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ペンダントスイッチ操作式クレーンの安全運転心得
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I.はじめに
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susume02_05_01.jpgペンダントスイッチ操作式クレーンはトロリ又はガーダからつり下げられたペンダントスイッチにより床上から操作されるクレーンをいい,ペンダントスイッチがトロリからつり下げられるタイプを「床上操作式クレーン」,ガーダからつり下げられるタイプを「床上運転式クレーン」という.
ペンダントスイッチ操作式クレーンは(1)押しボタンスイッチを押すだけで比較的簡単に運転ができる,(2)床上で作業場の状況を確認しながら運転ができるので,位置決めなどの微調整がしやすい(3)玉掛け者の近くで運転ができるので,玉掛け状況が確認でき,相互の合図連絡も徹底できる(4)クレーンを運転する必要がないときは他の作業に従事することができる,等の特徴を有しているのであらゆる分野で数多く使用されている.その反面(1)手軽に運転できる,(2)運転者がクレーン運転と玉掛け作業を兼務する場合がある,(3)運転者は,運転以外の本来の業務に従事しながら補助的な業務としてクレーンの運転・玉掛作業に従事している,(4)管理責任者が不明確な場合が多く,安全・保守管理に手落ちが生じやすい等から災害に至るケースも多い.

今回の安全運転心得は「ペンダントスイッチ操作式クレーンの安全に関する指針」のJCA規格(案)(クレーン誌平成13年12月号に掲載)の内容も盛り込み,管理,運転,保守についての基本的な順守事項と,より安全を確保するための推奨事項を掲載しました.

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II.管理
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spacer.gif 1.ペンダントスイッチ操作式クレーンの運転資格
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(1) 床上運転式クレーンの運転資格
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susume02_05_02.jpgつり上げ荷重が5トン以上の,床上で運転し,かつ当該運転をする者がクレーンの走行とともに移動する方式のクレーンにあっては,クレーン運転士免許を受けた者または床上運転式クレーン限定免許を受けた者.

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(2) 床上操作式クレーンの運転資格
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susume02_05_03.jpgつり上げ荷重が5トン以上の,床上で運転し,かつ当該運転をする者が荷の移動とともに移動する方式のクレーンにあっては,クレーン運転士免許を受けた者または床上運転式クレーン限定免許を受けた者または床上操作式クレーン運転技能講習を修了した者.

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(3) つり上げ荷重が5トン未満のクレーンの運転資格
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つり上げ荷重が5トン未満のクレーンにあっては,(1),(2)の者またはクレーンの運転の業務に係る特別の教育を修了した者.

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2. 玉掛けの業務の資格 
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susume02_05_04.jpgペンダントスイッチ操作式クレーンではクレーンの運転のほかに玉掛作業を併せて行うことが多く,したがって玉掛作業を行うには次の資格を有する者でなければならない.
(1) spacer.gif つり上げ荷重が1トン以上のクレーンの玉掛業務にあっては,玉掛技能講習を修了した者.
(2)   つり上げ荷重が1トン未満のクレーンの玉掛業務にあっては,玉掛けの業務に係る特別の教育を修了した者.
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III. 運転
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spacer.gif 1. 作業開始前の措置 
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(1) 作業開始前の点検を実施すること,又は実施されたことを確認すること.
(2)   点検又は補修中でないことを確認すること.
spacer.gif 2. 運転時の留意事項  
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(1) クレーンの定格荷重を超えた荷をつらないこと.
(2)   つり荷を他の作業者の頭上を通過させないこと.

(3)

  つり荷の下で運転操作をしないこと.
(4)   つり荷がよく見える位置で運転し,周囲の安全を確認すること.
(5)   つり荷やワイヤロープ等を手で押さえながら操作しないこと.
(6)   押しボタンの表示とクレーンの作動方向の表示とを確認して運転すること.
(7)   リフチングマグネット又は真空吸着機を用いてつり荷を運搬する場合,つり荷の高さはできる限り低くすること.
(8)   つり荷の反転作業を行う場合,運転者や玉掛作業者等のいる方向には反転しないこと.
(9)   荷をつったままで運転位置を離れてはならない.
(10)   斜めに引張った状態でペンダントスイッチを手から離さないこと.
(11)   異常又は故障を発見した場合は取扱い責任者に連絡し,指示を受けること.
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spacer.gif 3. 取扱い責任者の選任
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susume02_05_08.jpgペンダントスイッチ操作式クレーンの運転の業務について必要な資格を有する者の中から,クレーンごとに取扱い責任者を選任し,その者の氏名等を見やすい箇所に表示するとともに,次の事項を行わせること.
(1) 作業開始前点検の実施をチェックリスト等により確認すること.
(2)   異常等の報告を受けた場合は,直ちに,使用禁止,補修その他の必要な措置を講じること.
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spacer.gif 4. 作業環境の維持  
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(1) 作業に必要な作業空間及び通路を確保するとともに,つまずき,滑り,転倒等の危険がない状態を維持すること.
(2)   運転者が安全に運転できる視界を確保すること.

(3)

  クレーンの点検または補修を行う場合に,作業者が感電,墜落のおそれがなく,容易に,かつ,安全な作業ができる状態を確保すること.
 
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spacer.gif 5. 作業終了時の措置  
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(1) 玉掛用具は取り外し,フック等のつり具は他の作業や通行等に支障がない高さまで巻上げておくこと.
(2)   クレーンは所定の位置に停止させ,電源スイッチは切っておくこと.

(3)

  運転中に気がかりになったことがあれば,取扱い責任者に報告すること.
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IV. 保守
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spacer.gif 1. 定期自主検査 
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spacer.gif ペンダントスイッチ操作式クレーンを常に正常な状態に保つためには,作業開始前の点検及び1月以内ごとに1回,1年ごとに1回の定期自主検査を行い,異常を認めたときには,直ちに補修することが大切です.
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spacer.gif 2. 補修等
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spacer.gif 補修にあたっては,予め,クレーン等安全規則に基づく変更届の必要の有無及び補修方法について専門家と協議すること.
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spacer.gif 3. 検査及び補修等実施時の留意事項
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(1) susume02_05_14.jpg検査及び補修等を行うときは,それぞれ「検査責任者」,「補修責任者」を選任し,関係者と手順及び内容等について十分な打合せを実施させること.
(2) 検査及び補修時は「検査中」等の垂幕をクレーンガーダ等に表示し,他作業者に周知させること.また,電源スイッチは切り,検査中である旨の表示又は監視人をおくこと.

(3)

susume02_05_13.jpg作業者は服装を整え,安全帯,保護帽,手袋等の保護具を着用すること.
(4) 同一ランウェイ上に2台以上のクレーンが設置されている場合は,他のクレーンが接近できないように仮ストッパーを設けるなどの衝突防止措置を実施すること.
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V. おわりに
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冒頭にも述べましたが,ペンダントスイッチ操作式クレーンは手軽に運転できる反面,ちょっとした不注意が災害につながる可能性が高い機械です.
クレーン等による災害撲滅のために,今回掲載した「安全運転心得」が読者の皆様のお役に立てれば幸いです.

(新日本製鐵(株) 宮田秀人)

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