通 達
平成20年度における建設工事事故防止のための重点対策の実施について

厚生労働省労働基準局 安全衛生部建設安全対策室長殿

国官技第338号
国土交通省大臣官房技術調査課長 平成20年3月31日

平成20年度における建設工事事故防止のための重点対策の実施について

 標記について,別添のとおり,各地方整備局等に通知したので参考までに送付する。
(別添)
国官技第330号
平成20年3月31日
各地方整備局企画部長
北海道開発局事業振興部長 あて
国土交通省大臣官房技術調査課長
平成20年度における建設工事事故防止のための重点対策の実施について
 建設工事の事故防止にあたっては,平成4月7月に「公共工事の発注における工事安全対策要綱」を策定し,その後,「土木工事安全施工技術指針」を改定し,また,平成8年1月から「事故データベース」の整備等を行ってきたところである。また,事故の減少・再発防止や請負者の安全管理の推進を支援することを目的として,平成12年2月に「建設工事事故対策検討委員会」(委員長塩井幸武八戸工業大学名誉教授)を設置し,「事故データベース」を活用した様々な検討を行っているところである。
  国土交通省においては,同委員会において特に事故が多発している墜落事故,重機事故,交通事故及び飛来落下事故について重点対策を実施することが提唱されたことなどを踏まえ,平成12年度から年度ごとに重点対策を実施してきたところである。今般,同委員会における検討などを踏まえ,平成20年度における重点対策として国土交通省の直轄土木工事を対象に下記の「Ⅰ.発注者が実施する対策」を実施することとしたので適切に措置されたい。
  なお,「Ⅱ.関係業団体が実施する対策」については,工事全般にわたる事故防止の観点から別途関係業団体に協力を依頼しているものである。
Ⅰ 発注者が実施する対策
 のり面からの墜落事故防止重点対策
・法面からの墜落事故防止対策として,大規模または特殊法面工事においては,必要に応じて昇降設備の設置を推進し,適切に必要な費用を計上する。
 交通事故防止重点対策
・交通事故防止重点対策として,事故発生箇所の道路状況や工事の作業状況等の観点から事故発生原因の分析を行い,もらい事故防止に有効な安全設備等について検討する。
 工事全般にわたる事故防止重点対策
・ヒューマンエラーのうち近道・省略行動本能による事故を防止するため,近道・省略工事に起因する代表的な事故事例について分析し,具体的な事故防止対策を検討する。
 工事事故防止に係る広報活動の推進
・安全協議会等において,直轄工事の現場において請負者が行う工事事故防止の取り組み(事故ゼロ宣言等)に係る看板等の設置を推奨することにより,工事現場の事故防止の取り組みについて現場作業員や周辺住民に周知するよう働きかける。
 安全活動の評価
・直轄工事において,請負者から提出された安全活動の創意工夫の成果を,工事成績評定の判断材料の1つとする。(各種チェックリストの活用等)
 重大災害防止重点対策
・重大災害防止重点対策として,重大災害の事例収集を行い,その発生傾向や原因について分析を行い,重大災害の防止に有効な事故防止対策について検討する。
 
Ⅱ 関係業団体が実施する対策
足場からの墜落事故防止重点対策(平成13年度からの継続対策)
(1) 「手すり先行工法に関するガイドライン」の適用の推進
・関係業団体は,会員各社に対して足場の施工計画の充実を図るよう働きかけるとともに,足場の組立完了時及び供用中の日々の安全管理に足場のチェックリスト等を現場に備え付けて効果的に活用し,足場の点検を行うよう働きかける。また,工事完成時に点検結果を含め安全活動の創意工夫の成果を発注者に提出するよう働きかける。
法面からの墜落事故防止重点対策(平成14年度からの継続対策)
(1) 施工計画での親綱設備計画の徹底
・関係業団体は,会員各社に対して施工計画段階での法面作業における親綱設備等の計画を策定するよう働きかける。
・関係業団体は,施工計画の成果を工事完成時に発注者に提出するよう働きかける。
(2) チェックリスト等による親綱・安全帯の点検
・関係業団体は,会員各社に対してチェックリスト等による親綱点検の強化,親綱,安全帯の適切な取扱いを図るよう働きかける。
・関係業団体は,会員各社に対して,チェックリスト等を現場に備え付けて効果的に活用し,点検結果や安全活動の成果を工事完成時に発注者に提出するよう働きかける。
(3) 昇降設備の設置の推進
・関係業団体は,会員各社に対して親綱の固定箇所・安全帯付け替え箇所への安全な移動のため,大規模及び特殊法面工事においては,必要に応じて昇降設備を設置し,施工することを推奨する。
(4) 法面施工管理技術者の資格取得
・関係業団体は,会員各社に対して作業計画及び作業の質の向上を目的として,法面施工管理技術者の資格の取得を推奨する。
重機事故防止重点対策(平成13年度からの継続対策)
(1) ステッカー運動の推進
・関係業団体は,会員各社に対して「誘導なしではバックしない」をうたったステッカーは貼付し,安全教育と効果的に組み合わせ,重機オペレーターの安全意識を高めることを推奨する。
・関係業団体は,会員各社に対して工事完成時に安全活動の創意工夫の成果を発注者に提出するよう働きかける。
(2) 重機との接触事故の防止対策の推進
・関係業団体は,会員各社に対して,現場の状況を十分に勘案し,重機の接近を知らせる警報装置を有効に活用する等により,重機と作業員との接触事故防止対策を実施するよう働きかける。
交通事故防止重点対策(平成13年度からの継続対策)
(1) もらい事故対策工の推進
・関係業団体は,会員各社に対して,現場の状況を十分勘案し,運転者の注意を喚起する効果的な方法(回転灯や電光表示板等)と車輌の制動抑止を図る方法を組み合わせる等により,有効な交通事故対策を実施するよう働きかける。
・関係業団体は,会員各社に対して工事完成時に安全活動の創意工夫の成果を発注者に提出するよう働きかける。
各種事故共通重点対策
(1) 現場管理者,技能者,建設従事者等を対象とした安全教育の推進
建設従事者に対する安全衛生教育の実施
・関係業団体は,会員各社に対して労働者の不安全行動の防止の観点から労働者が守らなければならない事項等を周知徹底するため厚生労働省が推奨している建設業労働災害防止協会が定める指針に基づく建設従事者に対する安全衛生教育を受けるよう働きかける。なお,直轄工事においては,引き続き一定規模以上(常時労働者が20人以上)の現場では,例えば,外部機関(建設業労働災害防止協会等)を活用した当該教育を実施するよう働きかける。
技能者等に対する再教育の推進
・関係業団体は,就業制限業務及び作業主任者を選任する業務における資格者の配置のみならず,資格取得後一定期間経過した資格者については,次に掲げる再教育を受けるよう働きかける。
労働安全衛生法第19条の2に基づく足場の組立て等作業主任者等に対する能力向上教育
労働安全衛生法第60条の2に基づく車両系建設機械運転業務従事者,移動式クレーン運転士,玉掛業務従事者等に対する危険有害業務従事者教育
厚生労働省通達に基づくドラグ・ショベル運転業務従事者等に対する危険再認識教育
現場管理者等に対する教育の推進
・関係業団体は,職長又は安全衛生責任者については,労働安全衛生法第60条等に基づく職長・安全衛生責任者教育を受けるよう働きかける。
工事完成時に安全教育の受講状況を発注者に提出するよう働きかける。
(2) 建設業労働安全衛生マネジメントシステム等の導入の推進
・関係業団体は,会員各社に対して「建設業労働安全衛生マネジメントシステム(COHSMS:コスモス)」等を導入するよう働きかける。
(3) 表彰制度の推進
・関係業団体は,会員各社に対して安全管理に努めた人を表彰する等の各社が実施している安全意識向上運動をさらに推進するよう働きかける。
(4) 工事事故防止に係る広報活動の推進
・関係業団体は,会員各社に対して現場における請負者が行う工事事故防止の取り組み(事故ゼロ宣言等)に関する看板等の設置を推進することにより,工事現場の事故防止の取り組みについて現場作業員や周辺住民に周知するよう働きかける。

 

(掲載:『クレーン』第46巻 6号 2008年)

[目次へ戻る]

 
 
[ホーム]