熱中症とは,高温・高湿の環境下で体温調節や循環機能などの働きに障害がでる病気の総称で,症状により図のように分類されています.熱中症は,軽症と思われたものが急速に重症化することもあり,時には死にいたる怖い病気です.特に直射日光にさらされる屋外作業場所では多く発生しているので注意が必要です.
<水分の補給の方法>
「のどが乾いたな」と思った時はすでに水分不足になっています.マラソンレースの水分補給でもわかるように早め早め,そして計画的に補給することが大切です.
・作業前に200~300mlを飲む.
・作業開始後によく冷えた0.1%の食塩水または塩分を含んだスポーツドリンク,150~200ml(コップ1杯程度)を15分おきに飲む.
注:食事の前に大量に水分を摂ると食欲を低下させ, 胃液が薄くなって消化不良を起こします.これは夏ばての原因となりますので,少量の水分をこまめにとるようにしましょう.
予 防
① 暑熱環境に注意する
暑熱環境は,気温,湿度,風速,輻射熱(光の照射による熱)が複雑に関係します.熱中症予防には湿度,輻射熱が加味されているWBGT(Wet Bulb Globe Temperature=湿球黒球温度)を指標にしてください.WBGT とは下式で計算され,熱中症はWBGT が28℃以上になると発生が増えます.
屋外:WBGT=0.7×湿球温度+0.2黒球温度+ 0.1×乾球温度
屋内:WBGT=0.7×湿球温度+0.3黒球温度
② 適切な水分摂取を
人は暑熱の環境で体温を上げないために,汗を出し皮膚で蒸発させ熱をうばうことで身体を冷やします.熱中症予防には,まず,水分の適切な摂取がとても重要となります.
③ 作業現場の改善(屋外作業の場合)
・作業者に直射日光があたらないようにする.
・つばの広い帽子をかぶる,ヘルメットの場合はタオルなどを利用して後頭部に直射日光があたらないようにする.
・地面からの輻射熱を抑えるため,こまめに散水を行う.
・休憩室に冷房,冷水機,冷蔵庫または自動販売機を設置する.
・作業現場近くに日陰となる休憩場所をつくり,クーラーボックスに冷水やスポーツドリンクを用意しておく.
・暑い日は多めに休憩をとる.
④ 体調に注意
熱中症の発生は当日の体調も影響しますので,体の場合調が悪いときは特に注意しましょう.また,管理監督者は作業前の体調チェックを行うようにしましょう.
・よく眠れたか?
・朝食をしっかり食べたか(食べられたか)?
・夜更かしはしていないか?
・お酒を飲みすぎていないか?(飲みすぎは脱水症状を起こし熱中症を起こしやすくなる)
⑤ その他
・熱中症は,作業開始から3日目までに発生しているのがほとんどで,特に初日に多発しています.関係者は作業開始前からの対策が大切です.
・一人で作業をしていて熱中症の発見が遅れる場合があります.管理監督者はこまめに職場巡視を行い熱中症の症状が出ている作業者がいないかチェックする.また,作業者同士,声を掛け合うようにしましょう.
・夏休みで旅行やレジャーに出かける方も多いことでしょう.普段,冷房の効いた部屋にいる人が急に炎天下に出ると暑さへの対応が出来ていないため,熱中症を起こしやすくなります.屋外で長時間過ごす時は,帽子をかぶり,水分摂取を忘れないようにしましょう.
人は暑いと汗をかいて熱を下げ,寒いと筋肉の運動で熱をつくりだして体温を調整しています.しかし,近年のエアコンの普及により,子どものころから快適すぎる環境で育ち,また,運動習慣がなく汗をかく機会も少ないために,体温調節が上手く出来ない,という人が増えています.暑い時は外へ出てきちんと汗をかき,人が本来持っている体温調節機能を高め,暑さに負けない抵抗力を身に付けておくことが,もっとも重要な夏場の健康対策なのです.
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