クレーンには,建家内を走行している天井クレーン,屋外で資材運搬等を行っている橋形クレーン,岸壁で荷役を行っているジブクレーンやコンテナクレーンなど多くの種類があり(図2),これらのクレーンを運転するために必要な資格は,表1のように定められています.
なお,免許の名称は,以前は“クレーン運転士免許”でしたが,平成18年4月1日からデリック運転士免許と統合され,“クレーン・デリック運転士免許”という名称に変わりました.
床上から運転するということでよく質問のある無線操作式のクレーンですが,つり上げ荷重5t 以上のクレーンを無線操作で床上から運転する場合でも,クレーン・デリック運転士免許又は同免許のクレーン限定免許が必要です.
免許,技能講習及び特別教育の資格の取得方法については,後章で説明することにします.
また,玉掛けの業務を行うには,クレーンの運転の資格では行うことができず,別に玉掛けの業務に係る資格が必要となります.これについても後章で説明します.
表1 運転するクレーンと運転者の資格
つり上げ荷重
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種 類
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ク
レ
ー
ン
・
デ
リ
ッ
ク
運
転
士
免
許
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床
上
操
作
式
ク
レ
ー
ン
運
転
技
能
講
習
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ク
レ
ー
ン
の
運
転
の
特
別
教
育 |
デ
リ
ッ
ク
の
運
転
の
特
別
教
育 |
ク
レ
ー
ン
限
定
免
許
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床
上
運
転
式
ク
レ
ー
ン
限
定
免
許 |
5t 以上 |
クレーン |
○ |
○ |
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デリック |
○ |
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床上運転式クレーン(*1) |
○ |
○ |
○ |
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床上操作式クレーン(*2) |
○ |
○ |
○ |
○ |
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跨線テルハ(*3) |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
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5t 未満 |
クレーン |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
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デリック |
○ |
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○ |
(*1) |
床上で運転し,かつ,当該運転をする者がクレーンの走行とともに移動する方式のクレーン(床上操作式クレーンを除く) |
(*2) |
床上で運転し,かつ,当該運転をする者が荷の移動とともに移動する方式のクレーン |
(*3) |
鉄道において荷をつり上げ,線路を越えて使用されるテルハ |
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(1)クレーンのつり上げ荷重
クレーンの運転に必要な資格は,表1に示すようにクレーンの種類とつり上げ荷重の大きさ(5t以上か5t 未満か)によって決まりますが,つり上げ荷重とは,つり上げようとする荷の質量ではなく,そのクレーンに負荷させることができる最大の荷重(質量)のことであり,つり上げ荷重には,フックやグラブバケットなどのつり具の質量も含まれます(図3).
(2)床上運転式クレーンと床上操作式クレーン
床上運転式と床上操作式はよく似た名称であり,いずれも床上から運転しますが,運転の資格は,床上運転式は免許で床上操作式は技能講習と異なることから質問も多くあります.
天井クレーンを例にとって説明しますと,床上運転式は,ガーダーと平行にメッセンジャーワイヤなどを取り付け,これから押しボタンスイッチをつり下げたものやガーダーの一端から押しボタンスイッチをつり下げた方式のもので,この場合,運転する者はクレーンの走行とともに移動しますが,横行時には荷の移動に関係なく一定の位置で操作ができます(図4).
一方,床上操作式は,トロリやホイストから押しボタンスイッチを直接つり下げた方式のもので,クレーンの走行,横行時とも荷が移動するのと一緒に運転する者がついていかなければなりません(図5).
(3)自動運転クレーンの運転資格
自動倉庫におけるスタッカークレーンや,ごみ焼却工場の天井クレーン(図6)のように,遠隔全自動運転方式のものは,法令等によるクレーンの運転の業務には該当しません.ただし,これらのクレーンを保守・点検等のために手動運転するときは,そのクレーンに該当する資格が必要となります.
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