〈参考2〉 |
法59条3項に基づき、特別教育の科目、範囲及び時間数等を特別教育規程で定める予定です。(詳細は別添3参照) |
【別添1】諮問文(PDF:582KB)(添付略)
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【別添2】答申文(PDF:393KB)(添付略) |
【別添3】労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令案等について(PDF:829KB) |
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労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令案等について |
厚生労働省安全衛生部 安全課 |
専門家検討会設置の背景、検討事項等 |
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1 背景及び趣旨 |
● |
労働安全衛生法令では、高さ2メートル以上での作業時には、作業床、柵等を設けることが規定されているが、それが困難な場合、安全帯の使用等も認められている。 |
● |
従来の胴ベルト型安全帯は、墜落時の衝撃による内臓の損傷、胸部の圧迫等による危険性が指摘されており、国内でも胴ベルト使用に関わる災害が確認されている。 |
● |
国際規格等においては胴ベルト型ではなく、着用者の身体を肩、腿などの複数箇所で支持する構造のフルハーネス型の保護具が採用されている。 |
これらを踏まえ、墜落防止用の個人用保護具に関する規制のあり方について検討した。 |
2 検討事項 |
① |
墜落防止用の個人用保護具に関する国際的な動向及び災害事例 |
② |
上記保護具に関する規制のあり方
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③ |
上記保護具の具備すべき技術的要件 |
④ |
上記保護具の使用に関する労働者教育のあり方
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3 検討会参集者 |
○印は座長 |
井上 均 |
日本安全帯研究会 技術委員長 |
臼井伸之介
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大阪大学大学院 人間科学研究科 教授 |
大木 勇雄 |
(一社)建設産業専門団体運合会
(一社)日本建設躯体工事業団体連合会 常任理事 |
岡本 浩志 |
(一社)日本鉄鋼連盟 安全推進委員会 |
蟹澤 宏剛 |
芝浦工業大学 建築学部建築学科 教授 |
木戸 啓人 |
電気事業連合会 工務部長 |
堺 和雄 |
(一社)日本造船工業会 安全衛生部会 主査 |
○豊澤 康男 |
(独)労働者健康安全機構
労働安全衛生総合研究所 所長 |
日野 泰道 |
(独)労働者健康安全機構
労働安全衛生総合研究所 上席研究員 |
本多 敦郎 |
(一社)日本建設業連合会 安全委員会 安全対策部 会長 |
最川 隆由 |
(一社)全国建設業協会 労働委員会 委員 |
本山 謙治 |
建設業労働災害防止協会 技術管理部長 |
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4 スケジュール |
○ |
専門家検討会(平成28年11月~平成29年6月。6月13日公表) |
○ |
政省令等のパブリックコメント(平成30年3月~4月) |
○ |
政省令の労働政策審議会諮問(5月23日) |
○ |
政省令公布(6月上旬~中旬予定) |
○ |
政省令等施行(平成31年2月1日。経過措置満了平成34年1月) |
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検討結果:墜落防止用の個人用保護具に関する規制のあり方 |
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1 安全帯使用時の墜落災害の状況 |
● |
10年間(平成18年~27年)で、墜落時に宙づりになった際、胴ベルトがずり上がって圧迫され、死亡した事例が6件。 |
● |
安全帯使用時の墜落災害は5年間(平成22年~26年)で170件あり、そのうち、①宙づり・落下中に梁等に衝突した事例が10%、②ランヤード切れ・安全帯が脱げた事例が9%、③安全帯を使用していたにも関わらず、地上等に衝突した事例が9%。 |
● |
U字つり胴ベルト型安全帯を使用していた際の墜落災害は1年間(平成27年)で15件。U字つりランヤードが緩み墜落した事例が33%、フックが外れるなどで墜落した事例が66%。 |
2 国際的な動向 |
ISO規格、欧州(EN)規格、米国安全衛生庁(OSHA)規則等においては、墜落防止用の保護具等を以下の3つに分類。 |
① |
フォールアレスト用保護具:墜落時に労働者を地面に衝突させることなく制止し、保持できる性能を有する保護具 |
② |
ワークポジショニング用器具:ロープ等の張力により、労働者の身体を作業箇所に保持するための器具 |
③ |
レストレイント用保護具:労働者が墜落する危険のある箇所に到達することを制止する保護具 |
3 新たな規制の基本的考え方 |
① |
フォールアレスト用保護具での身体保持方法 |
● |
墜落時の身体保護の観点から、国際基準に適合し、胴ベルト型ではなく、フルハーネス型を原則とすべき。 |
● |
一方で、フルハーネス型は胴ベルト型と比較して一定程度落下距離が長くなるため、墜落時にフルハーネス型着用者が地面に到達する場合(注)等への対応として、一定の条件に適合する胴ベルト型安全帯の使用を認めるべき。
(注) |
落下距離が作業箇所の高さを上回る場合。落下距離は、自由落下距離とショックアブソーバ等の伸びの合計。 |
|
② |
U字つり用胴ベルトの位置づけ |
● |
今後、ワークポジショニング用器具として位置づけ、U字つり用胴ベルト使用時には、バックアップとして、フォールアレスト用保護具を併用すべき。 |
③ |
「その他の命」の位置づけ |
● |
現行で規定されている「その他の命綱」については、レストレイント用保護具として位置づけるべき。 |
|
 |
|
〈フルハーネス型墜落防止用の個人用保護具〉 |
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政令改正の内容 |
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1 労働安全衛生法施行令(政令)の位置づけ |
● |
労働安全衛生法(昭和47年法律第57号。以下「法」という。)第42条においては、政令で定める機械等は、厚生労働大臣が定める規格又は安全装置を具備しなければ、譲渡し、貸与し、又は設置してはならないこととしている。 |
● |
同条に基づき、労働安全衛生法施行令(昭和47年政令第318号。以下「政令」という。)第13条第3項各号において、その機械等を具体的に定めている。 |
2 政令改正の内容 |
令第13条第3項第28号の「安全帯(墜落による危険を防止するためのものに限る。)」を「墜落制止用器具」に改める。 |
● |
法第42条の規定の対象機械等からいわゆる「U字つり」(ワークポジショニング)の安全帯を除き、「一本つり」(フォールアレスト)に限定するための改正である。 |
3 「墜落制止用器具」の範囲 |
● |
従来の「安全帯」には、①胴ベルト型(一本つり)、②胴ベルト型(U字つり)③ハーネス型(一本つり)が含まれるが、「墜落制止用器具」は、従来の安全帯から②を除いたもの。 |
4 「墜落制止用器具」の名称について |
● |
安全帯に関するISO規格において「一本つり」の安全帯を指す用語として「フォールアレストシステム(fall―arrest system)」という言葉が用いられているところ、和訳すると高所から墜落してしまった場合に、地面等に激突する前に墜落をおしとどめるという意味であることから、「墜落制止」とした。また、「墜落を制止するために用いる器具」であるため、その名称は「墜落制止用器具」とした。 |
● |
なお、かつて、欧州諸国の規格等においては、「インダストリアル・セーフティベルト(indus-trial safety belt)」といった用語が使用されていたが、2000年に制定された安全帯に係るISO規格では、フルハーネスを前提としているため、「セーフティベルト(safety belt)」等という用語は使われておらず、また、諸外国の法令・規格等においても、ほとんど使用されていない。我が国においても、今後、フルハーネスを原則としていくことから、国際的な動向を踏まえ、安全帯という用語は使用しないこととした。 |
5 政令の施行日及び経過措置 |
● |
政令は、平成31年2月1日から施行する。 |
● |
政令の施行の日前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。 |
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安衛則等改正の内容(墜落による危険の防止関係) |
|
1 労働安全衛生規則(安衛則)等の位置づけ |
● |
法第27条第1項の規定に基づき、労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号。以下「安衛則」という。)等において、事業者は、転落することにより労働者に危険が生ずるおそれのあるときは、安全帯を使用させる等の転落の危険を防止するための措置を請じなければならないこととされている(安衛則第130条の5等)。 |
2 安衛則等の改正の内容(墜落による危険の防止) |
● |
安衛則、ボイラー則、クレーン則、ゴンドラ則及び酸欠則のうち、次の規定について、「安全帯」を「墜落による危険のおそれに応じた性能を有する墜落制止用器具(以下「要求性能墜落制止用器具」という。)」に改める。 |
① |
「安全帯」を労働者に使用させることを事業者に義務付けることを内容としている規定及び当該規定と関係する規定 |
② |
作業主任者等に「安全帯」の使用状況の監視や機能の点検等を義務付けることを内容としている規定 |
3 「墜落の危険のおそれに応じた性能」について |
● |
専門家検討会において、墜落制止用器具はフルハーネース型を原則とすべきであるが、墜落時にフルハーネス型の着用者が地面に到達するおそれのある場合(注1)等の対応として、一定の条件(注2)に適合する胴ペルト型を使用することが有効であり、使用を認めるべきという提言があった。 |
● |
これを踏まえ、作業内容及び作業箇所の高さ等に応じた性能を有する「要求性能墜落制止用器具」を使用させることを事業者に義務付ける。 |
|
注1:胴ベルト型を使用可能とする高さについては、いかなる場合でも守らなければならない最低限の基準として、「6.75メートル以下」と告示(安全帯の規格(平成14年厚生労働省告示第38号)を全面改正して定める「墜落制止用器具の規格(以下「新規格」という。)に規定する。 |
さらに、作業内容及び取付設備の高さ等に応じた、より適切な高さをガイドラインで推奨する。(建設業では5メートル以下、電柱上での作業等では2メートルなど。) |
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注2:胴ベルト型が満たすべき「一定の条件」については、新規格において規定する。(例:墜落時の衝撃荷重が4キロニュートン以下、ランヤードの長さが1.7メートル以下など。) |
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安衛則等改正の内容(特別教育関係) |
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1 労働安全衛生規則(安衛則)等の位置づけ |
● |
法第59条第3項では、事業者は、危険又は有害な業務で、厚生労働省令で定めるものに労働者をつかせるときは、特別教育を行なわなければならないこととされている。 |
● |
同項に基づき、安衛則第36条各号において特別教育が必要となる業務を定めている。 |
2 安衛則等の改正の内容(特別教育) |
● |
安衛則第36条を改正し、法第59条第3項の特別教育の対象となる業務に、「高さが二メートル以上の箇所であつて作業床を設けることが困離なところにおいて、墜落制止用器具のうちフルハーネス型のものを用いて行う作業に係る業務(ロープ高所作業に係る業務を除く。)」(注1)(注2)を追加する。 |
● |
墜落災害においては、安全帯を着用だけして使用していなかったという事案や、安全帯を使用していてもその使用方法が適切でなかった事案も多いことから、墜落制止用器具を用いて作業を行う労働者に対する教育を強化すべきであると検討会で提言されたことを踏まえたもの。 |
|
注1:作業床の設置が困難の場所での作業は、他の高所作業と比較して墜落の危険性が高いこと、さらに、フルハーネス型は胴ベルトと比較して適切な着用や使用方法が難しく、胴ベルトよりも高い箇所で使用されることが多いため。 |
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注2:ロープ高所作業には、すでに特別教育が義務付けられているため、新たな特別教育の対象業務からは除く。 |
3 特別教育の概要(告示事項:参考) |
● |
安全衛生特別教育規程(昭和47年労働省告示第92号)を改正し、当該業務に係る特別教育の科目、範囲及び時間を定めるなど所要の改正を行う。 |
学科科目 |
範囲 |
時間 |
作業に関する知識 |
作業に用いる設備の種類、構造及び取扱い方法 作業に用いる設備の点検及び整備の方法 作業の方法 |
1時間 |
墜落制止用器具(フルハーネス型のものに限る。以下同じ。)に関する知識 |
墜落制止用器具のフルハーネス及びランヤードの種類及び構造 墜落制止用器具のフルハーネスの装着方法 墜落制止用器具のランヤードの取付け設備等への取付け方法及び選定方法 墜落制止用器具の点検及び整備の方法 墜落制止用器具の関連器具の使用方法 |
2時間 |
労働災害の防止に関する知識 |
墜落による労働災害の防止のための措置 落下物による危険防止のための措置 感電防止のための措置 保護帽の使用方法及び保守点検の方法 事故発生時の措置 その他作業に伴う災害及びその防止方法 |
1時間 |
関係法令 |
労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)、労働安全衛生法施行令(昭和47年政令第318号)及び労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)中の関係条項 |
0.5時間 |
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実技科目 |
範囲 |
時間 |
墜落制止用器具の使用方法 |
墜落制止用器具のフルハーネスの等装着方法墜落制止用器具のランヤードの取付け設備等への取付け方法墜落による労働災害防止のための措置墜落制止用器具の点検及び整備の方法 |
1.5時間 |
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墜落制止用器具の規格の概要(告示事項:参考) |
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■法令上の位置づけ |
法第42条においては、政令で定める一定の機械等は、厚生労働大臣が定める規格又は安全装置を具備しなければ、譲渡し、貸与し、又は設置してはならないこととしている。 |
1 基本的考え方 |
① |
基本的考え方 |
● |
原則として、ISO規格(ISO10333)に整合させる。 |
● |
一部、日本人の体格等を踏まえた独自の基準を設定する。
(フック、ランヤード、ショックアブソーバの引張強度等) |
② |
構造規格の性能要件化 |
● |
技術の進展に迅速に対応するため、規定内容を可能な限り性能要件化し、試験方法等の詳細はJIS規格を引用する。 |
2 適用範囲、定義、使用条件 |
① |
新規格の適用範囲 |
● |
一本つり(フォールアレスト)関連機器に限定し、U字つり(ワークポジショニング)は、新規格では規定しない。 |
② |
定義の改正 |
● |
「フルハーネス」(墜落を制止する際に身体の荷重を肩、腰部、もも等複数箇所において支持する構造の部品)、「自由落下距離」、「落下距離」の定義の追加 |
● |
「グリップ」、「伸縮調節器」等、一本つり以外の機器を削除 |
③ |
使用条件 |
ⅰ. |
墜落制止用器具のランヤード、巻取り器、ショックアブソーバ等は、作業箇所の高さ及び取付け設備の状況に応じ、適切なものでなければならないこと |
ⅱ. |
ⅰ.に関わらず、規格に定める最大の自由落下距離(4m)とショックアブソーバの伸び(1.75m)の合計値に1mを加えた値(6.75m)を超える高さの箇所で使用する墜落制止用器具は、フルハーネス型のものでなければならないこと。 |
ⅲ. |
墜落制止用器具は、当該墜落制止用器具を着用する者の体重及びその装備品の質量の合計に耐えるものでなければならないことと。 |
|
3 構造、強度、耐衝撃性等 |
① |
構造 |
● |
胴ベルト型及びフルハーネス型の構造を規定 |
② |
部品の強度 |
● |
胴ベルト、フルハーネス等の強度を規定。基準はISO規格に整合させるが、ランヤードのロープ等、コネクタ、巻取り器については、日本人の体格等に合わせた独自基準を採用。 |
③ |
材料、部品の形状、部品の接続 |
● |
胴ベルト、フルハーネス、バックル、ランヤード、コネクタの形状等を性能規定化。 |
● |
部品の接続についても、接続可能で相互に干渉せず、機能を発揮することのみを規定し、その他は削除。 |
④ |
耐衝撃性能等 |
● |
フルハーネス、ショックアブソーバ、巻取り器については、パーツごとに耐衝撃性、衝撃荷重等の基準を設定し、落下試験で確認。胴ベルト型については、製品全体の落下試験で確認。 |
|
安衛則等改正の施行日及び経過措置 |
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1 安衛則等の施行日及び経過措置 |
● |
安衛則等は、平成31年2月1日から施行する。 |
● |
経過措置 |
改正後の「墜落による危険のおそれに応じた性能を有する墜落制止用器具」を労働者に使用させることを事業者に義務付けることを内容とする規定等の適用については、平成31年8月1日前に製造された安全帯又は同日において現に製造している安全帯は、平成34年1月1日までの間、「墜落による危険のおそれに応じた性能を有する墜落制止用器具」とみなす。 |
2 新規格の施行日及び経過措置(参考) |
● |
新規格は、平成31年2月1日から適用する。 |
● |
経過措置 |
① |
平成31年2月1日において、現に製造している安全帯又は現に存する安全帯の規格については、平成34年1月1日までの間は、なお従前の例によることとする。 |
② |
①の安全帯以外の安全帯で、平成31年8月1日前に製造された安全帯又は同日において現に製造している安全帯の規格については、平成34年1月1日までの間は、なお従前の例によることができることとする。 |
③ |
①及び②は、①及び②の安全帯又はその部分がこの告示による改正後の墜落制止用器具の規格に適合するに至った後における当該墜落制止用器具又はその部分については、適用しない。 |
3 経過措置(まとめ) |
(墜落による危険の防止) |
● |
新規格に適合する墜落制止用器具の製造、譲渡、貸与又は使用:平成31年2月1日以降可能。
(注)新規格及び旧規格の両方に適合する製品は、平成31年2月1日前から製造、譲渡、貸与又は使用が可能である。 |
● |
新規格に適合しない安全帯の製造:平成31年8月1日まで可能。 |
● |
新規格に適合しない安全帯の譲渡、貸与又は使用:平成34年1月1日まで可能。 |
(特別教育) |
● |
平成31年2月1日より施行する。 |
● |
安衛則の経過措置により、旧規格のみに適合するハーネス型安全帯を用いて特別教育の対象作業を実施する場合であっても、平成31年2月1日以降は、特別教育を実施が義務付けられる。 |
● |
安衛則第37条の規定により、特別教育の科目の全部又は一部について十分な知識及び技能を有していると認められる労働者については、当該科目の教育を省略することができる。具体的には、施行日に現にハーネス型安全帯を使用している者、足場の組み立て等作業に係る特別教育やロープ高所作業に係る特別教育を受けた労働者等については、科目の全部又は一部の省略が可能となる。これらの場合に省略可能な科目については、通達で示す予定である。 |
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(注) |
なお、本稿は厚生労働省のホームページの「報道・広報」の平成30年5月23日付け報道発表資料に全文が載っていますが、次のアドレスでご確認できます。 |
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厚生労働省のホームページ: http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000207721.html |
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(編集事務局) |