安全保護具の種類と正しい使い方(2)-安全帯-
はじめに
人は高所作業をすれば必ず転落・墜落したりするかというとそうではない.そうそう転落しないし自分は転落しないと思っているから安全帯を着用しなかったり、着用していてもフックを掛けずに作業している.法令では2m以上の高所作業については墜落等の危険を防止する処置をとることが事業者に義務付けられているが、作業者も整えられた環境において指示に従う義務があります.この指示に従わず安全帯を着用せず高所作業を行っている時に、うっかり、ぼんやり、横着、思い込み等のエラーをすれば災害に遭遇してしまう.逆に安全帯を正しく着用していれば、万が一エラーをして高所から転落したとしても重大な結果になる可能性は非常に低くなるものです.
しかしフックの掛ける位置を足元にするとロープ式の安全帯では、墜落時に腹部への衝撃荷重が約9.77kN(996kgf)にもなり、内臓破裂や骨折等の重大な損傷を受ける可能性があります.フックは極力腰より高い位置に掛けることによってその程度を緩和できます.
安全帯を使用していたため、一命をとりとめた事例としては、高所作業者のブームが構造物に引っ掛かり、外れた瞬間に外に放り出された.消火ホースで射水テストを行っていた時、ホースに振られて放り出された等があります.
安全帯の種類と正しい使い方
1.使用環境
安全帯は土木・建築工事、電気工事、また、造船所などに法律(労働安全衛生法)で定められている高さ2m以上の場所での高所作業や、これに準じる場所での作業で、墜落を防止するために使用するものです.
2.種類・特性
厚生労働省の「安全帯の規格」に適合するもので、その性能に合致しているものに「安全帯」の表示が認められています.
「産業安全研究所発行 NIIS-TR-No.37(2004)」の「安全帯構造指針」では、
表1
のように1種から3種までの3種類に定められています.
特に,今回は1種と2種安全帯について記述します.
表1
種 類
ベルトの形式
備 考
1種安全帯
胴ベルト
2種安全帯
フルハーネス
3種安全帯A
垂直面用ハーネス
窓拭き用
3種安全帯B
傾斜面用ハーネス
傾斜面用
1種安全帯
イ 1本つり専用
(ロープ/ストラップ式)
ロ 1本つり専用
(常時接続型:通称2丁掛け)
ハ 1本つり専用
(常時接続型:通称2丁掛け)
ニ U字つり専用
ホ 1本つり/U字つり兼用
(常時接続型:補助フック付)
ヘ 1本つり/U字つり兼用
2種安全帯
全身を保持するフルハーネス型は、人体保護の面から、墜落阻止時に人体にかかる衝撃力を、腰部以外の腿部、胸部等の多くの個所で受ける2種安全帯(フルハーネス)が最も有利なものです.
墜落の可能性が高い使用状態が多い場合は、身体への衝撃を和らげるのにフルハーネス型の安全帯を選定するのが望ましいです.
欧米では全身を保持するフルハーネス型を標準にするようになっていますが、日本では今後急速に普及すると思われます.
3.安全帯の取付対象物
4.フックの正しい掛け方
5.安全帯を正しく使用するためのポイント
安全帯は取扱説明書の手順に従って確実に装着していますか?
ポイント1
ベルトは正しくバックルに通っていますか?
ポイント2
墜落時の衝撃による背骨による背骨への負担を軽減させるために、D環あるいは巻取り器の位置を身体の横、あるいは斜め後にくるように装着していますか?
ポイント3
フックはD環より高い位置に取付けていますか?
ポイント4
安全帯に縫い付けてあるネームに使用開始年月日を記入し、交換時期の目安にしていますか?(ロープ/ストラップは2年、他は3年が交換の目安です)
ポイント5
ロープ/ストラップは鋭い角に触れないようにしていますか?
ポイント6
墜落による振り子状態が発生した時、構造物に衝突しない箇所にフックを取り付けていますか?
ポイント7
一度でも大きな荷重が加わった安全帯や異常のある安全帯は廃棄していますか?
(外観では判断できない強度劣化を生じている場合があります)
ポイント8
垂直・水平親綱の1スパンを利用する作業員は、必ず1人にしていますか?
ポイント9
ランヤードを使用しない時は、袋に入れるか、肩に掛けるなど適切に処理していますか?
6.安全帯点検チェックリスト
7.安全帯の廃棄基準の一例
8.保守管理
日常点検はチェックリストを参照にして、必ず実施してください.
胴ベルトのバックル縫製部に使用開始の年月を記入するように各メーカー共ネームが縫い付けてあるので、記入して使用してください.
ロープは使用開始より2年が経過すると、紫外線劣化している場合があります.1本つり専用の10mmロープなどでは、強度低下しやすいので、交換するかメーカーに相談してください.
細い八つ打ちロープは、キンクが生じにくいので需要が増えていますが、ロープの構成上繊維がほとんどロープ表面に露出しています.また、収縮が容易に起きて強度が低下しやすいので、2年以上は使用しないでください.
8.保守管理
安全帯は次のような場所に保管してください.
直射日光に当たらない所.
風通しがよく、湿気のない所.
火気、放熱体などが近くにない所.
腐食性物質と同室でない所.
塵埃の少ない所.
ねずみの入らない所.
((株)谷沢製作所 渡辺 勲)