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趣旨 |
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これまで、職場における熱中症予防対策については、平成21年6月19日付け基発第0619001号「職場における熱中症の予防について」に基づく対策をはじめとして、毎年重点事項を示して、その予防対策に取り組んできたところであり、平成29年においては「STOP!熱中症クールワークキャンペーン」を初めて実施し、各災防団体等と連携して熱中症予防対策に取り組んできたところである。 |
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平成29年の職場における熱中症の発生状況(速報値)を見ると、死亡者数は7月に10人、8月に6人で、平成28年の発生状況(確定値)と比較して計4人増加する結果となった。死亡災害の発生状況を見ると、WBGT値(暑さ指数)計を事業場で準備していないために作業環境の把握や作業計画の変更ができていない例や、熱中症になった労働者の発見や救急搬送が遅れた例、事業場における健康管理を適切に実施していない例などが見られる。このようなことから、職場における熱中症対策がまだ十分に浸透していなかったと考えられ、熱中症予防対策の徹底を図ることが必要である。 |
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平成30年の本キャンペーンにおいては、職場における熱中症予防対策の浸透を図るとともに、重篤な災害を防ぐために、事業場におけるWBGT値の把握や緊急時の連絡体制の整備等を特に重点的に実施し、改めて職場における熱中症予防対策の徹底を図ることを目的とする。 |
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期間 |
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平成30年5月1日から9月30日までとする。 |
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なお、4月を準備期間とし、政府全体の取組である熱中症予防強化月間の7月を重点取組期間とする。 |
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主唱 |
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厚生労働省、中央労働災害防止協会、建設業労働災害防止協会、陸上貨物運送事業労働災害防止協会、港湾貨物運送事業労働災害防止協会、林業・木材製造業労働災害防止協会、一般社団法人日本労働安全衛生コンサルタント会、一般社団法人全国警備業協会 |
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協賛 |
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公益社団法人日本保安用品協会、一般社団法人日本電気計測器工業会 |
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後援(予定) |
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関係省庁 |
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主唱者及び協賛者等による連携 |
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(1) |
主唱者及び協賛者等による連絡会議の開催 |
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(2) |
各関係団体における実施事項についての情報交換及び相互支援の実施 |
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主唱者の実施事項 |
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(1) |
厚生労働省の実施事項 |
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ア |
熱中症予防に係る周知啓発資料等の作成、配布 |
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イ |
熱中症予防に係る有益な情報等を集めた特設サイトの開設 |
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(ア) |
災害事例、効果的な対策、好事例、先進事例の紹介(チェックリストを含む) |
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(イ) |
熱中症予防に資するセミナー、教育用ツール等の案内 |
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ウ |
各種団体等への協力要請及び連携の促進 |
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エ |
都道府県労働局、労働基準監督署による事業場への啓発・指導 |
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オ |
その他本キャンペーンを効果的に推進するための事項 |
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(2) |
各労働災害防止協会等の実施事項 |
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ア |
会員事業場等への周知啓発 |
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イ |
事業場の熱中症予防対策への指導援助 |
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ウ |
熱中症予防に資するセミナー等の開催、教育支援 |
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エ |
熱中症予防に資するテキスト、周知啓発資料等の提供 |
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オ |
その他本キャンペーンを効果的に推進するための事項 |
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協賛者の実施事項 |
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(1) |
有効な熱中症予防関連製品及び日本工業規格を満たしたWBGT値(暑さ指数)測定器の普及促進 |
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(2) |
その他本キャンペーンを効果的に推進するための事項 |
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9 |
各事業場における重点実施事項 |
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各事業場は、期間中に「10各事業場における詳細な実施事項」に掲げる取組を行うこととするが、特に次に掲げる事項については、重点的に取り組むこととする。 |
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(1) |
準備期間中 |
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・ |
「10(1)アWBGT値(暑さ指数)の把握の準備」に掲げる事項
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・ |
「10(1)イ作業計画の策定等」に掲げる事項 |
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・ |
「10(1)ク緊急事態の措置」に掲げる事項 |
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(2) |
キャンペーン期間中 |
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・ |
「10(2)アWBGT値(暑さ指数)の把握、イWBGT値(暑さ指数)の評価、ウ作業環境管理」に掲げる事項 |
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・ |
「10(2)エ作業管理」に掲げる事項 |
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・ |
「10(2)オ健康管理」に掲げる事項 |
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(3) |
重点取組期間中・「10(3)ア作業環境管理」に掲げる事項 |
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・ |
「10(3)イ作業管理」に掲げる事項 |
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・ |
「10(3)オ異常時の措置」に掲げる事項 |
10 |
各事業場における詳細な実施事項 |
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(1) |
準備期間中に実施すべき事項 |
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ア |
WBGT値(暑さ指数)の把握の準備 |
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WBGT値(暑さ指数)測定器については、JIS Z 8504又はJIS B 7922に適合したものを準備しておく。ただし、輻射熱等の影響等により、作業場所によってWBGT値(暑さ指数)が大きく異なることがあるので、その場合には、容易に持運びできるものを準備しておく。 |
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なお、黒球が付いていない測定器は、日本工業規格に適合しておらず、こうした測定器では、特に屋外や輻射熱がある作業場所においては、WBGT値(暑さ指数)が実際よりも低く表示されることがあるので、これらの場所において作業を行う場合には、必ず黒球が付いているものを準備する。 |
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イ |
作業計画の策定等 |
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夏期の暑熱環境下においては、作業を中止すること(WBGT値の基準値については表1を参考)、休憩時間を一定時間ごとに十分に確保すること、熱への順化期間を設けること等をあらかじめ見積もった作業計画を事前に検討し、策定する。 |
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ウ |
設備対策の検討 |
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WBGT値(暑さ指数)が基準値(表1)を超えるおそれのある場所において作業を行うことが予定されている場合には、簡易な屋根の設置、通風又は冷房設備の設置、ミストシャワー等による散水設備の設置を検討する。ただし、ミストシャワー等による散水設備の設置に当たっては、湿度が上昇することや滑りやすくなることに留意する。 |
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エ |
休憩場所の確保の検討 |
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作業場所の近くに冷房を備えた休憩場所又は日陰等の涼しい休憩場所の確保を検討する。当該休憩場所は臥床することのできる広さのものとする。 |
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オ |
服装等の検討 |
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熱を吸収し又は保熱しやすい服装は避け、透湿性及び通気性の良い服装を準備する。これらの機能を持つ身体を冷却する服の着用も検討する。また、直射日光下における作業が予定されている場合には、通気性の良い帽子、ヘルメット等を準備する。 |
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カ |
教育研修の実施 |
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各級管理者、労働者に対する教育を実施する。教育は、別表3及び別表4に基づき実施する。 |
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教育用教材としては、厚生労働省ホームページに公表されている「職場における熱中症予防対策マニュアル」及び熱中症予防対策について点検すべき事項をまとめたリーフレット等、環境省熱中症予防情報サイトに公表されている熱中症に係る動画コンテンツ及び救急措置等の要点が記載された携帯カード「熱中症予防カード」などを活用する。 |
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なお、事業者が自ら当該教育を行うことが困難な場合には、関係団体が行う教育を活用する。 |
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キ |
熱中症予防管理者の選任及び責任体制の確立 |
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作業を管理する者であって、上記カの教育研修を受けた者等熱中症について十分な知識を有するもののうちから、熱中症予防管理者を選任し、同管理者に対し、10(2)クの同管理者が行う業務について教育を行う。あわせて、事業場における熱中症予防に係る責任体制の確立を図る。 |
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ク |
緊急事態の措置 |
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事業場において、労働者の体調不良時に搬送を行う病院の把握や緊急時の対応について確認を行い、労働者に対して周知する。 |
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(2) |
キャンペーン期間中に実施すべき事項 |
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ア |
WBGT値(暑さ指数)の把握 |
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日本工業規格に適合したWBGT値(暑さ指数)測定器を使用し、WBGT値(暑さ指数) を随時把握する。作業場所が近い場合であっても、太陽照射の有無などによる輻射熱の影響でWBGT値(暑さ指数)が大きく異なることがあることに留意する。 |
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WBGT値(暑さ指数)測定器が準備できなかった場合には、環境省熱中症予防サイト(http://www.wbgt.env.go.jp/)を参考にすること。 |
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なお、建設業労働災害防止協会において、建設現場における熱中症の危険度を簡単に判定できるフロー図が作成されており、同協会のホームページに掲載されているので、参考とする。
(https://www.kensaibou.or.jp/safe_tech/leaflet/files/heat_stroke_risk_assessment_chart.pdf) |
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イ |
WBGT値(暑さ指数)の評価 |
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WBGT値(暑さ指数)が別紙の基準値を超え又は超えるおそれのある場合には、WBGT値(暑さ指数)の低減をはじめとした以下ウ~オの対策を徹底する。 |
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ウ |
作業環境管理 |
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(ア) |
WBGT値(暑さ指数)の低減等
10(1)ウで検討したWBGT値(暑さ指数)の低減対策を行う。 |
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(イ) |
休憩場所の整備等
10(1)エで検討した休憩場所の設置を行う。休憩場所には、氷、冷たいおしぼり、水風呂、シャワー等の身体を適度に冷やすことのできる物品及び設備を設ける。また、水分及び塩分の補給を定期的かつ容易に行えることができるよう飲料水、スポーツドリンク等の備付け等を行う。 |
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エ |
作業管理 |
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(ア) |
作業時間の短縮等
10(1)イで検討した作業計画に基づき、WBGT基準値を大幅に超える場合は、原則として作業を行わないこととする。WBGT基準値を大幅に超える場所で、やむを得ず作業を行う場合は、次に留意して作業を行う。 |
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① |
単独作業を控え、休憩時間を長めに設定する。 |
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② |
作業中は心拍数、体温及び尿の回数・色等の身体状況、水分及び塩分の摂取状況を頻繁に確認する。 |
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(イ) |
熱への順化
熱への順化の有無が、熱中症の発生リスクに大きく影響することから、7日以上かけて熱へのばく露時間を次第に長くする。
なお、夏季休暇等のため熱へのばく露が中断すると4日後には順化の顕著な喪失が始まることに留意する。
熱への順化ができていない場合には、特に10(2)エ(ア)に留意のうえ、作業を行う。 |
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(ウ) |
水分及び塩分の摂取
自覚症状の有無にかかわらず、水分及び塩分の作業前後の摂取及び作業中の定期的な摂取を行うとともに、水分及び塩分の摂取を確認するための表の作成、作業中の巡視における確認などにより、定期的な水分及び塩分の摂取の徹底を図る。
なお、尿の回数が少ない又は尿の色が普段より濃い状態は、体内の水分が不足している状態である可能性があるので留意する。 |
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(エ) |
服装等
10(1)オで検討した服、帽子、ヘルメット等を着用する。 |
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オ |
健康管理 |
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(ア) |
健康診断結果に基づく対応等
熱中症の発症に影響を及ぼすおそれのある次のような疾病を有する者に対しては、医師等の意見を踏まえ配慮を行う。
①糖尿病、②高血圧症、③心疾患、④腎不全、⑤精神・神経関係の疾患、⑥広範囲の皮膚疾患、⑦感冒等、⑧下痢等 |
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(イ) |
日常の健康管理等
当日の朝食の未摂取、睡眠不足、前日の多量の飲酒、体調不良等が熱中症の発症に影響を与えるおそれがあることについて指導を行うとともに、必要に応じ作業の配置換え等を行う。また、熱中症の具体的症状について労働者に教育し、労働者自身が早期に気づくことができるようにする。 |
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(ウ) |
労働者の健康状態の確認
作業開始前に労働者の健康状態を確認する。作業中は巡視を頻繁に行い、声をかけるなどして労働者の健康状態を確認する。また、複数の労働者による作業においては、労働者にお互いの健康状態について留意するよう指導するとともに、異変を感じた際には躊躇することなく周囲の労働者や管理者に申し出るよう指導する。 |
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カ |
労働衛生教育 |
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10(1)カの教育研修については、期間中、機会をとらえて実施する。特に別表4に示す内容については、雇入れ時や新規入場時に加え、日々の朝礼等の際にも繰り返し実施する。 |
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キ |
異常時の措置 |
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少しでも本人や周りが異変を感じた際には、病院に搬送するなどの措置をとるとともに、症状に応じて救急隊を要請する。病院に搬送するまでの間や救急隊が到着するまでの間には、必要に応じて水分・塩分の摂取を行ったり、全身をタオルやスプレー等で濡らして送風したり、あおいで体表面からの水分蒸発を促進すること等により効果的な体温の低減措置に努める。 |
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ク |
熱中症予防管理者の業務 |
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熱中症予防管理者は、次の業務を行う。 |
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(ア) |
10(2)ウ(ア)のWBGT値(暑さ指数)の低減対策の実施状況を確認すること。 |
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(イ) |
あらかじめ各労働者の熱への順化の状況を確認すること。 |
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(ウ) |
朝礼時等作業開始前において労働者の体調を確認すること。 |
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(エ) |
WBGT値(暑さ指数)の測定結果を確認し、その結果に応じ、作業を中止又は中断させること。 |
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(オ) |
職場巡視を行い、労働者の水分及び塩分の摂取状況を確認すること。 |
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(3) |
重点取組期間中に実施すべき事項 |
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ア |
作業環境管理 |
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(2)ウ(ア)のWBGT値(暑さ指数)の低減効果を再確認し、必要に応じ追加対策を行う。 |
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イ |
作業管理 |
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(ア) |
期間中に梅雨明けを迎える地域が多く、急激なWBGT値(暑さ指数)の上昇が想定されるが、その場合は、労働者の熱への順化ができていないことから、WBGT値(暑さ指数)に応じた作業の中断等を徹底する。 |
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(イ) |
水分及び塩分の積極的な摂取や熱中症予防管理者によるその確認の徹底を図る。 |
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ウ |
健康管理 |
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当日の朝食の未摂取、睡眠不足、体調不良、前日の多量の飲酒等について、作業開始前に確認するとともに、巡視の頻度を増やす。 |
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エ |
労働衛生教育 |
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期間中は熱中症のリスクが高まっていることを含め、重点的な教育を行う。 |
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オ |
異常時の措置 |
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異常を認めたときは、躊躇することなく救急隊を要請する。 |