(1) 種類
一般作業用保護帽の種類は,厚生労働省の型式検定により,次の2種類(飛来・落下物用,墜落時保護用)があります(図1,図2).それぞれの保護帽には電気用を兼用するものもあります.
型式検定に合格したものには,「労・検」のラベルが貼付されています.確認をしてください.
(2) 保護帽の選び方
① 保護帽の材質による選び方
保護帽の材質は大きく分けて熱硬化性樹脂製のFRP と熱可塑性樹脂製のABS,PC,PE の4つがあり,作業環境・条件にあった種類の保護帽の選択が必要です.
保護帽を選ぶために,帽体材質別の特性について表1を参考にしてください.
表1 帽体の材質別比較
|
耐熱・
耐熱性 |
耐候性 |
耐電性 |
耐有機
溶剤性 |
備 考 |
熱
硬
化
性 |
FRP樹脂製 (ファイバーグラス・レインフォードスド・プラスチック) ポリエステル樹脂をガラス繊維で強化した樹脂 |
◎ |
◎ |
× リベット穴より通過するため |
○ |
耐候性、耐熱性には特に優れるが耐電性としては使えない |
熱
可
塑
性 |
ABS樹脂製 (アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン) |
△ |
△ |
◎ |
× |
耐電性には優れるが高熱環境での使用は不向き |
PC 樹脂製 (ポリカーボネート) |
○ |
○ |
◎ |
× |
耐候性はABSより優れている |
PE 樹脂製 (ポリエチレン) |
△ |
|
◎ |
◎ |
有機系の薬品を使用する作業に最適 |
PP 樹脂製 (ポリプロピレン) |
△ |
△ |
◎ |
◎ |
有機系の薬品を使用する作業に適す |
◎=特に優れている ○=優れている 空欄=普通 △=やや劣る ×=劣る
① 保護帽の材質による選び方
イ |
耐熱性
溶鉱炉など,輻射熱のひどい職場では,不向きな材質があります(図3) |
|
ロ |
溶剤
化学工場,溶剤,ガソリンなどを扱う可能性のあるサービス業務(例えば,荷役,運搬
会社,化学工場,石油工場構内で働くエンジ
ニアリング会社など)では溶剤に弱い材質は避けてください(図4).
|
ハ |
表面硬度
保護帽は,梁や鉄骨などにぶつかったり, 物が当たったりすることがあります.表面の柔らかい材質は傷がつきやすい欠点があります(図5). |
|
ニ |
ひさしのかぶさった保護帽
ひさしが長くかぶさった保護帽は,視界を妨げる危険があるため,作業環境に適した形のものを選ぶことが大切です(図6). |
ホ |
全周つば付き
屋外の仕事では,全周つばがあると,雨や降水が直接顔にかかることや落下物も防げます.側面からの荷重に強いが,つばが邪魔になることもあります(図7). |
へ |
溝付き
溝の付いた保護帽は,側面からの圧迫に強くなり,雨が首筋に入らないという利点がありますが,下を向くと,溝にたまった水が流れおちて手に持った書類や図面などをぬらすこともあります(図8).
|
ト |
天井のリブ
天井のリブ(肋骨状の隆起物)は,保護帽の強化に役立つ.しかし,リブの付け方によっては,落下物が落ちにくくなることもある. 落下物は,なるべく頭部からスルリと逃がしてやる方がよい(衝撃荷重を逃がす).その意味で,表面は平滑に近い方が望ましいです(図9).
|
(3) 保護帽の使用前の点検
① |
「労・検」ラベルを確かめて,作業に合った種類の保護帽を使用してください. |
② |
保護帽を「保護帽の20のチェックポイント」によって点検し,少しでも異常が認められるものは使用しないでください(図10). |
③ |
部品類に異常が認められた場合は,直ちに交換してください.(修繕をしないこと.) |
保護帽の20のチェックポイント
このイラストは、異常な状態を分かり易くするため誇張して表現してあります。 図10 保護帽の20のチェックポイント
|
(4) 保護帽の構造
|
番号 |
名 称 |
備 考 |
① |
帽体 |
頭部を覆う,硬いかく(殻)体帽体 |
② |
着装体 |
ハンモック |
保護帽を頭部に保持し,当たりを良くして衝撃を緩和する部品 |
③ |
ヘッドバンド |
④ |
環ひも |
⑤ |
衝撃吸収ライナー |
発泡スチロール製等の衝撃を吸収するための部品(梱包材料ではありません) |
⑥ |
あごひも |
保護帽が脱落するのを防止するための部品 |
図11 保護帽の構造 |
(5)保護帽の着用方法
- ヘッドバンドは,頭の大きさに合わせて調節してください.
- 保護帽は真っすぐに深くかぶり,後ろへ傾けてかぶらないようにしてください.
- あごひもの締め方,ゆるめ方,調節方法は, 各メーカーの取扱説明書にしたがって正しく行ってください.
(6)保護帽の耐用年数
日本安全帽工業会では,特に帽体の材質を確かめて,PC,PE,ABS 等の熱可塑性樹脂製の保護帽は,異常がみとめられなくても3年以内,FRP 等の熱硬化性樹脂製の保護帽は5年以内,装着体は1年以内で交換を勧めています.構成される部品に劣化,異常が認められた場合は直ちに(装着体を交換するときは,同一メーカーの同一型式の部品を使用する.)交換してください.
|