1.趣旨 |
全国労働衛生週間は,昭和25年の第1回実施以来,今年で第67回を迎える。この間,全国労働衛生週間は,国民の労働衛生に関する意識を高揚させ,事業場における自主的労働衛生管理活動を通じた労働者の健康確保に大きな役割を果たしてきたところである。
労働者の健康を巡る状況を見ると,平成27年度の脳・心臓疾患の労災支給決定件数が251人,精神障害の労災支給決定件数が472人となっていること,勤務問題を原因・動機の一つとしている自殺者が約2,200人いること,近年我が国において過労死等が多発し大きな社会問題となっていることなど,職場におけるメンタルヘルス対策や過重労働による健康障害防止対策は重要な課題となっている。
また,業務上疾病の被災者は長期的に減少し,平成27年は前年から47人減少して7,368人となった。疾病別では腰痛が74人減少したものの,4,550人と依然として全体の6割を超え,業種別では社会福祉施設が最も多くなっている。一方,熱中症については,前年から41人増加して464人となり,近年400~500人台で高止まりの状態にある。
さらに,化学物質による疾病は溶剤,薬品等による薬傷・やけど等が多く,また,特定化学物質障害予防規則等の対象となっていない化学物質を原因とするがんなどの遅発性の疾病による労災事案の発生等の新たな問題も生じている。
このような状況を踏まえ,平成26年6月に公布された改正労働安全衛生法により,①ストレスチェック制度の創設によるメンタルヘルス対策のより一層の充実,②表示義務の対象となる化学物質の範囲の拡大と,一定の危険・有害な化学物質に対するリスクアセスメントの実施による化学物質管理,③職場における受動喫煙防止対策等を推進し,業務上疾病の発生を未然防止するための仕組みを充実させたところであり,その確実な履行が必要となっている。
また,平成26年11月に施行された過労死等防止対策推進法及び「過労死等の防止のための対策に関する大綱」(平成27年7月閣議決定)に基づき,調査研究等,啓発,相談体制の整備等,民間団体の活動に対する支援等の各対策を推進し,過労死等がなく,仕事と生活を調和させ,健康で充実して働き続けることのできる社会の実現に寄与することが求められている。
さらに,「ニッポン一億総活躍プラン」(平成28年6月閣議決定)に基づき,疾病を抱える労働者の治療と職業生活の両立支援対策が求められている。
このような背景を踏まえ,今年度は,「健康職場つくるまもるはみんなが主役」をスローガンとして全国労働衛生週間を展開し,事業場における労働衛生意識の高揚を図るとともに,自主的な労働衛生管理活動の一層の促進を図ることとする。 |
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2.スローガン |
「健康職場 つくる まもるは みんなが主役」 |
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3.期間 |
10月1日から10月7日までとする。
なお,全国労働衛生週間の実効を上げるため,9月1日から9月30日までを準備期間とする。 |
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4.主唱者 |
厚生労働省,中央労働災害防止協会 |
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5.協賛者 |
建設業労働災害防止協会,陸上貨物運送事業労働災害防止協会,港湾貨物運送事業労働災害防止協会,林業・木材製造業労働災害防止協会 |
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6.協力者 |
関係行政機関,地方公共団体,安全衛生関係団体,労働団体及び事業者団体 |
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7.実施者 |
各事業場 |
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8.主唱者,協賛者の実施事項 |
10(2)の①重点事項も踏まえ,以下の取組を実施する。 |
(1) |
労働衛生広報資料等の作成,配布を行う。
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(2) |
雑誌等を通じて広報を行う。 |
(3) |
労働衛生講習会等を開催する。 |
(4) |
事業場の実施事項について指導援助する。 |
(5) |
改正労働安全衛生法を周知する。 |
(6) |
その他「全国労働衛生週間」にふさわしい行事等を行う。 |
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9.協力者への依頼 |
主唱者は,上記8の事項を実施するため,協力者に対し,支援,協力を依頼する。 |
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10.実施者の実施事項 |
労働衛生水準のより一層の向上及び労働衛生意識の高揚を図るとともに,自主的な労働衛生管理活動の定着を目指して,各事業場においては,事業者及び労働者が連携・協力しつつ,次の事項を実施する。 |
(1) |
全国労働衛生週間中に実施する事項 |
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ア |
事業者又は総括安全衛生管理者による職場巡視
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イ |
労働衛生旗の掲揚及びスローガン等の掲示 |
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ウ |
労働衛生に関する優良職場,功績者等の表彰 |
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エ |
有害物の漏えい事故,酸素欠乏症等による事故等 |
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オ |
緊急時の災害を想定した実地訓練等の実施
労働衛生に関する講習会・見学会等の開催,作文・写真・標語等の掲示,その他労働衛生の意識高揚のための行事等の実施 |
(2) |
準備期間中に実施する事項 |
下記の事項について,日常の労働衛生活動の総点検を行う。 |
① |
重点事項 |
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ア |
改正労働安全衛生法に関する事項
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(ア) |
平成27年12月1日に施行された改正労働安全衛生法に基づく,ストレスチェック制度の確実な実施 |
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(イ) |
平成28年6月1日に施行された改正労働安全衛生法に基づく,一定の危険・有害な化学物質(SDS交付義務対象物質)に関するリスクアセスメントの着実な実施 |
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a. |
製造者・流通業者が化学物質を含む製剤等を出荷する際のラベル表示・安全データシート(SDS)交付の状況の確認 |
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b. |
化学物質を含む製剤等を使用する際に,「ラベルでアクション」をキャッチフレーズに,事業者と労働者がラベル表示を見て,SDSの入手状況,危険有害性情報の確認 |
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c. |
SDSにより把握した危険有害性についてリスクアセスメントの実施とその結果に基づくリスク低減対策の推進 |
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d. |
ラベルやSDSの内容やリスクアセスメントの結果について労働者に対する教育の推進 |
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(ウ) |
平成27年6月1日に施行された改正労働安全衛生法を踏まえた,職場における受動喫煙防止対策の推進 |
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a. |
各事業場における現状把握と,それを踏まえ決定する実情に応じた適切な受動喫煙防止対策の実施 |
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b. |
受動喫煙の健康への影響に関する理解を図るための教育啓発の実施 |
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c. |
支援制度(専門家による技術的な相談支援,たばこ煙の濃度等の測定機器の貸与,喫煙室の設置等に係る費用の助成)の活用 |
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イ |
その他の重点事項 |
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(ア) |
疾病を抱える労働者の治療と職業生活の両立支援対策の推進
「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」(平成28年2月23日付け基発0223第5号,健発0223第3号,職発0223第7号)に基づく以下の事業場環境整備 |
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a. |
事業者による基本方針等の表明と労働者への周知 |
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b. |
研修等による両立支援に関する意識啓発 |
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c. |
相談窓口等の明確化 |
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d. |
両立支援に活用できる休暇・勤務制度や社内体制の整備 |
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(イ) |
労働者の心の健康の保持増進のための指針等に基づくメンタルヘルス対策の推進 |
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a. |
事業者によるメンタルヘルスケアを積極的に推進する旨の表明 |
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b. |
衛生委員会等における調査審議を踏まえた「心の健康づくり計画」の策定,実施状況の評価及び改善 |
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c. |
4つのメンタルヘルスケア(セルフケア,ラインによるケア,事業場内産業保健スタッフ等によるケア,事業場外資源によるケア)の推進に関する教育研修・情報提供 |
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d. |
職場環境等の評価と改善等を通じたメンタルヘルス不調の予防から早期発見・早期対応,職場復帰における支援までの総合的な取組の実施 |
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e. |
自殺予防週間(9月10日~9月16日)等をとらえた職場における自殺対策への積極的な取組の実施 |
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f. |
産業保健総合支援センターにおけるメンタルヘルス対策に関する支援の活用 |
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(ウ) |
過重労働による健康障害防止のための総合対策の推進 |
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a. |
時間外・休日労働の削減,年次有給休暇の取得促進及び労働時間等の設定の改善による仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の推進 |
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b. |
健康診断の適切な実施,異常所見者の健康保持に関する医師からの意見聴取及び健康診断実施後の措置の徹底 |
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c. |
長時間にわたる時間外・休日労働を行った労働者に対する面接指導等の実施 |
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d. |
小規模事業場における面接指導実施に当たっての産業保健総合支援センターの地域窓口の活用 |
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(エ) |
職場における腰痛予防対策指針による腰痛の予防対策の推進
腰痛予防対策指針(平成25年6月18日付け基発0618第1号)に係る以下の対策の推進 |
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a. |
リスクアセスメント及びリスク低減対策の実施 |
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b. |
作業標準の策定及び腰痛予防に関する労働衛生教育(雇入れ時教育を含む)の実施 |
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c. |
社会福祉施設及び医療保健業向けの腰痛予防講習会等を活用した介護・看護作業における腰部に負担の少ない介助法の普及の推進 |
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(オ) |
溶剤,薬品等による薬傷・やけど等の防止 |
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a. |
化学物質の飛沫等のばく露のおそれがある作業における保護眼鏡の着用の徹底 |
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b. |
不浸透性の保護手袋,保護衣等,適切な保護具の選定・着用の徹底 |
② |
労働衛生3管理の推進等 |
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ア |
労働衛生管理体制の確立とリスクアセスメントを含む労働安全衛生マネジメントシステムの確立を始めとした労働衛生管理活動の活性化 |
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(ア) |
労働衛生管理活動に関する計画の作成及びその実施,評価,改善 |
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(イ) |
総括安全衛生管理者,産業医,衛生管理者,衛生推進者等の労働衛生管理体制の整備・充実とその職務の明確化及び連携の強化 |
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(ウ) |
衛生委員会の開催と必要な事項の調査審議 |
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(エ) |
危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づく必要な措置の推進 |
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(オ) |
現場管理者の職務権限の確立 |
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(カ) |
労働衛生管理に関する規程の点検,整備・充実 |
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イ |
作業環境管理の推進 |
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(ア) |
有害物等を取り扱う事業場における作業環境測定の実施とその結果の周知及びその結果に基づく作業環境の改善 |
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(イ) |
局所排気装置等の適正な設置及び稼働並びに検査及び点検の実施の徹底 |
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(ウ) |
換気,採光,照度,便所等の状態の点検及び改善 |
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ウ |
作業管理の推進 |
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(ア) |
自動化,省力化等による作業負担の軽減の推進 |
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(イ) |
作業管理のための各種作業指針の周知徹底 |
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(ウ) |
適切,有効な保護具等の選択,使用及び保守管理の徹底 |
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エ |
健康管理の推進
「職場の健康診断実施強化月間」として,以下の事項を重点的に実施 |
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(ア) |
健康診断の適切な実施,異常所見者の健康保持に関する医師からの意見聴取及び健康診断実施後の措置の徹底 |
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(イ) |
一般健康診断結果に基づく必要な労働者に対する医師又は保健師による保健指導の実施 |
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(ウ) |
高齢者の医療の確保に関する法律に基づく医療保険者が行う特定健診・保健指導との連携 |
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(エ) |
小規模事業場における産業保健総合支援センターの地域窓口の活用 |
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オ |
労働衛生教育の推進 |
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(ア) |
雇入時教育,危険有害業務従事者に対する特別教育等の徹底 |
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(イ) |
衛生管理者,作業主任者等労働衛生管理体制の中核となる者に対する能力向上教育の実施 |
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カ |
心とからだの健康づくりの継続的かつ計画的な実施 |
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キ |
快適職場指針に基づく快適な職場環境の形成の推進 |
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ク |
労働者の治療と職業生活の両立等の支援に係る取組の促進 |
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ケ |
職場における感染症(ウイルス性肝炎,HIV,風しん等)に関する理解と取組の促進 |
③ |
作業の特性に応じた事項 |
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ア |
粉じん障害防止対策の徹底 |
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(ア) |
第8次粉じん障害防止総合対策に基づく「粉じん障害防止総合対策推進強化月間」としての次の事項を重点とした取組の推進 |
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a. |
アーク溶接作業と岩石等の裁断等作業に係る粉じん障害防止対策 |
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b. |
金属等の研磨作業等に係る粉じん障害防止対策 |
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c. |
ずい道等建設工事における粉じん障害防止対策 |
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d. |
離職後の健康管理 |
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(イ) |
改正粉じん障害防止規則に基づく取組の推進 |
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イ |
熱中症予防対策の徹底 |
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(ア) |
暑さ指数(WBGT値)が基準値を超えると予想される場合の,作業時間の見直し及び単独作業の回避 |
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(イ) |
自覚症状の有無に関わらない水分・塩分の摂取 |
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ウ |
電離放射線障害防止対策の徹底 |
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エ |
騒音障害防止のためのガイドラインに基づく騒音障害防止対策の徹底 |
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オ |
振動障害総合対策要綱に基づく振動障害防止対策の徹底 |
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カ |
VDT作業における労働衛生管理のためのガイドラインによるVDT作業における労働衛生管理対策の推進 |
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キ |
化学物質による健康障害防止対策等の徹底 |
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(ア) |
化学物質を製造・使用する事業場における漏えい・ばく露防止措置の徹底 |
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(イ) |
有機溶剤を取り扱う作業におけるばく露防止措置の徹底 |
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(ウ) |
建設業,食料品製造業等における一酸化炭素中毒の防止のための換気の徹底 |
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(エ) |
特殊健康診断等による健康管理の徹底 |
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ク |
石綿障害予防対策の徹底 |
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(ア) |
建築物等の解体等の作業における石綿ばく露防止対策の徹底 |
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(イ) |
吹き付け石綿又は石綿含有断熱材等の損傷等による石綿ばく露防止対策の徹底 |
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(ウ) |
石綿製品の全面禁止の徹底 |
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(エ) |
離職後の健康管理の推進 |
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ケ |
酸素欠乏症等の防止対策の推進 |
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(ア) |
酸素欠乏危険場所における作業前の酸素及び硫化水素濃度の測定の徹底 |
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(イ) |
換気の実施,空気呼吸器等の使用等の徹底 |
④ |
東日本大震災に関連する労働衛生対策の推進 |
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ア |
建築物等の解体作業,がれき処理作業や津波で打ち上げられた船舶の解体における石綿ばく露防止対策,粉じんばく露防止対策,破傷風等感染防止対策等の徹底 |
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イ |
東電福島第一原発における作業や除染作業等に従事する労働者の放射線障害防止対策の徹底 |
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ウ |
平成24年8月10日付け基発0810第1号に基づく東電福島第一原発における事故の教訓を踏まえた対応の徹底 |
⑤ |
平成28年熊本地震に関連する労働衛生対策の推進
建築物等の解体作業やがれき処理作業における石綿ばく露防止対策,粉じんばく露防止対策,破傷風等感染防止対策等の徹底 |