クレーンの設置計画を進めていく中で,基礎部分の計画はクレーンの転倒,倒壊を防止するために最も重要な部分といえる.特にクレーンの設置方式が建物の規模,構造などの作業所の固有条件により決定されるため,その都度異なった設置計画,検討を行わなければならない.図6にクレーンの主な基礎形式とその特長について説明する.
クレーンの基礎を計画する際には,以下の点に留意する.
① |
最大基礎荷重に十分耐え,かつ施工性・経済性を考慮して設計する.クレーンの荷重を受ける建物の構造部分については必要に応じて間柱,ブレ
ースなどの補強を行う. |
② |
工程の進捗に伴いコンクリート重量など建物に作用する荷重条件が変化したり,掘削により地中にあった支持杭の座屈条件などが変化する場合がある.各施工段階における適切な補強を盛り込むか,あるいは最も不利な条件で各種検討を行い計画する. |
③ |
実際にクレーンが設置される建物構造体は,スリーブ孔などにより大きく断面が欠損しているためタワークレーンからの集中荷重に耐えられなかったり,各種ブラケットなど先付け部材がクレーン基礎ボルトに干渉して適切に設置できない場合などがある.最終の鉄骨製作図,く体施工図などを確認しておくことが必要である. |
④ |
クレーンをコンクリート構造体上に設置する場合は,実際に設置される時点のコンクリート養生期間に応じたコンクリートの発現強度により構造計算を行う.特に鉄筋鉄骨コンクリート造(SRC 造)でフロアクライミングを計画する場合は,養生期間が十分確保できない場合がある.このような時はコンクリートの強度に期待しない鉄骨梁のみの断面性能で検討を行うとよい. |
⑤ |
杭基礎の場合,支持杭(通常はH 鋼杭)に作用する圧縮力,引抜力に対し,周辺改良部分や地下地盤との付着力などさまざまな視点から検討する必要がある(図7).特に地下地盤が軟弱で十分な引抜耐力が期待できない場合や,地下水の流れが大きく改良体の形成が困難な場合は,場所打ち杭による支持杭施工や建物構造体からの補強など十分な対策を講じる. |