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タワークレーン設置上の留意点
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1.はじめに
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 建築工事用のタワークレーン(以下クレーン)は,設置される作業所からの要求機能や与条件が異なるため,その都度最適な設置,クライミング,解体計画を立案しなければならない.クレーン計画の良し悪しは,施工能率やコストだけでなく,施工中における工事の安全性やクレーンの安定性にも大きな影響を与える.このためクレーン設置に関わる事項を事前に十分調査,検討し,無理のない適正な計画を行うことが重要である.

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2.クレーン設置計画
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 クレーンの設置計画にあたっての検討事項,フローを,右図に示す.また,検討にあたっての留意事項を以下にまとめる.

揚重物の質量,取り込み・取付け位置とクレーンの吊り上げ能力等を考慮し,無理のない適切な機種を選定する.特に近年多用されている自動玉掛け外し機や特殊な吊りこみ治具を使用する場合は,これらの質量も必ず加味する.(図2)
クレーンの機種により最大揚程が定められている.高層建物においては必要とされる揚程がこれを超えていないことを確認しておく.(特に,タワークレーン解体用小型クレーンの場合)
クレーンの各部が建物に干渉しないよう,また, 旋回時に旋回体およびジブが敷地外に出ないように計画する.特にクレーン解体時に当該クレーンを下方にクライミングダウンを行う場合は,建物だけでなく周辺足場などの仮設物などとのクリアランスについても十分確保されていることを確認する.
ブーム先端高さが60m 以上となる場合は,航空法の規定に基づき必要な届出を行う.また,航空機の進入面等に干渉する場合は特別に規制されている場合があるので,航空局など関連省庁に事前に確認する.(図4)
高層建物においては,建物上空にマイクロウェブが通過している場合があるのでクレーンのジブ等が干渉しないか確認する.必要に応じて適正なクレーンの形式,設置方法,建物の施工方法などの計画に反映させる.(図4)
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3.クレーン基礎の計画
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 クレーンの設置計画を進めていく中で,基礎部分の計画はクレーンの転倒,倒壊を防止するために最も重要な部分といえる.特にクレーンの設置方式が建物の規模,構造などの作業所の固有条件により決定されるため,その都度異なった設置計画,検討を行わなければならない.図6にクレーンの主な基礎形式とその特長について説明する.
クレーンの基礎を計画する際には,以下の点に留意する.

最大基礎荷重に十分耐え,かつ施工性・経済性を考慮して設計する.クレーンの荷重を受ける建物の構造部分については必要に応じて間柱,ブレ
ースなどの補強を行う.
工程の進捗に伴いコンクリート重量など建物に作用する荷重条件が変化したり,掘削により地中にあった支持杭の座屈条件などが変化する場合がある.各施工段階における適切な補強を盛り込むか,あるいは最も不利な条件で各種検討を行い計画する.
実際にクレーンが設置される建物構造体は,スリーブ孔などにより大きく断面が欠損しているためタワークレーンからの集中荷重に耐えられなかったり,各種ブラケットなど先付け部材がクレーン基礎ボルトに干渉して適切に設置できない場合などがある.最終の鉄骨製作図,く体施工図などを確認しておくことが必要である.
クレーンをコンクリート構造体上に設置する場合は,実際に設置される時点のコンクリート養生期間に応じたコンクリートの発現強度により構造計算を行う.特に鉄筋鉄骨コンクリート造(SRC 造)でフロアクライミングを計画する場合は,養生期間が十分確保できない場合がある.このような時はコンクリートの強度に期待しない鉄骨梁のみの断面性能で検討を行うとよい.
杭基礎の場合,支持杭(通常はH 鋼杭)に作用する圧縮力,引抜力に対し,周辺改良部分や地下地盤との付着力などさまざまな視点から検討する必要がある(図7).特に地下地盤が軟弱で十分な引抜耐力が期待できない場合や,地下水の流れが大きく改良体の形成が困難な場合は,場所打ち杭による支持杭施工や建物構造体からの補強など十分な対策を講じる.

建物内部設置 A. 鉄骨梁上に設置 B. RC(SRC)梁上に設置
建物内の本設鉄骨梁上に設置
必要に応じて梁断面性能アップ,間柱・ブレースなどの補強を実施
フロアクライミング時には,昇降部分の反力荷重も検討
建物内のRC 梁上に設置
必要に応じて梁断面性能アップ,仮設RC 梁の設置
1F の場合,資材トラック,生コン車等の上載荷重も考慮
建物外部設置 C. 仮設構台上に設置 D. 仮設独立(直接)基礎上に設置
地中に打ち込まれたH 鋼杭などの支持杭上に仮設構台を構築し,設置
周辺固化部分の発現強度確認
掘削工事の進捗に伴い,水平材,ブレースを追加
地下く体(柱,壁)との干渉を検討
支持杭撤去時の地下水対策検討
独立したコンクリート基礎を構築
基礎下面の地盤支持強度確認.必要に応じて,地盤改良実施
タワークレーン解体後の基礎の処置についても考慮.残置する場合は,外構工事,設備工事との干渉を検討
   
図6 タワークレーンの主な基礎形式と特長
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4.クレーン解体計画
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 レーンの組立て設置時は比較的広いスペースで作業できることが多いが,解体時は他の作業との干渉や限られたスペースなど作業条件が悪い場合が一般的である.このため解体機の能力,設置位置,解体材のストック場所の確保など,詳細かつ見落としのないように検討しなければならない.図8にタワークレーンの主な解体方法について説明する.

解体用クレーンは,解体部材重量,作業半径 (解体吊り位置,荷降ろし場所),揚程等を考慮して決定する.解体時は,はめ込まれた部材が引き上げ時にせったり,部材切り離し時にバランスが崩れて揺れる場合があるので,十分余裕をみて計画する.
ジブなど長尺物については,振り回し時の荷の回転を考慮して荷降ろし経路,仮置き場所を計画する.外壁からの離れが十分確保できない場合は, ガイドワイヤの併用,外壁材の養生などを検討する.
解体時に本体を建物に沿ってクライミングダウンさせる場合は,途中から旋回ができずマストの荷降ろし位置が限定されるので積込み経路などに注意する.

解体方法 a. 建物最上階に小型クレーンを設置して解体 b. 大型移動式クレーンにて地上より解体 c. 本体をクライミングダウンして解体
概略図
特徴
解体用クレーンをその後の揚重作業に使用できる
屋上仕上げ,設備との干渉の検討必要
高層建物では,部材荷降ろしガイドワイヤなど必要
   
解体工期が比較的短い
大型移動式クレーンの設置スペース,荷降ろし場所の確保,他工事との調整が必要
高層ビルの場合,解体用移動式クレーンの揚程が厳しい
解体用重機の小型化が図れる
タワークレーン外部設置で敷地に余裕のある場合に可能
クライミングダウン時の建物との干渉検討必要
   
図8 タワークレーンの主な解体方法
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5.クレーン設置,解体作業時の事前計画
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 (1) 組織表,作業工程表の作成
クレーン設置・解体作業は通常複数の業種の作業員や会社が関係するので,組織表を作成しクレーン作業全般にわたる指示命令系統,構成会社,緊急時の連絡先等を明確にしておく.また,クレーン作業の流れ・段取り,他の作業との関連などを把握するために工程表を作成する.

 (2)作業標準・手順書の作成
全てのクレーン関連作業についてメーカーの手順書・注意事項などを基に,作業所の周辺状況などを勘案し,また,次の事項に留意し作業標準・手順書等を作成する.これらは作業を円滑,および安全に進めるために重要な事項であるので,見落としのないように注意する.また,作業所固有の制約条件などは十分な事前検討を行う.
動線の確保(搬入道路幅員と車両待機場所,
車両誘導員(監視員)の配置
部材仮置きおよび地組スペースの確保
立入禁止区域の設定
合図の方法(手,旗,笛,無線,有線)
有資格者の選任(玉掛,クレーン運転者(以下「オペレータという」など)
近接建物や架空電線による作業範囲の制約
資材搬出入車両積載図(荷姿図,玉掛方法)
部品・部材重量表
使用する玉掛け用ワイヤロープ,つりチェーン等の玉掛用具の選定連絡方法)
使用仮設機材,工具類(落下防止措置など)

 (3)安全管理計画
安全管理計画は,作業にあたっての安全留意事項だけでなく次に示すような緊急時の対応についても定め,明確にしておく.
使用機械・器具点検要領(クレーンの各種点検・検査,玉掛用具の点検要領の確認)
強風時における作業中止の判断基準,確認・伝達方法(風向・風速計等の設置)
予測災害対策表の作成(作業内容と予想される災害,処置・対策)
緊急連絡体制表の作成(施主,設計事務所,社内連絡先,協力会社,作業所内の連絡体制)

 (4)使用機材・機械等の仕様・参考資料
使用クレーンの定格荷重表(定格荷重と旋回半径の確認)
クレーン支持部(基礎(地盤),アウトリガーなど)の反力値,計算書(クレーンの反力を受ける地盤,建物く体,レール支持部など)
玉掛用具の選定(種類,長さ,使用個所)
関係法令・申請手続き書類の準備(設置届, 落成検査申請書)
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6.おわりに
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 本稿は主に設置計画時における留意点についてまとめたが,これらの事項を実際の施工時に確実に反映させること,またタワークレーン設置に係わる関係者に十分周知させることが肝要である.タワークレーン設置時の安全な計画,施工の一助になれば幸いである.

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