荷役・運搬機械安全対策について
最近における労働災害は,全体として減少の傾向をたどっているが,その中においてコンベヤ,フォークリフト,シュベルローダ,移動式クレーン,ダンプトラックその他の荷役運搬機械(以下「荷役・運搬機械」という.)によもものは,依然として減少をみていない状況にある.このような現状にかんがみ,これら荷役・運搬機械を使用する作業における安全確保について,この際総合的な対策を推進する必要がある.
ついては,荷役・運搬機械を構内で使用する事業場に対する監督指導にあたっては,法令に定めるもののほか,当面下記の事項に留意のうえ,これらの機械による労働災害の防止に万全を期せられたい.
記
第1 共通事項
1 作業指揮系統の確立
荷役・運搬機械を使用する作業は,従事労働者が他の作業の労働者と混在した状態で行われるものが多く,その混在作業による災害発生の危険性が高い.
このため,荷役・運搬機械による各種の作業を統括的に管理する作業責任者を指名し,作業相互間の連絡調整その他必要な指揮を行わせるとともに,荷役・運搬機械を使用する作業の系統ごとに,作業指揮者を定め,その者に作業の安全を確保させること.
2 荷役・運搬機械の点検整備
荷役・運搬機械については,次に掲げるところにより,自主点検を励行させ,異常状態の早期発見と,後記第2の個別事項の構造要件の整備に努めさせること.
(1) 後記第2の個別事項の点検事項について自主点検基準を定め,これにより作業開始前及び定期に点検を行わせること.この場合,点検は,十分な能力を有するものを指名し,その者に行わせること.
(2) 自主点検の結果,異常を認めた場合は,直ちに補修又は一時使用中止等の必要な措置を講じさせること.
(3) 定期自主点険についての結果及び補修措置の状況については,これを記録させ,3年間程度保存させること.
3 安全作業の確保
荷役・運搬機械を使用する作業における災害は,作業実施計画の不備,作業方法の不良,運転者の未熟等によることが少なくないことにかんがみ,次の措置を講じさせ,安全作業を確保させること.
(1) 作業実施計画及び作業標準の作成と周知徹底
イ 荷役・運搬機械の設置又は使用をする場所の広さ,地形,地盤等の状態,運行経路,構内制限度速,制限荷重等のほか,作業者の配置,他の機械設晴の設置・使用状態等と関連する安全上の留意事項等を配慮した作業実施計画を作成させ,これを作業指揮者及び関係労働者に周知させること.
ロ 荷役・運搬機械を使用する作業ごとに作業標準を作成させ,その内容を関係労働者に周知徹底させること.
(2) 過負荷の禁止及び主たる用途以外の使用の制限
イ 荷役・運搬機械の構造上等から定められている能力を超えて荷をかけて,当該機械を使用させないこと.
ロ 荷役・運搬機械ごとに定められている主たる用途以外の用途に使用させないこと.ただし,作業指揮者の直接指揮のもとで使用され,かつ,関係労働者の安全が確保される場合は,この限りでない.
(3) 構内制限速度の遵守
自走式の荷役・運搬機械を使用する作業を行うときは,構内制限速度を定め,これを遵守させること.
(4) 転倒,転落の防止
自走式の荷役・運搬機械を使用する作業を行うときは,機体の転倒又は労働者若しくは荷の転落による危険を防止するため,作業場所及び運行経路について,路肩の崩壊,地盤の不同沈下及び軟弱化の防止,必要な幅員の保守,誘導者の配置等の措置を講じさせること.
(5) 乗車席以外への乗車禁止
自走式の荷役・運搬機械を使用する作業を行うときは,走行中及び作業中に乗車席以外の場所に労働者を乗車させないこと.ただし,転落を防止するための措置を講じた場合は,この限りでない.
(6) 荷崩れの防止等
自走式の荷役・運搬機械に荷を積載する場合には荷崩れ防止の措置を講じさせるとともに,運転の妨げとならないように積載させること.
(7) 危険箇所への立入禁止
走行中若しくは作業中の荷役・運搬機械又はそれらの荷に接触することにより危険が生ずるおそれのある箇所に労働者を立ち入らせないこと.ただし,誘導者を配置し,その者に荷役・運搬機械を誘導させるときは,この限りでないこと.
(8) 逸走の防止
自走式の荷役・運搬機械の運転者が,運転位置を離れる場合は,その原動機を止め,始動用のキーを抜き,かつ,ブレーキをかける等逸走を防止するための措置を講じさせること.この場合,ショベルローダ等にあっては,作業装置を地上におろせること.
(9) 保護具の着用
関係労働者に,保護帽,安全靴等の保護具を着用させること.
第2 個別事項
1~3 略
4 移動式クレーン
(1) 構造要件
イ かじ取装置及び走行装置は,安全な走行を確保できるものとさせること,
ロ 走行を制動及び停止の状態を保持するため有効な制動装置を備えさせること.
ハ 運転者席は,振動等で運転者が容易に転落しない構造のものとさせること.
ニ 運転者席は,運転に必要な視野があり,かつ,その前面に使用するガラスは,透明でひずみのない安全ガラスとさせること.
ホ 前照度を備えさせること.但し,作業を安全に行うため,必要な照度が保持されている場所において使用する移動式クレーンについては,この限りでないこと.
へ 方向指示器を備えさせること.
ト 警報装置を備えさせること.
チ 尾燈,制動燈及び後退燈を備えさせること.
り 後写鏡及び当該移動式クレーンの直前にある障害物を確認できる鏡を備えさせること.
ヌ 速度計を備えさせること.
(2)点検事項
イ 作業開始前に,次の事項について点検を行わせること.
(イ)かじ取装置の機能(ロ)制動装置の機能
(ハ)走行装置の機能 (ニ)方向指示器の機能
(ホ)警報装置の段能 (ヘ)前照燈,尾燈,制動燈及び後退燈の機能
口 一月を超えない期間ごとに一回,定期にイの(イ)~(ヘ)に掲げるものの異常の有無について点検を行わせること.
(3) 作業方法
イ 傾斜地又は軟弱な地盤の場所では,十分な広さ及び強度を有する敷坂を用いて水平な状態にして移動式クレーンを使用させること.この場合,アウトリガを確実にセットして使用させること.
ロ 二台の移動式クレーンを使用して共づりをすることは,禁止させること.ただし,止むを得ずこれを行う必要がある場合で,作業指揮者の直接指揮のもとに行わせるときは,この限りでない.
ハ 横引き,斜めづりはさせないこと.
ニ 旋回は,低速で行わせること.
ホ 強風のときは,作業を中止させること.
へ 荷をつって走行することは,原則として禁止させること.
ト シブを伸ばした状態での走行は,旋回装置等を確実にロックした後,低速で行わせること.
チ 荷役作業中は駐車中は,必ず駐車用ブレーキをかけさせること.
り 走行中は,急激にハンドルをきる等乱暴な運転をさせないこと.
5 略
6 略
第3 その他の留意事項
1 リース業者から荷役・運搬機械の貸与を受けた場合で,その操作をリース業著の労働者に行わせるときは,移動式クレーン以外のものであっても,労働安全衛生規則第667条を準じた措置を講ずるよう指導すること.
2 構造要件に係る改善指導にあたっては,でき得る限り速やかに措置させることは望ましいが,作業の実態等に応じて必要のある場合は,計画をたて段階的に改善させること.
3 災害の発生状況,監督指導の結果等に基づき,必要に応じ業種別,地域別等に荷役・運搬機械の安全対策について集団指導を行うこと.
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