しの送付を求め,その内容を踏まえて労働者死傷病報告を作成し,派遣元の事業場を所轄する労働基準監督署に提出すること。 |
2 |
派遣先事業者が実施すべき重点事項
派遣労働者の安全衛生を確保するためには,派遣先事業者が,派遣労働者は一般的に経験年数が短いことに配慮し,派遣労働者の危険又は健康障害を防止するための措置等を現場の状況に即し適切に講ずることが重要であること。 |
(1) |
派遣労働者を含めた安全衛生管理体制の確立(安衛法第10条,第11条,第12条,第13条,第17条,第18条等)
派遣労働者を含めて常時使用する労働者数を算出し,それにより算定した事業場の規模等に応じて, |
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① |
統括安全衛生管理者,安全管理者,衛生管理者,産業医等を選任し,派遣労働者の安全衛生に関する事項も含め,必要な職務を行わせること。 |
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② |
安全衛生委員会等を設置し,派遣労働者の安全又は衛生に関する事項も含め,必要な調査審議を行うこと。 |
(2) |
危険又は健康障害を防止するための措置の適切な実施(安衛法第20条,第22条等)
機械等の安全措置など派遣労働者の危険又は健康障害を防止するための措置を現場の状況に即し適切に実施すること。 |
(3) |
危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づく措置の実施(安衛法第28条の2)
派遣労働者が従事する作業について,危険性又は有害性等の調査を実施し,その結果に基づき,機械の本質安全化などリスク低減措置を講ずること。
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(4) |
安全衛生教育の実施等(安衛法第59条) |
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ア |
雇入れ時等の安全衛生教育の実施状況の確認
派遣労働者を受け入れたときは,派遣元事業者による雇入れ時等の安全衛生教育について,当該派遣労働者が従事する業務に関する安全又は衛生を確保するために必要な内容の教育が実施されているかなど,その実施状況を派遣元事業者に確認すること。 |
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イ |
作業内容変更時の安全衛生教育の適切な実施
派遣労働者の作業内容を変更したときは,当該派遣労働者に対し,作業内容変更時の安全衛生教育を行うこと。また,当該教育は,派遣労働者が従事する業務に関する安全又は衛生を確保するために必要な内容及び時間をもって行うこと。 |
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ウ |
特別教育の適切な実施
特別教育が必要な一定の危険又は有害な業務に派遣労働者を従事させるときは,当該派遣労働者が,当該業務に関し,①他の事業場において既に特別教育を受けた者か,②十分な知識及び技能を有している者かを確認し,①又は②に該当しない場合は,当該派遣労働者に対し,特別教育を適切に行うこと。 |
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エ |
派遣先事業場における禁止事項の周知
立入禁止場所等の派遣先事業場において禁止されている事項について,派遣労働者に対し,周知を行うこと。 |
(5) |
安全な作業の確保 |
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ア |
就業制限業務に係る資格の確認(安衛法第61条,3.参照)
就業制限業務に派遣労働者を従事させるときは,当該派遣労働者が資格を有していることを確認すること。 |
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イ |
安全な作業マニュアル等の作成
派遣労働者が従事する作業について安全な作業マニュアルや手順書(以下「マニュアル等」という。)を作成することが望ましいこと。 |
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ウ |
派遣労働者の作業状況の確認
派遣労働者がマニュアル等により適切な作業を行えるよう,適時作業状況を確認する者を定め,その者に必要な指揮を行わせることが望ましいこと。 |
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エ |
標識,警告表示の掲示等
立入禁止場所,危害を生ずるおそれのある箇所等には,わかりやすい標識や警告表示の掲示を行うこと。 |
(6) |
特殊健康診断(安衛法第66条第2項及び第3項に基づく健康診断をいう。以下同じ。)の実施及びその結果に基づく事後措置
一定の有害業務に常時従事する派遣労働者に対しては,当該業務に係る特殊健康診断を実施し,その結果に基づく事後措置を講ずること。 |
(7) |
派遣労働者が労働災害に被災した場合の対応 |
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ア |
労働災害の発生原因の調査及び再発防止対策
派遣労働者が労働災害に被災した場合は,その発生原因を調査し,再発防止対策を講ずること。 |
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イ |
労働者死傷病報告の提出等(安衛法第100条)
派遣労働者が労働災害に被災した場合は,労働者死傷病報告を作成し,派遣先の事業場を所轄する労働基準監督署に提出すること。また,当該労働者死傷病報告の写しを派遣元事業者に送付すること。 |
3 |
派遣元事業者と派遣先事業者との連携
派遣元事業者及び派遣先事業者は,それぞれの責任区分に応じた安衛法上の措置を講ずる必要があり,これを円滑に実施するためには,両者の適切な連絡調整等が重要であること。 |
(1) |
安全衛生教育に関する協力や配慮 |
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ア |
派遣元事業者に対する情報提出等
派遣元事業者が派遣労働者に対する雇入れ時等の安全衛生教育を適切に行えるよう,①派遣元事業者は派遣先事業場から当該派遣労働者が従事する業務に係る情報について事前に提供を受けること,②派遣先事業者は当該情報を派遣元事業者に対し積極的に提供すること。
また,派遣元事業者から教育カリキュラムの作成支援,講師の紹介や派遣,教育用テキストの提供,教育用の施設や機材の貸与等の依頼があった場合には,派遣先事業者は可能な限りこれに応じるよう努めること。 |
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イ |
雇入れ時等の安全衛生教育の委託の申入れへの対応
派遣元事業者から雇入れ時等の安全衛生教育の委託の申入れがあった場合には,派遣先事業者は可能な限りこれに応じるよう努めること。また,派遣先事業者は,当該教育の実施を受託した場合には,その実施結果を派遣元事業者に報告すること。 |
(2) |
危険有害業務に係る適正な労働者派遣
派遣元事業者及び派遣先事業者は,派遣労働者が就くことが予定されている危険有害業務及び派遣労働者の資格等の有無を確認し,必要な資格等がない者がこれらに就くことがないよう,十分連絡調整を図ること。
なお,労働者派遣法第45条第6項等において,労働者派遣契約に従って派遣労働者を労働させたときに派遣先事業者が安衛法第61条等に抵触することになる場合には,派遣元事業者に対して労働者派遣を禁止しており,これに違反する場合には罰則の特例措置も定められていること。 |
(3) |
一般健康診断の実施に関する派遣先事業者の配慮
派遣労働者の就業の場所は派遣先事業場であることから,派遣元事業者の依頼があった場合には,派遣先事業者は,当該事業場の労働者に対する一般健康診断を実施する際に併せて派遣労働者が受診できるよう配慮することが望ましいこと。ただし,派遣元事業者は,①派遣労働者に係る一般健康診断の実施義務を負うこと,②健康診断結果等の労働者個人の健康情報について責任を持って取り扱う必要があること,③当該健康診断の結果に基づく事後措置を講ずることに留意すること。 |
(4 |
派遣元事業場における再発防止対策に関する協力
派遣労働者が労働災害に被災した場合,派遣元事業者は,派遣先事業場から当該労働災害の原因や対策について情報提供を受け,雇入れ時等の安全衛生教育に活用するとともに,同種の作業に従事する派遣労働者に当該情報を提供することが望ましいこと。 |
(5) |
派遣元事業者と派遣先事業者との連絡調整
派遣元事業者及び派遣先事業者は,定期的に会合を開催するなどし,健康診断,安全衛生教育,労働者派遣契約で定めた安全衛生に関する事項の実施状況,派遣労働者が被災した労働災害の内容・対応などについて連絡調整を行うこと。 |
第4 外国人の派遣労働者に係る事項~第5関係通達の改廃……(略) |
※詳しくは,厚生労働省又は安全衛生情報センター(中災防)のホームページをご覧下さい。(厚生労働省:http://www.mhlw.go.jp/,安全衛生情報センター:http://www.jaish.gr.jp/) |