1 趣旨等について |
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(1)指針の1は,本指針の趣旨を定めているほか,特定の危険性又は有害性の種類等に関する詳細指針の策定について規定したものであること.
(2)機械安全に関して厚生労働省労働基準局長の定めるもの」には,「機械の包括的な安全基準に関する指針」(平成13年6 月1 日付け基発第501号)があること.
(3)指針の「危険性又は有害性等の調査」は,ILO(国際労働機関)等において「リスクアセスメント(risk assessment)」等の用語で表現されているものであること. |
2 適用について |
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(1)指針の2は,労働者の就業に係るすべての危険性又は有害性を対象とすることを規定したものであること.
(2)指針の2の「危険性又は有害性」とは,労働者に負傷又は疾病を生じさせる潜在的な根源であり,ISO(国際標準化機構),ILO 等においては「危険源」,「危険有害要因」,「ハザード(hazard)」等の用語で表現されているものであること. |
3 実施内容について |
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(1)指針の3は,指針に基づき実施すべき事項の骨子を示したものであること.
(2)指針の3 の「危険性又は有害性の特定」は,ISO 等においては「危険源の同定(hazardidenti.cation)」等の用語で表現されているものであること. |
4 実施体制等について |
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(1)指針の4は,調査等を実施する際の体制について規定したものであること.
(2)指針の4(1)アの「事業の実施を統括管理する者」には,総括安全衛生管理者,統括安全衛生責任者が含まれること.また,総括安全衛生管理者等の選任義務のない事業場においては,事業場を実質的に統括管理する者が含まれること.
(3)指針の4(1)イの「安全管理者,衛生管理者等」の「等」には,安全衛生推進者が含まれること.
(4)指針の4(1)ウの「安全衛生委員会等の活用等」には,安全衛生委員会の設置義務のない事業場において実施される関係労働者の意見聴取の機会を活用することが含まれるものであること. また,安全衛生委員会等の活用等を通じ,調査等の結果を労働者に周知する必要があること.
(5)指針の4(1)エの「職長等」とは,職長のほか,班長,組長,係長等の作業中の労働者を直接指導又は監督する者がこれに該当すること.また,職長等以外にも作業内容を詳しく把握している一般の労働者がいる場合には,当該労働者を参加させることが望ましいこと.
なお,リスク低減措置の決定及び実施は,事業者の責任において実施されるべきであるものであることから,指針の4.エにおいて,職長等に行わせる事項には含めていないこと.
(6)指針の4(1)オの「機械設備等」の「等」には,電気設備が含まれること.
(7)調査等の実施に関し,専門的な知識を必要とする場合等には,外部のコンサルタントの助力を得ることも差し支えないこと. |
5 実施時期について |
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(1)指針の5は,調査等を実施する時期を規定したものであること.
(2)指針の5(1)イの設備には,足場等の仮設のものも含まれるとともに,設備の変更には,設備の配置替えが含まれること.
(3)指針の5(1)オの「次に掲げる場合等」の「等」には,地震等により,建設物等に被害が出た場合,もしくは被害が出ているおそれがある場合が含まれること.
(4)指針の5(1)オ(イ)の規定は,実施した調査等について,設備の経年劣化等の状況の変化に対応するため,定期的に再度調査等を実施し,それに基づくリスク低減措置を実施することが必要であることから設けられたものであること.なお,ここでいう「一定の期間」については,事業者が設備や作業等の状況を踏まえ決定し,それに基づき計画的に調査等を実施すること.
(5)指針の5(1)オ(イ)の「新たな安全衛生に係る知見」には,例えば,社外における類似作業で発生した災害や,化学物質に係る新たな危険有害情報など,従前は想定していなかったリスクを明らかにする情報があること.
(6)指針の5(3)は,実際に建設物,設備等の設置等の作業を開始する前に,設備改修計画,工事計画や施工計画等を作成することが一般的であり,かつ,それら計画の段階で調査等を実施することでより効果的なリスク低減措置の実施が可能となることから設けられた規定であること.また,計画策定時に調査等を行った後に指針の5.の作業等を行う場合,同じ事項に重ねて調査等を実施する必要はないこと.
(7)既に設置されている建設物等や採用されている作業方法等であって,調査等が実施されていないものに対しては,指針の5(1)にかかわらず,計画的に調査等を実施することが望ましいこと. |
6 調査等の対象の選定について |
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(1)指針の6は,調査等の実施対象の選定基準について規定したものであること.
(2)指針の6(1)の「危険な事象が発生した作業等」の「等」には,労働災害を伴わなかった危険な事象(ヒヤリハット事例)のあった作業,労働者が日常不安を感じている作業,過去に事故のあった設備等を使用する作業,又は操作が複雑な機械設備等の操作が含まれること.
(3)指針の6(1)の「合理的に予見可能」とは,負傷又は疾病を予見するために十分な検討を行えば,現時点の知見で予見し得ることをいうこと.
(4)指針の6(2)の「軽微な負傷又は疾病」とは,医師による治療を要しない程度の負傷又は疾病をいうこと.また,「明らかに軽微な負傷又は疾病しかもたらさないと予想されるもの」には,過去,たまたま軽微な負傷又は疾病しか発生しなかったというものは含まれないものであること. |
7 情報の入手について |
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(1)指針の7は,調査等の実施に当たり,事前に入手すべき情報を規定したものであること.
(2)指針の7(1)の「非定常作業」には,機械設備等の保守点検作業や補修作業に加え,予見される緊急事態への対応も含まれること.
なお,工程の切替(いわゆる段取り替え)に関する情報についても入手すべきものであること.
(3)指針の7(1)アからキまでについては,以下に留意すること.
ア指針の7(1)アの「作業手順書等」の「等」には,例えば,操作説明書,マニュアルがあること.
イ指針の7.イの「危険性又は有害性に関する情報」には,例えば,使用する設備等の仕様書,取扱説明書,「機械等の包括的な安全基準に関する指針」に基づき提供される「使用上の情報」,使用する化学物質の化学物質等安全データシート(MSDS)があること.
ウ指針の7(1)ウの「作業の周辺の環境に関する情報」には,例えば,周辺の機械設備等の状況や,地山の掘削面の土質やこう配等があること.
また,発注者において行われたこれらに係る調査等の結果も含まれること.
エ指針の7(1) エの「作業環境測定結果等」の「等」には,例えば,特殊健康診断結果,生物学的モニタリング結果があること.
オ指針の7(1)オの「複数の事業者が同一の場所で作業を実施する状況に関する情報」には,例えば,上下同時作業の実施予定や,車両の乗り入れ予定の情報があること.
カ指針の7(1)カの「災害事例,災害統計等」には,例えば,事業場内の災害事例,災害の統計・発生傾向分析,ヒヤリハット,トラブルの記録,労働者が日常不安を感じている作業等の情報があること.また,同業他社,関連業界の災害事例等を収集することが望ましいこと.
キ指針の7(1)キの「その他,調査等の実施に当たり参考となる資料等」の「等」には,例えば,作業を行うために必要な資格・教育の要件,セーフティ・アセスメント指針に基づく調査等の結果,危険予知活動(KYT)の実施結果,職場巡視の実施結果があること.
(4)指針の7(2)については,以下の事項に留意すること.
ア指針の7(2)アは,「機械等の包括的な安全基準に関する指針」,ISO,JIS の「機械類の安全性」の考え方に基づき,機械設備等の設計・製造段階における安全対策を行うことが重要であることから,機械設備等を使用する事業者は,導入前に製造者に調査等の実施を求め,使用上の情報等の結果を入手することを定めたものであること.
イ指針の7(2)イは,使用する機械設備等に対する設備的改善は管理権原を有する者のみが行い得ることから,その機械設備等を使用させる前に,管理権原を有する者が調査等を実施し,その結果を機械設備等の使用者が入手することを定めたものであること.
また,爆発等の危険性のあるものを取り扱う機械設備等の改造等を請け負った事業者が,内容物等の危険性を把握することは困難であることから,管理権原を有する者が調査等を実施し,その結果を請負業者が入手することを定めたものであること.
ウ指針の7(2)ウは,同一の場所で混在して実施する作業を請け負った事業者は,混在の有無やそれによる危険性を把握できないので,元方事業者が混在による危険性について事前に調査等を実施し,その結果を関係請負人が入手することを定めたものであること.
エ指針の7(2)エは,建設現場においては,請負事業者が混在して作業を行っていることから,どの請負事業者が調査等を実施すべきか明確でない場合があるため,元方事業者が調査等を実施し,その結果を関係請負人が入手することを定めたものであること. |
8 危険性又は有害性の特定について |
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(1)指針の8は,危険性又は有害性の特定の方法について規定したものであること.
(2)指針の8(1)の作業の洗い出しは,作業標準,作業手順等を活用し,危険性又は有害性を特定するために必要な単位で実施するものであること.
なお,作業標準がない場合には,当該作業の手順を書き出した上で,それぞれの段階ごとに危険性又は有害性を特定すること.
(3)指針の8(1)の「危険性又は有害性の分類」には,別添3の例のほか,ISO,JIS やGHS(化学品の分類及び表示に関する世界調和システム)で定められた分類があること.各事業者が設備,作業等に応じて定めた独自の分類がある場合には,それを用いることも差し支えないものであること.
(4)指針の8(2)は,労働者の疲労等により,負傷又は疾病が発生する可能性やその重篤度が高まることを踏まえて,危険性又は有害性の特定を行う必要がある旨を規定したものであること.したがって,指針の9のリスク見積りにおいても,これら疲労等による可能性の度合と重篤度の付加を考慮する必要があるものであること.
(5)指針の8(2)の「疲労等」には,単調作業の連続による集中力の欠如や,深夜労働による居眠り等が含まれること. |
9 リスクの見積りの方法について |
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(1)指針の9はリスクの見積りの方法等について規定したものであるが,その実施にあたっては,次に掲げる事項に留意すること.
ア指針の9は,リスク見積りの方法,留意事項等について規定したものであること.
イ指針の9のリスクの見積りは,優先度を定めるために行うものであるので,必ずしも数値化する必要はなく,相対的な分類でも差し支えないこと.
ウ指針の9(1)の「負傷又は疾病」には,それらによる死亡も含まれること.また,「危険性又は有害性により労働者に生ずるおそれのある負傷又は疾病」は,ISO 等においては「危害」(harm),「負傷又は疾病の程度」とは,「危害のひどさ」(severity of harm)等の用語で表現されているものであること.
エ指針の9(1)アからウまでに掲げる方法は,代表的な手法の例であり,.の柱書きに定める事項を満たしている限り,他の手法によっても差し支えないこと.
オ指針の9(1)アで定める手法は,負傷又は疾病の重篤度と可能性の度合をそれぞれ横軸と縦軸とした表(行列:マトリクス)に,あらかじめ重篤度と可能性の度合に応じたリスクを割り付けておき,見積対象となる負傷又は疾病の重篤度に該当する列を選び,次に発生の可能性の度合に該当する行を選ぶことにより,リスクを見積もる方法であること.(別添4の例1に記載例を示す.)
カ指針の9(1)イで定める手法は,負傷又は疾病の発生する可能性の度合とその重篤度を一定の尺度によりそれぞれ数値化し,それらを数値演算(かけ算,足し算等)してリスクを見積もる方法であること.(別添4の例2に記載例を示す.)
キ指針の9(1)ウで定める手法は,負傷又は疾病の重篤度,危険性へのばく露の頻度,回避可能性等をステップごとに分岐していくことにより,リスクを見積もる方法(リスクグラフ)であること.(別添4の例3に記載例を示す.)
(2)指針の9(2)の事項については,次に掲げる事項に留意すること.
ア指針の9.ア及びイの重篤度の予測に当たっては,抽象的な検討ではなく,極力,どのような負傷や疾病がどの作業者に発生するのかを具体的に予測した上で,その重篤度を見積もること.また,直接作業を行う者のみならず,作業の工程上その作業場所の周辺にいる作業者等も検討の対象に含むこと.
イ指針の9(2)ウの「休業日数等」の「等」には,後遺障害の等級や死亡が含まれること.
ウ指針の9(2)エは,疾病の重篤度の見積りに当たっては,いわゆる予防原則に則り,有害性が立証されておらず,MSDS 等が添付されていない化学物質等を使用する場合にあっては,関連する情報を供給者や専門機関等に求め,その結果,一定の有害性が指摘されている場合は,入手した情報に基づき,有害性を推定することが望ましいことを規定したものであること.
(3)指針の9(3)前段の事項については,次に掲げる事項に留意すること.
ア指針の9(3)前段アの「はさまれ,墜落等の物理的な作用」による危険性による負傷又は疾病の重篤度又はそれらが発生する可能性の度合の見積りに当たっては,必要に応じ,以下の事項に留意すること.
なお,行動災害の見積りに当たっては,災害事例を参考にしつつ,具体的な負傷又は疾病を予測すること.
ア加害物の高さ,重さ,速度,電圧等
イ危険性へのばく露の頻度等
危険区域への接近の必要性・頻度,危険区域内での経過時間,接近の性質(作業内容) 等
ウ機械設備等で発生する事故,土砂崩れ等の危険事象の発生確率
機械設備等の信頼性又は故障歴等の統計データのほか,地山の土質や角度等から経験的に求められるもの
エ危険回避の可能性
加害物のスピード,異常事態の認識しやすさ,危険場所からの脱出しやすさ又は労働者の技量等を考慮すること.
オ環境要因
天候や路面状態等作業に影響を与える環境要因を考慮すること.
イ指針の9(3)前段イの「爆発,火災等の化学物質の物理的効果」による負傷の重篤度又はそれらが発生する可能性の度合の見積りに当たっては,必要に応じ,以下の事項に留意すること.
ア反応,分解,発火,爆発,火災等の起こしやすさに関する化学物質の特性(感度)
イ爆発を起こした場合のエネルギーの発生挙動に関する化学物質の特性(威力)
ウタンク等に保管されている化学物質の保管量等
ウ指針の9.前段ウの「中毒等の化学物質等の有害性」による疾病の重篤度又はそれらが発生する可能性の度合の見積りに当たっては,必要に応じ,以下の事項に留意すること.
ア有害物質等の取扱量,濃度,接の頻度等有害物質等には,化学物質,石綿等による粉じんが含まれること.
イ有害物質等への労働者のばく露量とばく露限界等との比較ばく露限界は,日本産業衛生学会やACGIH(米国産業衛生専門家会議)の許容濃度等があり,また,管理濃度が参考となること.
ウ侵入経路等
エ指針の9(3)前段エの「振動障害等の物理因子の有害性」による疾病の重篤度又はそれらが発生する可能性の度合の見積りに当たっては,必要に応じ,以下の事項に留意すること.
ア物理因子の有害性等
電離放射線の線源等,振動の振動加速度等,騒音の騒音レベル等,紫外線等の有害光線の波長等,気圧,水圧,高温,低温等
イ物理因子のばく露量及びばく露限度等との比較
法令,通達のほか,JIS,日本産業衛生学会等の基準等があること.
オ負傷又は疾病の重篤度や発生可能性の見積りにおいては,生理学的要因(単調連続作業等による集中力の欠如,深夜労働による影響等)にも配慮すること.
(4)指針の9(3)後段の安全機能等に関する考慮については,次に掲げる事項に留意すること.
ア指針の9(3)後段アの「安全機能等の信頼性及び維持能力」に関して考慮すべき事項には,必要に応じ,以下の事項が含まれること.
ア安全装置等の機能の故障頻度・故障対策,メンテナンス状況,使用者の訓練状況等
イ立入禁止措置等の管理的方策の周知状況,柵等のメンテナンス状況
イ指針の9(3)後段イの「安全機能等を無効化する又は無視する可能性」に関して考慮すべき事項には,必要に応じ,以下の事項が含まれること.
ア生産性の低下等,労働災害防止のための機能・方策を無効化させる動機
イスイッチの誤作動防止のための保護錠が設けられていない等,労働災害防止のための機能・方策の無効化しやすさ
ウ指針の9(3)後段ウの作業手順の逸脱等の予見可能な「意図的」な誤使用又は危険行動の可能性に関して考慮すべき事項には,必要に応じ,以下の事項が含まれること.
ア作業手順等の周知状況
イ近道行動(最小抵抗経路行動)
ウ監視の有無等の意図的な誤使用等のしやすさ
エ作業者の資格・教育等
エ指針の9(3)後段のウの操作ミス等の予見可能な「非意図的」な誤使用の可能性に関して考慮すべき事項には,必要に応じ,以下の事項が含まれること.
アボタンの配置,ハンドルの操作方向のばらつき等の人間工学的な誤使用等の誘発しやすさ
イ作業者の資格・教育等 |
10 リスク低減措置の検討及び実施について |
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(1)指針の10(1)の事項については,次に掲げる事項に留意すること.
ア指針の10.アの「危険性又は有害性を除去又は低減する措置」とは,危険な作業の廃止・変更,より危険性又は有害性の低い材料への代替,より安全な反応過程への変更,より安全な施工方法への変更等,設計や計画の段階から危険性又は有害性を除去又は低減する措置をいうものであること.
イ指針の10(1)イの「工学的対策」とは,アの措置により除去しきれなかった危険性又は有害性に対し,ガード,インターロック,安全装置,局所排気装置の設置等の措置を実施するものであること.
ウ指針の10(1)ウの「管理的対策」とは,ア及びイの措置により除去しきれなかった危険性又は有害性に対し,マニュアルの整備,立入禁止措置,ばく露管理,警報の運用,二人組制の採用,教育訓練,健康管理等の作業者等を管理することによる対策を実施するものであること.
エ指針の10(1)エの「個人用保護具の使用」は,アからウまでの措置により除去されなかった危険性又は有害性に対して,呼吸用保護具や保護衣等の使用を義務づけるものであること.また,この措置により,アからウまでの措置の代替を図ってはならないこと.
オ指針の10(1)のリスク低減措置の検討に当たっては,大気汚染防止法等の公害その他一般公衆の災害を防止するための法令に反しないように配慮する必要があること.
(2)指針の10(2)は,合理的に実現可能な限り,より高い優先順位のリスク低減措置を実施することにより,「合理的に実現可能な程度に低い」(ALARP)レベルにまで適切にリスクを低減するという考え方を規定したものであること.
なお,低減されるリスクの効果に比較して必要な費用等が大幅に大きいなど,両者に著しい不均衡を発生させる場合であっても,死亡や重篤な後遺障害をもたらす可能性が高い場合等,対策の実施に著しく合理性を欠くとはいえない場合には,措置を実施すべきものであること.
(3)指針の10(2)に従い,リスク低減のための対策を決定する際には,既存の行政指針,ガイドライン等に定められている対策と同等以上とすることが望ましいこと.また,高齢者,日本語が通じない労働者,経験の浅い労働者等,安全衛生対策上の弱者に対しても有効なレベルまでリスクが低減されるべきものであること.
(4)指針の10(3)は,死亡,後遺障害又は重篤な疾病をもたらすリスクに対して,.の考え方に基づく適切なリスク低減を実施するのに時間を要する場合に,それを放置することなく,実施可能な暫定的な措置を直ちに実施する必要があることを規定したものであること. |
11 記録について |
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(1)指針の11(1)から(5)までに掲げる事項を記録するに当たっては,調査等を実施した日付及び実施者を明記すること.
(2)指針の11(5)のリスク低減措置には,当該措置を実施した後に見込まれるリスクを見積もることも含まれること.
(3)調査等の記録は,次回調査等を実施するまで保管すること.なお,記録の記載例を別添5に示す. |
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(別添1) |
1 趣旨等 |
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生産工程の多様化・複雑化が進展するとともに, 新たな機械設備・化学物質が導入されていること等により,労働災害の原因が多様化し,その把握が困難になっている.
このような現状において,事業場の安全衛生水準の向上を図っていくため,労働安全衛生法(昭和47年法律第57号.以下「法」という.)第28条の2 第1項において,労働安全衛生関係法令に規定される最低基準としての危害防止基準を遵守するだけでなく,事業者が自主的に個々の事業場の建設物,設備,原材料,ガス,蒸気,粉じん等による,又は作業行動その他業務に起因する危険性又は有害性等の調査(以下単に「調査」という.)を実施し,その結果に基づいて労働者の危険又は健康障害を防止するため必要な措置を講ずることが事業者の努力義務として規定されたところである.
本指針は,法第28条の2第2項の規定に基づき,当該措置が各事業場において適切かつ有効に実施されるよう,その基本的な考え方及び実施事項について定め,事業者による自主的な安全衛生活動への取組を促進することを目的とするものである.
また,本指針を踏まえ,特定の危険性又は有害性の種類等に関する詳細な指針が別途策定されるものとする.詳細な指針には,「化学物質等による労働者の危険又は健康障害を防止するため必要な措置に関する指針」,機械安全に関して厚生労働省労働基準局長の定めるものが含まれる.
なお,本指針は,「労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針」(平成11年労働省告示第53号)に定める危険性又は有害性等の調査及び実施事項の特定の具体的実施事項としても位置付けられるものである. |
2 適用 |
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本指針は,建設物,設備,原材料,ガス,蒸気,粉じん等による,又は作業行動その他業務に起因する危険性又は有害性(以下単に「危険性又は有害性」という.)であって,労働者の就業に係る全てのものを対象とする. |
3 実施内容 |
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事業者は,調査及びその結果に基づく措置(以下「調査等」という.)として,次に掲げる事項を実施するものとする.
(1)労働者の就業に係る危険性又は有害性の特定
(2)(1)により特定された危険性又は有害性によって生ずるおそれのある負傷又は疾病の重篤度及び発生する可能性の度合(以下「リスク」という.) の見積り
(3)(2)の見積りに基づくリスクを低減するための優先度の設定及びリスクを低減するための措置(以下「リスク低減措置」という.)内容の検討
(4)(3)の優先度に対応したリスク低減措置の実施 |
4 実施体制等 |
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(1)事業者は,次に掲げる体制で調査等を実施するものとする.
ア総括安全衛生管理者等,事業の実施を総括管理する者(事業場トップ)に調査等の実施を総括管理させること.
イ事業場の安全管理者,衛生管理者等に調査等の実施を管理させること.
ウ安全衛生委員会等(安全衛生委員会,安全委員会又は衛生委員会をいう.)の活用等を通じ,労働者を参画させること.
エ調査等の実施に当たっては,作業内容を詳しく把握している職長等に危険性又は有害性の特定,リスクの見積り,リスク低減措置の検討を行わせるように務めること.
オ機械設備等に係る調査等の実施に当たっては,当該機械設備等に専門的な知識を有する者を参画させるように務めること.
(2)事業者は,(1)で定める者に対し,調査等を実施するために必要な教育を実施するものとする. |
5 実施時期 |
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(1)事業者は,次のアからオまでに掲げる作業等の時期に調査等を行うものとする.
ア建設物を設置し,移転し,変更し,又は解体するとき.
イ設備を新規に採用し,又は変更するとき.
ウ原材料を新規に採用し,又は変更するとき.
エ作業方法又は作業手順を新規に採用し,又は変更するとき.
オその他,次に掲げる場合等,事業場におけるリスクに変化が生じ,又は生ずるおそれのあるとき.
ア労働災害が発生した場合であって,過去の調査等の内容に問題がある場合
イ前回の調査等から一定の期間が経過し,機械設備等の経年による劣化,労働者の入れ替わり等に伴う労働者の安全衛生に係る知識経験の変化,新たな安全衛生に係る知見の集積等があった場合
(2)事業者は,(1)のアからエまでに掲げる作業を開始する前に,リスク低減措置を実施することが必要であることに留意するものとする.
(3)事業者は,(1)のアからエまでに係る計画を策定するときは,その計画を策定するときにおいても調査等を実施することが望ましい. |
6 対象の選定 |
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事業者は,次により調査等の実施対象を選定するものとする.
(1)過去に労働災害が発生した作業,危険な事象が発生した作業等,労働者の就業に係る危険性又は有害性による負傷又は疾病の発生が合理的に予見可能であるものは,調査等の対象とすること.
(2)(1)のうち,平坦な通路における歩行等,明らかに軽微な負傷又は疾病しかもたらさないと予想されるものについては,調査等の対象から除外して差し支えないこと. |
7 情報の入手 |
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(1)事業者は,調査等の実施に当たり,次に掲げる資料等を入手し,その情報を活用するものとする.入手に当たっては,現場の実態を踏まえ,定常的な作業に係る資料等のみならず,非定常作業に係る資料等も含めるものとする.
ア作業標準,作業手順書等
イ仕様書,化学物質等安全データシート
(MSDS)等,使用する機械設備,材料等に係る危険性又は有害性に関する情報
ウ機械設備等のレイアウト等,作業の周辺の環境に関する情報
エ作業環境測定結果等
オ混在作業による危険性等,複数の事業者が同一の場所で作業を実施する状況に関する情報
カ災害事例,災害統計等
キその他,調査等の実施に当たり参考となる資料等
(2)事業者は,情報の入手に当たり,次に掲げる事項に留意するものとする.
ア新たな機械設備等を外部から導入しようとする場合には,当該機械設備等のメーカーに対し,当該設備等の設計・製造段階において調査等を実施することを求め,その結果を入手すること.
イ機械設備等の使用又は改造等を行おうとする場合に,自らが当該機械設備等の管理権原を有しないときは,管理権原を有する者等が実施した当該機械設備等に対する調査等の結果を入手すること.
ウ複数の事業者が同一の場所で作業する場合には,混在作業による労働災害を防止するために元方事業者が実施した調査等の結果を入手すること.
エ機械設備等が転倒するおそれがある場所等,危険な場所において,複数の事業者が作業を行う場合には,元方事業者が実施した当該危険な場所に関する調査等の結果を入手すること. |
8 危険性又は有害性の特定 |
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(1)事業者は,作業標準等に基づき,労働者の就業に係る危険性又は有害性を特定するために必要な単位で作業を洗い出した上で,各事業場における機械設備,作業等に応じてあらかじめ定めた危険性又は有害性の分類に則して,各作業における危険性又は有害性を特定するものとする.
(2)事業者は,(1)の危険性又は有害性の特定に当たり,労働者の疲労等の危険性又は有害性への付加的影響を考慮するものとする. |
9 リスクの見積り |
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(1)事業者は,リスク低減の優先度を決定するため,次に掲げる方法等により,危険性又は有害性により発生するおそれのある負傷又は疾病の重篤度及びそれらの発生の可能性の度合をそれぞれ考慮して,リスクを見積もるものとする.ただし,化学物質等による疾病については,化学物質等の有害性の度合及びばく露の量をそれぞれ考慮して見積もることができる.
ア負傷又は疾病の重篤度とそれらが発生する可能性の度合を相対的に尺度化し,それらを縦軸と横軸とし,あらかじめ重篤度及び可能性の度合に応じてリスクが割り付けられた表を使用してリスクを見積もる方法
イ負傷又は疾病の発生する可能性とその重篤度を一定の尺度によりそれぞれ数値化し,それらを加算又は乗算等してリスクを見積もる方法ウ負傷又は疾病の重篤度及びそれらが発生する可能性等を段階的に分岐していくことによりリスクを見積もる方法
(2)事業者は,(1)の見積りに当たり,次に掲げる事項に留意するものとする.
ア予想される負傷又は疾病の対象者及び内容を明確に予測すること.
イ過去に実際に発生した負傷又は疾病の重篤度ではなく,最悪の状況を想定した最も重篤な負傷又は疾病の重篤度を見積もること.
ウ負傷又は疾病の重篤度は,負傷や疾病等の種類にかかわらず,共通の尺度を使うことが望ましいことから,基本的に,負傷又は疾病による休業日数等を尺度として使用すること.
エ有害性が立証されていない場合でも,一定の根拠がある場合は,その根拠に基づき,有害性が存在すると仮定して見積もるよう努めること.
(3)事業者は,(1)の見積りを,事業場の機械設備,作業等の特性に応じ,次に掲げる負傷又は疾病の類型ごとに行うものとする.
アはさまれ,墜落等の物理的な作用によるもの
イ爆発,火災等の化学物質の物理的効果によるもの
ウ中毒等の化学物質等の有害性によるもの
エ振動障害等の物理因子の有害性によるもの
また,その際,次に掲げる事項を考慮すること.
ア安全装置の設置,立入禁止措置その他の労働災害防止のための機能又は方策(以下「安全機能等」という.)の信頼性及び維持能力
イ安全機能等を無効化する又は無視する可能性
ウ作業手順の逸脱,操作ミスその他の予見可能な意図的・非意図的な誤使用又は危険行動の可能性 |
10 リスク低減措置の検討及び実施 |
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(1)事業者は,法令に定められた事項がある場合にはそれを必ず実施するとともに,次に掲げる優先順位でリスク低減措置内容を検討の上,実施するものとする.
ア危険な作業の廃止・変更等,設計や計画の段階から労働者の就業に係る危険性又は有害性を除去又は低減する措置
イインターロック,局所排気装置等の設置等の工学的対策
ウマニュアルの整備等の管理的対策
エ個人用保護具の使用
(2)(1)の検討に当たっては,リスク低減に要する負担がリスク低減による労働災害防止効果と比較して大幅に大きく,両者に著しい不均衡が発生する場合であって,措置を講ずることを求めることが著しく合理性を欠くと考えられるときを除き,可能な限り高い優先順位のリスク低減措置を実施する必要があるものとする.
(3)なお,死亡,後遺障害又は重篤な疾病をもたらすおそれのあるリスクに対して,適切なリスク低減措置の実施に時間を要する場合は,暫定的な措置を直ちに講ずるものとする. |
11 記録 |
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事業者は,次に掲げる事項を記録するものとする.
(1)洗い出した作業
(2)特定した危険性又は有害性
(3)見積もったリスク
(4)設定したリスク低減措置の優先度
(5)実施したリスク低減措置の内容 |
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(別添3) |