クレーン作業にあたっては,人為的ミスによる大事故の危険性がつきまとっています。
クレーンの転倒事故は,現場が狭く,アウトリガーを異張出し状態で作業中,張出し状態を忘れて旋回し転倒したケースが多く,これはまさしくオペレーターのうっかりミスによるものです。
これらのうっかりミスを防止するために次のような安全装置があります。
<旧機種またはメーカーによっては装着されていない場合もあります>
(1)アウトリガー張り出し幅自動検出装置 |
(2)旋回自動停止装置 |
(3)作業領域制限装置 |
(4)乗降遮断装置 |
(5)フリーフォールインターロック装置 |
(1) アウトリガー張出幅自動検出装置
アウトリガー張出幅検出センサを備えて張出し幅を自動的に検出すると同時に,張出し幅表示ランプも操作に伴い自動的に点灯し,オペレーターの手動セットによる誤作動を防止しています。
また,アウトリガー水平張出し後の垂直張出し忘れ防止のために,垂直操作後に始めてセット可能となります。
セットは確認ボタン操作を行うことで完了し,さらに,音声アラームにて,地盤状況,フロートの接地確認を再度促します。
(2) 旋回自動停止装置
安全装置として従来より装着している過負荷防止(停止)装置に加えて,過負荷状態時に旋回を停止させるものです。
旋回は急停止すると荷揺れによる転倒,衝突,ジブの破損の恐れから自動停止が採用されていませんでしたが,最近では各メーカーともに採用されています。
アウトリガー異張出し長さを自動的に読み取り,各旋回角に於けるクレーン能力を演算し,危険側に旋回するときは,旋回緩停止制御にて,危険位置までに旋回が自動的につり荷の揺れを最小限に抑えるようにして旋回を停止させます。
さらに,音声を付加し,オペレーターに事前に注意を促しています。
予報域:旋回停止制御開始4秒前より「旋回注意」
の音声アラーム発生。
制御域:「旋回停止します」の音声アラーム発生。
(3) 作業領域制限装置
建物の内部や狭あい地などで作業する場合に,うっかりミスによるジブ等の接触防止を未然に防止させる装置です。
ジブの起伏角度,揚程,作業半径,旋回角度の作業領域制限(各々自動停止して欲しい位置までクレーンを操作した後)をパネル上のスイッチで設定することで自動的に停止させ,事故を防止することができます。
(4) 乗降遮断装置
オペレーターが席を離れるときには,ドアー部にある乗降遮断レバーを起こさなければならない構造になっており,この動作と連動して全てのクレーン動作が停止します。 |
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(5) フリーフォールインターロック装置
ウインチ中立ブレーキモードからフリーフォールモードにするための切り替えクラッチレバーは,ブレーキペダルを踏んだ状態で,同時にレバーを押さなければフリーフォール側に切り替わらない構造になっています。 |
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(6) 過負荷防止システムの概要
過負荷防止システムは,過負荷防止装置(モーメントリミッタ)を中心に,下図のようにシステム構成されます。 |
①モーメントリミッタ |
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各検出器からの信号を基に,ジブ長さ,ジブ角度,作業半径及びアウトリガーの張出し幅を演算し表示する。 |
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各検出器からの信号を基に定格総荷重及びつり荷重を演算し表示する。 |
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負荷率から判定して予報,警報,自動停止の各出力を行う。 |
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過荷重時の危険側操作に対しては作動を停止する。 |
②角度計 |
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ジブ角度に応じた電気信号をモーメントリミッタに出力する。定格総荷重,つり荷重の演算にも用いる。 |
③長さ計 |
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ジブ長さに応じた電気信号をモーメントリミッタに出力する。定格総荷重,つり荷重の演算にも用いる。 |
④圧力検出器 |
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起伏シリンダの圧力を電気信号に変換しモーメントリミッタに出力する。つり荷重の演算に用いる。 |
⑤作業半径 |
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ジブ長さと角度からの信号を基に作業半径を計算する。
片方の信号が,ない場合は定格総荷重及びつり上げ荷重の演算ができなくなりクレーンは停止する。 |
⑥各リミットスイッチ |
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フックの巻き過ぎ時に作動し巻き過状態を防止する。 |
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レバー操作の作動(上げ下げ,伸縮,左右)検出を行う。 |
⑦旋回角度検出器 |
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旋回角度に応じた電気信号を上部コントローラに出力する。旋回自動停止の演算に用いる。 |
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当検出器に異常があると正確な旋回自動停止ができなくなる。 |
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