平成19年の労働災害による死亡者数は過去最少の1,357人
重大災害(一時に3人以上の労働者が業務上死傷又はり病した災害)は減少し293件
-平成19 年における死亡災害・ 重大災害発生状況等-
1 平成19年の死亡災害発生状況
- 平成19年の労働災害による死亡者数は1,357人,前年比115人(7.8%)減となった。
- 業種別にみると,建設業が461人と最も多く,次いで製造業264人,陸上貨物運送事業196人の順である。平成18年と比較すると,建設業が47人減,製造業が4人減と減少したが,交通運輸業では4人増と増加した。
- 事故の型別にみると,墜落・転落が361人と最も多く,次いで,交通事故(道路)が337人,はさまれ巻き込まれが191人,激突されが94人,崩壊・倒壊が92人である。平成18年と比較すると,交通事故(道路)が前年比48人減,激突されが前年比31人減,飛来・ 落下が前年比26人減と減少したが,爆発が前年比10人増,高低温物との接触が前年比8人増,墜落・転落が前年比8人増と増加した。
2 平成19年の重大災害発生状況
- 平成19年の重大災害は,前年と比べて25件(7.9%)減少し293件となった。
- 業種別にみると,建設業が104件と最も多く,次いで製造業が61件,陸上貨物運送事業が19件である。平成18年と比較すると,建設業が前年比16件減,製造業が前年比1件減と減少している。
- 事故の型別にみると,「交通事故」が全体の約半数を占めている。平成18年と比較すると「その他」が17件減,「火災・高熱物」が16件減,「中毒・ 薬傷」が13件減と減少したが,「交通事故」が18件増,「墜落」が7件増,「爆発」が6件増と増加した。
3 厚生労働省の取組
- 厚生労働省は,労働災害のより一層の減少を図るため,平成20年度からの5か年間を計画期間とする第11次の労働災害防止計画を策定し,機械災害,墜落・転落災害,交通労働災害等の特定災害対策,労働災害多発業種対策等の充実・徹底を図るとともに,「危険性又は有害性等の調査等」の実施の促進等の事業場における自主的な安全衛生活動の促進を図ることとしている。
- また,7月1日~7日の「全国安全週間」(準備期間6月1日~30日)において,職場の安全を確保するためには,経営トップの強いリーダーシップの下,関係者全員が一丸となって安全活動を着実に実行し,職場から機械設備,作業等による危険をなくすことが不可欠であることから,
「トップが率先みんなが実行つみ取ろう職場の危険」
をスローガンに同週間の活動を展開する予定である。
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1 平成19年における死亡災害・重大災害発生状況
(1) 死亡災害の業種別発生状況【表1,図1参照】
- 業種別の死亡者数は,平成18年と比較すると,建設業,製造業,陸上貨物運送事業,港湾荷役業,林業,業種分類「その他」では減少したが,交通運輸業では増加した。
- 建設業における死亡者数は461人で,平成18年と比較して47人(9.3%)減少した。全産業に占める割合は34.0%(0.5ポイント減少)であり,依然として最も高い。
- 製造業における死亡者数は264人で,平成18年と比較して4人(1.5%)減少した。全産業に占める割合は19.5%(1.3ポイント増加)である。
- 陸上貨物運送事業における死亡者数は196人で,平成18年と比較して2人(1.0%)減少した。全産業に占める割合は14.4%(0.9ポイント増加)である。
(2) 死亡災害の事故の型別発生状況【表2参照】
- 事故の型別の死亡者数は,平成18年と比較すると,交通事故(道路)が前年比48人減,激突されが前年比31人減,飛来・落下が前年比26人減と大幅に減少したが,「爆発」,「高温・低温物との接触」,「墜落・転落」等では増加した。
- 高所からの「墜落・転落」の占める割合は26.6%(全産業合計の1,357人中361人)と最も高く「交通事故(道路)」の占める割合は24.8%(全産業合計の1,357人中337人)であり,この2つの災害で死亡災害全体の50%を超えている。
- 建設業では「墜落・転落」が増加し,その建設業に占める割合も44.9%(建設業全体の461人中207人)である。
- 製造業では「はさまれ巻き込まれ」の占める割合が高く,その製造業に占める割合も29.2%(製造業全体の264人中77人)である。
- 陸上貨物運送事業では「交通事故(道路)」の占める割合が高く,その陸上貨物運送事業に占める割合も62.8%(陸上貨物運送事業全体の196人中123人)である。
表1 平成19年における死亡災害発生状況
種業 |
平成19年 |
対18年比較 |
年死亡者数(人) |
構成比(%) |
増減数(人) |
増減率(%) |
全産業 |
1,357
|
100.0 |
-115 |
-7.8 |
製造業 |
264 |
19.5 |
-4 |
-1.5 |
鉱業 |
13 |
1.0 |
-3 |
-18.8 |
建設業 |
461 |
34.0 |
-47 |
-9.3 |
交通運輸事業 |
29 |
2.1 |
4 |
16.0 |
陸上貨物運送事業 |
196 |
14.4 |
-2 |
-1.0 |
港湾荷役業 |
9 |
0.7 |
-5 |
-35.7 |
林業 |
50 |
3.7 |
-7 |
-12.3 |
その他 |
335 |
24.7 |
-51 |
-13.2 |
業種欄「その他」 |
平成19年 |
対18年比較 |
年死亡者数(人) |
構成比(%) |
増減数(人) |
増減率(%) |
畜産・ 水産
|
15 |
4.5 |
-1 |
-6.3 |
商業 |
129 |
38.5 |
-22 |
-14.6 |
金融・ 広告 |
4 |
1.2 |
-4 |
-50.0 |
信通 |
3 |
0.9 |
-5 |
-62.5 |
接客・ 娯楽 |
25 |
7.5 |
1 |
4.2 |
清掃・ と畜 |
43 |
12.8 |
-11 |
-20.4 |
上記以外(教育研究,
保健衛生,警備等) |
116 |
34.6 |
-9 |
-7.2 |
(注) 1 死亡災害報告より作成したもの
2 「-」は減少を示す.
(3) 重大災害の業種別・事故の型別発生状況【表3,表4参照】
- 業種別にみると,建設業が104件,前年比16件減,製造業が61件,前年比1件減,陸上貨物運送事業が19件,前年比1件減である。
- 事故の型別の重大災害は,「交通事故」が161件(全体の55%),「中毒・薬傷」が53件(全体の18%),「その他」が32件(全体の11%),「墜落」が12件(全体の4%),「火災・高熱物」が11件(全体の4%),「爆発」が11件(全体の4%)の順である。
- 平成18年と比較すると,「その他」が17件減,「火災・高熱物」が16件減,「中毒・薬傷」が13件減などと減少したが,「交通事故」が18件増,「墜落」が7件増,「爆発」が6件増などと増加している。
- 「交通事故」による重大災害の発生件数を平成18年と平成19年で比較すると,自動車(道路)によるものが139件(うち道路工事現場に自動車が進入したもの4件)から149件(うち道路工事現場に自動車が進入したもの4件),飛行機によるものが1件から9件,船舶によるものが1件から3件,電車によるものが2件から0件である。
- 「墜落」による重大災害の発生件数を平成18年と平成19年で比較すると,機械・乗物からの墜落3件から5件,建築物からの墜落1件から4件,建造船からの墜落0件から2件,路肩からの墜落1件から1件である。
- 「爆発」による重大災害の発生件数を平成18年と平成19年で比較すると,可燃性ガスによるものが2件から5件,引火性料品によるもの2件から3件,その他の爆発性料品によるものが0件から2件,水蒸気によるもの1件から1件である。
2 重大災害の中長期的な動向等
(1) |
労働災害全体の動向 |
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① 死亡者数
死亡者数は,昭和36年の6,712人をピークとして減少傾向にあり,平成19年は,昭和36年の約5分の1の,357人に減少している。【図2参照】 |
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② 休業4日以上の死傷者数
休業4日以上の死傷者数は,減少傾向にあり,休業4日以上の死傷者数のデータを取り始めた昭和48年の37.6万人から平成18年には12.1万人と減少している。【図3参照】 |
表3 平成19年における重大災害発生状況
業種 |
平成19年(1月~12月) |
増減数平成18年(1月~12月) |
増減数 |
件数(件) |
死傷者数(人) |
死亡者数(人) |
件数(件) |
死傷者数(人) |
死亡者数(人) |
件数(件) |
死傷者数(人) |
死亡者数(人) |
全産業 |
293 |
2,332 |
61 |
318 |
2,117 |
85 |
-25 |
215
|
-24 |
製造業 |
61 |
1,093 |
15 |
62 |
431 |
7 |
-1 |
662 |
8 |
鉱業 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
建設業 |
104 |
431 |
21 |
120 |
543 |
45 |
-16 |
-112 |
-24 |
交通運輸業 |
12 |
61 |
2 |
11 |
116 |
5 |
1 |
-55 |
-3 |
陸上貨物運送事業 |
19 |
72 |
10 |
20 |
95 |
10 |
-1 |
-23 |
0 |
港湾荷役業 |
2 |
11 |
0 |
1 |
3 |
0 |
1 |
8 |
0 |
林業 |
2 |
7 |
0 |
1 |
3 |
3 |
1 |
4 |
-3 |
その他の事業 |
93 |
657 |
13 |
103 |
926 |
15 |
-10 |
-269 |
-2 |
(注) |
1.重大災害報告より作成したもの |
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2.一時に3人以上の労働者が業務上死傷又はり病した災害事故について作成. |
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3.「-」は減少を表す |
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4.被災者が属する業種が複数にまたがる場合には,主たる業種についてのみ計上している. |
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③ 災害発生率
災害発生率は,昭和60年と平成18年を比較すると,100人以上の事業所では,度数率(100万延実労働時間当たりの死傷者数)は2.52から1.90へと25%減少,強度率(1,000延実労働時間当たりの延労働損失日数)は0.29から0.12へと59% 減少,無災害(1年間)の事業所の割合は45.4%から58.5%へと29%増加,30~99人の事業所では,度数率が6.96から2.95へと58%減少,強度率は0.49から0.14へと71%減少,無災害(1年間)事業所の割合は61.3%から79.3%へと29%増加している。 |
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(2) |
重大災害の動向 |
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① 重大災害の定義
重大災害とは,不休も含む一度に3人以上の労働者が業務上死傷又はり病した災害である。
② 重大災害の発生件数
重大災害の発生件数は,死亡災害,死傷災害等が減少傾向にある中で,昭和60年以降,年により増減はあるものの増加傾向にあり,平成19年は昭和60年と比べて2.1倍,152件増加している。【図4参照】 |
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③ 重大災害による死亡者数
重大災害による死亡者数は,昭和60年の295人から平成19年の61人と約5分の1に,重大災害1件当たりの死亡者数は昭和60年の2.1人から平成19年の0.2人と約10分の1に減少している。 |
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④ 重大災害の事故の型 |
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ⅰ) 全体の傾向 |
- 「交通事故」,「中毒・薬傷」,感染症等の「その他」の事故の型による重大災害は,それぞれ,重大災害全体(平成19年)の55%,18%,11%と大きな割合を占めており,昭和60年と平成19年を比較すると,95件増,36件増,29件増である。
- 爆発による重大災害は,昭和60年12件,平成14年6件であったが,平成16年には14件へと増加,火災高熱物による重大災害は,昭和60年12件,平成14年12件であったが,平成16年には21件へと増加するとともに,わが国を代表する企業で爆発・ 火災による重大災害が頻発したなどの状況にあったことから,平成17年には,「危険性又は有害性等の調査等」の実施を努力義務とすること等を内容とした労働安全衛生法の改正を行っている。平成19年は,爆発による重大災害,火災高熱物による重大災害が,ともに11件であり,昭和60年と比較すると,ともに1件減少している。
- 重大災害発生件数を昭和60年と比較した平成19年の増加(152件増)は,主に,交通事故(95件増),中毒・薬傷(36件増),「その他」の事故の型(29件増)によるものである。その内訳は下記のとおりである。
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ⅱ) 交通事故 |
- 交通事故による重大災害発生件数は,昭和60年の66件から平成19年は161件,2.4倍へと増加している。
- 国民全体の交通事故(道路)(警察庁調べ)は,発生件数が昭和60年の55.3万件から平成18年88.7万件へと1.6倍,負傷者数が昭和60年の68.1万人から平成18年の109.8万人へと1.6倍,自動車保有車両数(国土交通省調べ)が昭和60年の4,824万台から平成19年(3月末時点)7,924万台へと1.6倍それぞれ増加しているが,交通事故による重大災害発生件数の伸びは,これを上回っている。
- 昭和60年と平成19年との比較を,業種別にみると,建設業が28件から70件(うち,工事現場との往復中のものが61件),42件増,2.5倍,製造業が11件から13件,2件増,1.2倍,陸上貨物運送事業が3件から19件,16件増,6.3倍,業種分類「その他」が14件から44件(保健衛生業9件,商業6件,清掃・ と畜業5件,金融広告業4件,教育・研究業3件,接客・娯楽業2件,その他の事業15件),30件増,3.1倍と増加しており,陸上貨物運送事業,業種分類「その他」,建設業などでの増加が顕著である。
厚生労働省では,平成20年4月に,労働時間等の管理及び走行管理の充実等を内容とする「交通労働災害防止のためのガイドライン」の改正を行い,より一層の交通労働災害の防止を図っている。
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ⅲ) 中毒・ 薬傷 |
- 中毒・ 薬傷による重大災害発生件数は,昭和60年の17件から平成19年の53件,3.1倍へと増加している。
- 昭和60年と平成19年との比較は,一酸化炭素中毒が0件から11件(うち調理器具関係4件,原動機・発電機・給湯器関係7件),化学物質(一酸化炭素以外)による中毒が9件から20件,薬傷が4件から10件(以上「化学物質による疾病(中毒・薬傷)」によるもの13件から41件),食中毒が2件から9件(うちノロウイルスによるもの6件),酸素欠乏症が2件から3件へと増加している。
- 業種別にみると,製造業が8件から19件,建設業が9件から13件,業種分類「その他」が0件から20件(うち一酸化炭素中毒5件,化学物質(一酸化炭素以外)による中毒6件,ノロウイルスによる食中毒4件など)であり,業種分類「その他」における増加が顕著である。
- 「化学物質による疾病(中毒・ 薬傷)」は,休業4日以上の疾病者が昭和60年427人から平成18年320人に減少していること,重大災害のうち,不休者を含む災害が59%(重大災害全体は40%),全てが不休者である災害が34%(重大災害全体は12%)を占めていること等の状況から,近年の安全,健康への社会的な関心の高まり等により把握が容易になったことも,この重大災害の件数増加の背景の1つと考えられる。
厚生労働省では,化学物質による疾病の防止を図るため,特定化学物質障害予防規則等に基づく管理の徹底はもとより,平成18年3月に策定した「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針」等に基づく適切な化学物質管理対策を推進している。
- 国民全体のノロウイルスによる食中毒(事件数)は,平成10年123件,平成18年499件と増加している。食中毒による重大災害件数の増加は,近年のノロウイルスの流行等が背景にあると考えられる。
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ⅳ) その他」の事故の型 |
- 感染症等の「その他」の事故の型による重大災害発生件数は,昭和60年の3件から平成19年の32件,10.7倍へと増加している。
- 昭和60年と平成19年との比較は,感染症が0件から17件(うちノロウイルス15件,疥癬2件),紫外線による眼炎が0件から2件,熱中症が0件から2件,虫刺れが0件から2件,激突され・飛来・落下等が3件から7件などであり,感染症(ノロウイルス)によるものが大幅に増加している。
- 業種別にみると,建設業が1件から5件,製造業が0件から6件,業種分類「その他」が2件(接客娯楽業1件,漁業1件)から21件(保健衛生業15件(うち感染症(ノロウイルス)13件),接客娯楽業3件,商業1件,清掃・ と畜業1件,その他の事業1件)へと増加している。
- 国民全体のノロウイルスが原因の1 つである「感染性胃腸炎」は,1定点当たり報告数(「感染症発生動向調査事業」に基づく全国約3,000の小児科医療機関からの報告によるもの)でみると,平成13年289,平成18年381と増加している。
「その他」の事故の型による重大災害の増加の背景には,ノロウイルスが原因の1つである「感染性胃腸炎」の増加などがあると考えられる。
厚生労働省では,介護保険施設等におけるノロウイルスによる感染性胃腸炎の発生・まん延防止を図るため,職員の手洗い,衛生管理の徹底等について,関係事業者等に対する周知・指導を行っている。
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※表5事故の型別の重大災害発生状況の推移については,厚生労働省のホームページ(http://www.mhlw.go.jp/)又は安全衛生情報センターのホームページ(http://www.jaish.gr.jp/)をご覧ください。 |
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