行 政
建設現場のクレーン,移動式クレーン作業に係る安全対策の徹底について
(社)日本クレーン協会東海支部長殿 愛労基発第333号
愛知労働局長 平成19年7月23日

 平成19年7月23日付けで,愛知労働局長から県下のクレーン,移動式クレーンを使用している関係団体((社)日本クレーン協会東海支部)に対して,下記のとおり安全対策の徹底について要請がありました。
  ついては,会員事業場の皆様におかれましては要請書に記されている「適切な作業計画の樹立,クレーン等運転合図の徹底,玉掛け用具の適格な選定使用等」に十分ご留意いただきますようお願いします。

建設現場のクレーン,移動式クレーン作業に係る安全対策の徹底について

 労働基準行政の運営につきましては,日頃から格別の御協力を賜り厚く御礼申し上げます。
  さて,建設業におけるクレーン,移動式クレーン(以下クレーン等という)作業に係る労働災害の防止に関しては日頃からご尽力いただいているところでありますが,本年6月6日,名古屋駅前の高層ビル新築工事現場において荷揚げ中に玉掛け用クランプが破断し約130kg の鋼材が公道上に落下する事故が発生したところです。
  この事故の概要等は別紙の通りですが,本件事故は通行人等を巻き込んだ重大事故になるおそれがあったところです。
  つきましては,貴協会におかれまして,クレーン等による災害の防止に関し,下記事項に留意の上,適切な対策を講ずるよう会員事業場に対して周知徹底いただきますようお願い申し上げます。

建設現場において,クレーン等を用いて作業を行う場合は,適正な位置に合図者を配置し,この合図者の合図により運転者,玉掛け者等クレーン作業従事者が連携して作業を行うことができるよう適切な作業計画を樹立すること。なお,複数の合図者を置く場合は各合図者の役割分担に留意すること。
クレーン等作業が行われている間は,合図者は常に合図の業務を行うよう徹底させるとともに,運転者が合図者からの適切な合図なしでクレーン等の操作を行わないよう徹底させること。
クレーン等作業時につり荷が建築物等に接触等のおそれがある現場においては,つり荷の接触等による玉掛け用具の破損や外れが生じないよう,強度等が十分な玉掛け用具の選定に留意すること。
   
 
(①~③はH 鋼の落下位置)
平成19 年6月7日朝日新聞

別紙
事故の概要

1 日時等

  • 平成19年6月6日14時40分頃

2 場所,名称

  • 名古屋市中村区名駅四丁目
    「モード学園スパイラルタワーズ」(地上36階・地下3階)新築工事現場

3 事故の状況

  •  新築中の建物の上部に据えたタワークレーンを使用して重量約130kg のH 鋼(小梁)を,梁つり専用クランプ2個を使用して玉掛けをして荷揚げしていたところ,34階の柱となる鋼材に当該H 鋼が接触した。その直後回避操作を行ううちに,梁つり専用クランプのうち1つが破断し,1点つり状態になり,続いてもう1つのクランプも破断したために当該H 鋼は高さ約150m から落下。その途中8階部分のガラス壁にバウンドして県道名古屋長久手線(広小路通り)に落ちた。

4 事故の背景

  •  落下したH 鋼は32階の小梁となるものであった。クレーンは,つり荷であるH 鋼を34階の柱となる鋼材の高さを越えてから旋回し,その後32階まで降下させて,そこで鳶工が設置作業をする予定だった。
    関係者の話によると,合図者は置かれていたが,運転者と合図者の間での合図確認,連携が不徹底であった。
      クランプの破断原因は,1本目については,柱との接触時の衝撃荷重,又は回避操作時のクレーン巻き上げ力,若しくはこれらの相乗効果によって破断したものと推定される。2本目についてはH 鋼が1点つりになる際の衝撃荷重により破断したものと推定される。
      なお,当該クランプのメーカーによると,同クランプの引っ張り方向の強度は10トン,横方向には500kg とされている。

(掲載:『クレーン』第45巻 10号 2007年)

[目次へ戻る]

 
 
[ホーム]