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新人のためのクレーン等作業の資格
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1.はじめに
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 4月は新規採用や異動等によって,職場に新しい方達が配属されるシーズンであり,クレーン等の作業を行っている職場においてもまた同様と思われます.
  クレーンや移動式クレーンは,人力で扱えない重量物や大型物を効率よく運搬する機械として,各職場において重要な役割を果たしていますが,反面,一旦操作や安全確認等を怠ると,生命にかかわる重大な事故を引き起こすことになります.このため,クレーン等の運転や玉掛け作業には,必要とする資格が定められています.
  今回は,これから新しい職場においてクレーン等の作業を始められる新人を対象に,関連する資格について説明いたします.

 


2.クレーン等の作業には資格が必要
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 クレーン等の運転や玉掛けの業務を行う者は,対象とするクレーン等の種類や大きさなどにより,それぞれの資格が必要です.資格を有していない者は,これらの業務を行うことはできません.
  図1は,クレーン及び移動式クレーンの運転並びに玉掛け作業での最近5年間の死亡災害における有資格者と無資格者の割合をグラフで示したものです.通常は有資格者によって運転や玉掛けの作業を行っていることから考えると,たまに資格を持っていない者が行ったときの災害発生の確率が非常に高いことがうかがえます.


   

 


3.クレーンの運転の資格
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 クレーンには,建家内を走行している天井クレーン,屋外で資材運搬等を行っている橋形クレーン,岸壁で荷役を行っているジブクレーンやコンテナクレーンなど多くの種類があり(図2),これらのクレーンを運転するために必要な資格は,表1のように定められています.
  なお,免許の名称は,以前は“クレーン運転士免許”でしたが,平成18年4月1日からデリック運転士免許と統合され,“クレーン・デリック運転士免許”という名称に変わりました.
  床上から運転するということでよく質問のある無線操作式のクレーンですが,つり上げ荷重5t 以上のクレーンを無線操作で床上から運転する場合でも,クレーン・デリック運転士免許又は同免許のクレーン限定免許が必要です.
  免許,技能講習及び特別教育の資格の取得方法については,後章で説明することにします.
  また,玉掛けの業務を行うには,クレーンの運転の資格では行うことができず,別に玉掛けの業務に係る資格が必要となります.これについても後章で説明します.
表1 運転するクレーンと運転者の資格
つり上げ荷重

種 類















 


























































5t 以上 クレーン        
デリック          
床上運転式クレーン(*1)      
床上操作式クレーン(*2)    
跨線テルハ(*3)  
5t 未満 クレーン  
デリック        
(*1) 床上で運転し,かつ,当該運転をする者がクレーンの走行とともに移動する方式のクレーン(床上操作式クレーンを除く)
(*2) 床上で運転し,かつ,当該運転をする者が荷の移動とともに移動する方式のクレーン
(*3) 鉄道において荷をつり上げ,線路を越えて使用されるテルハ

(1)クレーンのつり上げ荷重

 クレーンの運転に必要な資格は,表1に示すようにクレーンの種類とつり上げ荷重の大きさ(5t以上か5t 未満か)によって決まりますが,つり上げ荷重とは,つり上げようとする荷の質量ではなく,そのクレーンに負荷させることができる最大の荷重(質量)のことであり,つり上げ荷重には,フックやグラブバケットなどのつり具の質量も含まれます(図3).

 

(2)床上運転式クレーンと床上操作式クレーン

 床上運転式と床上操作式はよく似た名称であり,いずれも床上から運転しますが,運転の資格は,床上運転式は免許で床上操作式は技能講習と異なることから質問も多くあります.
  天井クレーンを例にとって説明しますと,床上運転式は,ガーダーと平行にメッセンジャーワイヤなどを取り付け,これから押しボタンスイッチをつり下げたものやガーダーの一端から押しボタンスイッチをつり下げた方式のもので,この場合,運転する者はクレーンの走行とともに移動しますが,横行時には荷の移動に関係なく一定の位置で操作ができます(図4).
  一方,床上操作式は,トロリやホイストから押しボタンスイッチを直接つり下げた方式のもので,クレーンの走行,横行時とも荷が移動するのと一緒に運転する者がついていかなければなりません(図5).

 

(3)自動運転クレーンの運転資格

 自動倉庫におけるスタッカークレーンや,ごみ焼却工場の天井クレーン(図6)のように,遠隔全自動運転方式のものは,法令等によるクレーンの運転の業務には該当しません.ただし,これらのクレーンを保守・点検等のために手動運転するときは,そのクレーンに該当する資格が必要となります.

 


4.移動式クレーンの運転の資格
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 移動式クレーンには,建設現場等で活躍しているトラッククレーン,クローラクレーン,車両積載形トラッククレーン等のほかに,浮きクレーンや鉄道クレーンなどもあります(図7).


  これらの移動式クレーンを運転するために必要な資格は,表2のように移動式クレーンのつり上げ荷重の大きさによって定められています.

表2 運転する移動式クレーンと運転者の資格
つり上げ荷重

移動式クレーン
運転士免許

小型移動式クレーン
運転技能講習
移動式クレーンの
運転の特別教育
5t 以上    
5t 以上~5t 未満  
1t 未満

(1)移動式クレーンのつり上げ荷重

 移動式クレーンのつり上げ荷重とは,アウトリガー又はクローラーを最大に張り出し,ジブ長さを最短に,ジブ傾斜角を最大(作業半径を最小)にしたときに,負荷させることができる最大の荷重(質量)のことであり,つり上げ荷重には,フックやグラブバケットなどのつり具の質量も含まれます(図8)..

 

(2)公道での走行

 移動式クレーンの移送等のため公道を走行させるときは(図9),移動式クレーンの運転資格ではなく,移動式クレーンの種類と大きさにより道路交通法で定められている普通自動車免許,大型特殊自動車免許,又は大型自動車免許等が必要となりますので注意しましょう.

 


5.デリックの運転の資格
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 デリックは,マストやブームを有し,ウインチを別置きしてワイヤロープにより操作するもので,代表的な種類としては図10のようなものがあり,また,これら以外にも使用目的等に応じた多種多様なものがありますが,最近は非常に少なくなっています.

 デリックの運転に必要な資格は,前述の“2.クレーンの運転の資格”で説明しましたように,クレーン運転士免許とデリック運転士免許が統合されクレーン・デリック運転士免許となったため,表1の中にまとめていますので参照してください.

 


6.建設用リフト及びゴンドラの運転の資格
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 建設用リフト(図11)やゴンドラ(図12)を運転する者は,それぞれについて表3に示す資格が必要です.

表3 建設用リフト及びゴンドラの運転の資格
種  類


運転者の資格

建設用リフト
(積載荷重が0.25t 以上でガイドレールの高さが10m 以上のもの)
特別教育(*1)
ゴンドラ 特別教育(*2)
(*1) 建設用リフトの運転の業務に係る特別の教育を修了した者
(*2) ゴンドラの取扱い業務に係る特別の教育を修了した者

 


7.玉掛けの業務の資格
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 荷をクレーン等のフックでつり上げるために,玉掛け用ワイヤロープやその他の玉掛け用具を使用して行う準備,フックへの荷掛け,荷外しなどの一連の作業を玉掛け作業をいいますが,この作業を行うためには,表4に示す資格が必要です.クレーンや移動式クレーン等の運転の資格を有していても玉掛けの業務はできません.

表4 玉掛けの業務に必要な資格
つり上げ荷重
必要な資格
1t 以上 技能講習(*1)
玉掛け科の訓練修了者(*2)
その他厚生労働大臣が定める者(*3)
1t 未満 特別教育(*4)
(*1) 玉掛け技能講習を修了した者
(*2) 職業能力開発促進法施行規則別表第4の訓練科の欄に掲げる玉掛け科(通信の方法によって行うものを除く)の訓練を修了した者
(*3) 職業能力開発促進法施行規則等によるクレーン等の訓練を受けた者等
(*4) 玉掛けの業務に係る特別の教育を修了した者

 上表中の“つり上げ荷重”とは,つり上げる荷の質量ではなく,使用するクレーン,移動式クレーン等のつり上げ荷重のことです(図13).

 


8.免許,技能講習及び特別教育
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 今までの説明で,資格には運転士免許,技能講習及び特別教育の3種類があることがお分かりになったと思いますが,これらの資格の取得方法について説明します.

(1)免許

  クレーン・デリック及び移動式クレーンの各運転士免許は,都道府県労働局長又は厚生労働大臣の指定する指定試験機関が行う免許試験に合格した者,あるいは厚生労働省令で定める資格を有する者に対して,その者の申請によって免許証が交付されます(図14).
  免許試験は,指定試験機関である財団法人安全衛生技術試験協会の全国7箇所に設けられている安全衛生技術センターで定期的に行われています.

(2)技能講習

  床上操作式クレーン運転,小型移動式クレーン運転及び玉掛けの各技能講習は,都道府県労働局長の登録を受けた登録教習機関が行う学科及び実技の講習です(図15).
  社団法人日本クレーン協会では,登録教習機関として各支部において,これらの技能講習を定期的に実施しています.

(3)特別教育

  特別教育は,事業者が5t 未満のクレーン及びデリックの運転,1t 未満の移動式クレーンの運転並びに1t 未満の玉掛けの業務等に労働者を就かせるときに,当該労働者に対して行うこれらの業務に関する安全のための教育です(図16).
  社団法人日本クレーン協会では,各支部において,事業者からの要請等により,これらの学科及び実技の教育を実施しています.

 


9.おわりに
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  クレーン等の作業は重量物を扱うため,間違えば重大な災害を引き起こし,自身はもちろんのこと,家族・職場の仲間・会社等への影響も大きなものとなります.資格を必要とする作業は,必ず該当する資格を取得し,安全に心掛けて作業を行いましょう.

(事業部馬場井宏至)


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