共づり作業を行う場合は,クレーン等安全規則に規定された内容(第66条の2,第70条の3,第70条の4,第70条の5,第71条,第74条,第74条の2,第74条の3,第75条,第78条)を遵守し,かつ「玉掛け作業の安全に係るガイドライン」に基づくとともに,以下の項目については,特に検討,実施しなければならない.
3.1 移動式クレーンの能力
共づり作業に伴う移動式クレーンに加わる最大負荷は,それぞれの移動式クレーンの定格総荷重の75%以内であること.
ISO12480-1では,以下の条件が明確になっていれば通常の定格総荷重までの範囲で作業ができるとあり,明確ではない場合には定格総荷重の25%以上を低減するとある. |
① つり荷の質量が正確にわかっていること.
② つり荷の製作誤差,溶接質量誤差等が考慮された重心位置が明確であること.
③ つり具の質量が明確であること.
④ つり具に作用する力が明確で,強度が十分満足できること.
⑤ 操作特性,ブレーキセッティングの違いによる作用力を最小にすること.
⑥ ジブポイントに作用する作用力の角度,大きさをモニタリングし,最適にすること.
実際には,これらの条件を明確にすることは不可能なので,日本クレーン協会の指針ではこの内容は採用せず,作業時に予期せぬ移動式クレーンの誤作動,あるいは誤操作により負荷が増大した場合の転倒などに対する安全余裕を確保すること,また従来からも使用クレーンの能力に余裕を持たせていた点からも,作業負荷は使用するそれぞれの移動式クレーンの能力の75%以下としている.
3.2 玉掛け作業責任者の指名
「玉掛け作業の安全に係るガイドライン」の「玉掛け作業責任者」は,特に経験豊かな者1名を指名すること. |
実際の作業において,玉掛け作業責任者に課せられる役割は非常に重要であり,適切な総合判断と指示のできる経験豊かな者を指名する必要がある.
□玉掛け作業責任者が実施する事項(「玉掛け作業の安全に係るガイドライン」より)
イ |
つり荷の質量,形状及び数量が事業者から指示されたものであるかを確認するとともに,使用する玉掛用具の種類及び数量が適切であることを確認し,必要な場合は,玉掛用具の変更,交換等を行うこと. |
ロ |
クレーン等の据付状況及び運搬経路を含む作業範囲内の状況を確認し,必要な場合は,障害物を除去する等の措置を講じること. |
ハ |
玉掛けの方法が適切であることを確認し,不適切な場合は,玉掛け者に改善を指示すること. |
ニ |
つり荷の落下のおそれ等不安全な状況を認知した場合は,直ちにクレーン等の運転者に指示し,作業を中断し,つり荷を着地させる等の措置を講じること. |

3.3 長物のつり上げ
1台ではたわんでしまう長物のつり上げを,2台以上の移動式クレーンで行う場合,
①作業開始前に打ち合わせを実施し,作業手順を作業に携わる者に周知させること.
②使用する移動式クレーンは,原則として同一機種とすること.
③移動式クレーンは,原則として巻上,起伏のみの操作で作業すること. |
使用する移動式クレーンの機種の違いによる巻上,起伏等の各操作速度の違いを極力抑えるため,長物のつり上げ作業においては同一機種とすることを原則としている.また,つり上げ位置と取り付け位置をできるだけ近くし,かつ移動式クレーンを側面に配置することによって,極力円運動となる旋回操作を避け,巻上,起伏のみの操作で作業できるように計画する(図8).
3.4 長い構造物の建て起こし
長い構造物の建て起こしを,2台のクレーンで行う場合,
①構造物上部をつる移動式クレーンは,つり上げる構造物の質量を1台でつり上げる能力を有すること. |
3項で述べたように,建て起こしの最終段階では,上部をつる移動式クレーン単独で対象物をつることになるので,上部をつる移動式クレーンは対象物を1台でつれる能力が必要である.また,玉掛け用具など負荷の作用する部材についても,同様である.
3.5 能力不足による共づり
1台では能力が不足するため,2台以上の移動式クレーンでつり上げる作業の場合,
①作業計画作成時に手順書を作成し,事前に打ち合わせを実施して,
作業手順を作業に携わる者に周知させること.
②同一機種のクレーンを用いること.
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移動式クレーンの能力が不足するため,やむなく共づりを行う場合の留意事項は,4.3の長物の場合に準ずる.
4.6 その他留意事項
①共づり作業におけるオペレータへの合図は,複数の同時通話可能な無線システムを採用することが多いが,各々のオペレータへの合図は明確に区別できるようにし,誤操作を防止する.
②共づり作業の監視責任者は,共づり作業全体がよく見渡せる位置に配置する.揚重物が長大であったり,夜間工事などで確認しにくい場合は複数の監視人による相互連絡システムを採用したり,監視カメラなどを併用する.
③旋回操作を伴う共づり作業では,ジブの起伏,巻上げ下げとの併用操作となり複雑な動作となることが多い.このため,つり荷の水平度だけでなく,ジブ同士あるいはジブ先端と相手の巻き上げワイヤとの接触,ジブの下面と吊り荷との接触などにも十分注意して作業を行う. |
移動式クレーンによる共づり作業は,運転者,合図者,玉掛け者の意思の疎通が不可欠であり,各人の行動を明確にしておく必要がある.このためにもクレーン等安全規則に定められた規定を遵守するのは勿論であるが,特にこの作業では,2台以上の移動式クレーンが同じ目的の作業を実施するという点からも,各作業者が各人の役割を認識し,作業内容,手順の周知徹底を図ることが重要である.

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