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可搬型ゴンドラの安全作業のポイント
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1.はじめに
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(1) ゴンドラとは労働安全衛生法で下記のとおり定義されています。
「つり足場及び昇降装置その他の装置並びにこれらに附属する物により構成され,当該つり足場の作業床が専用の昇降装置により上昇し,又は下降する設備をいう。」
  近年の建物の高層化に伴い新築工事やメンテナンス工事で益々多く使われるようになってきました。

(2) ゴンドラの種類及び型式
  ゴンドラの種類は労働安全衛生法で下表のように分類されています。

ゴンドラの分類表
種類 走行の形式 作業床の形式 アームの運動の形式
アーム固定型 軌道式
無軌道式
定置式
ケージ式
デッキ式
チェア式
伸縮
先端旋回
元旋回
アーム俯仰型
懸垂型 ――
デッキ型 ―― ―― ――
チェア型 ―― ―― ――

(3) ゴンドラの用途別区分
  ゴンドラは用途別に常設型と可搬型に区分されます。
  常設型とは,ビルの屋上等に常時設置されていて,通常窓ガラス清掃等の作業用足場として使用されるものをいいます。
  可搬型とは,ビルの新築又は補修,清掃,塗装等作業の都度,臨時に設置し,設置,解体,撤去が簡単にできる運搬可能なものをいいます。
  主な機種としてデッキ型,チェア型があります。

(4) ゴンドラの操作
  ゴンドラの操作は「ゴンドラ操作の特別教育」をうけた資格者でなければ操作してはならないと決まっていますが,可搬型ゴンドラ作業の場合,共同作業が多いので作業者全員が有資格者であることが望まれます。
  それでは実際の手順に沿って安全のポイントを述べさせていただきます。

 


2.計 画
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(1) ゴンドラ設置場所の事前調査
  ゴンドラの設置計画にあたって,ポイントとなるのは
① ケージ本体の重量と積載荷重を充分に支えることのできるつり元の確保
② つり元からケージにいたるつりワイヤロープの確実な取り付け
③ 作業員,通行人への安全確保と環境対策
の3点です。
  ゴンドラ災害の多くは,事前に作業環境を注意深く調査して,対応していれば未然に防ぐことが出来ます。
  事前調査にあたって下記の点に留意してください。
「つり元」は建物の躯体に確実に固定され,安定しているか
「つり元」となる固定物の強度は確認したか,亀裂,腐食,面ずれのあるもの強度の不明なものは避ける
建物の大きさ,形状,工事内容を考慮し,適切なゴンドラ機種を選んだか
パラペットは突りょう,フックが取付けやすい形状,材質になっているか
周囲に作業の障害になるような建造物や設備はないか
環境保全や近隣対策のために事前に養生の必要な箇所はないか
機材搬入出の経路,保管スペースなどは確保できるか
移設時や撤去作業を行う上での障害はないか
公道,私道の区別,通行量と道路状況の確認
運搬経路,車両通行制限,監視人配置の必要性
周辺の建物,駐車場,街路樹,庭木等の養生の必要性と対策
建物出入り口の安全対策
落下,飛散防止処置の必要性と対策
   
■ 固定物の面ずれはないか ■ パラペットに破損・亀裂箇所はないか
   
■ 使用してはならない固定物(フェンス,小型冷水塔の置き基礎など)
   
■ 隣接建造物の位置を確認したか ■ 監視人の配置は必要か
 
(2) 設置計画
  ここでは事前調査に基づき建物と作業内容に最も適した
① 屋上の固定方法
② ゴンドラの機種
を選定します。
屋上(つり元)の固定方法には下記のようなものがあります。つり元は事前調査により強度と安全性を確認した固定方法を採用します。なお可搬型ゴンドラは設置届を提出した際に,固定方法が決められていますので,指定以外の方法に変更する場合は事前に所轄の労働基準監督署に変更届を出し,許可を得えなくてはなりません。
作業内容と建物形状に適したゴンドラの機種を選定します。
ゴンドラにはチェア型,標準デッキ型,長尺デッキ型,狭床デッキ型などがあります。
この中から作業内容,使用現場の特性などに合わせて最適な機種を選定します。
 
(3) 許可申請と届出
  ① ゴンドラ作業面が道路上にかかる場合
公道を使用し,かつ立ち入り禁止措置をとる場合
道路使用許可申請書を所轄の警察署長に申請する。
地上・空中にかかわらず敷地以外の公道にゴンドラが出る場合は
道路占用許可申請書を所轄の役所(道路管理者)に申請する。
可搬型ゴンドラでは設置届*に記載された固定方法以外の方法で設置する場合は
ゴンドラの固定方法を変更する必要があります。
ゴンドラ変更届をそのゴンドラの設置届を提出した労働基準監督署に届け出なければなりません。
設置届:可搬型ゴンドラは多くの場合,最初にレンタル業者が届出をしており,使用者はこの届出に記載された固定方法をとる場合,設置場所を変える都度,改めて届け出る必要はありません。

 

①屋上パラペットと自在型フック
躯体部分のひとつであるパラペットに,ゴンドラを設置するために必要な強度があるか確認します。
その他,パラペットの立上がり,幅,形状等に問題がなければ,そのパラペットを固定物として自在型フックを使用し,直接つりワイヤロープを取り付けて作業床をつり下げます。
②屋上固定物と台付けワイヤロープ
パラペットに自在型フック等が付けられない場合は,ペントハウス等の強固な固定物に台付けワイヤロープを取り付けてつけ元とします。さらにワイヤロープをシャックルで緊結し,パラペット上に設置した突りょうを介してつりワイヤロープを降ろし,作業床をつり下げます。

 

   ◆その他の方法
③台車を使用してつり元とする
パラペットの強度が弱く,形状等に問題があるなどの理由で,フックや突りょうが設置できないときは台車を使用します。その場合,屋上床面の強度を確認します。
⑥後施工アンカーを利用する
つり元になる強固な固定物がない場合は,後施工アンカーを打設して固定物とすることができます。打設の方法はもとより,コンクリートの強度によってもアンカー等の強度が決まるため,事前調査と打設は専門業者に依頼する必要があります。
④反対側のパラペットにU型フックを取り付ける
突りょうづりが必要な時に,つり元に通した固定物がない場合は,突りょうを設置するパラペットと反対側のパラペットにU型フックを取り付けてつり元とします。
⑦常設ゴンドラのレールを利用する
屋上に常設ゴンドラのレールが敷設されている場合は,レールを固定物として採用することができます。
⑤丸環を複数使用してつり元とする
丸環を固定物として使用する場合は,強度と履歴を明らかにし,強度が確認できたものについては,複数(3個以上)の丸環に台付けワイヤロープを渡し掛けして取り付けます。
なお丸環の強度や履歴が不明なものについては使用させないでください。

 


3.設置作業
   
 
 さて,いよいよ設置を開始します。設置計画を確実に立てた上で,計画に従い確認をしながら作業を進めてください。
作業開始前ミーティング
作業における安全ポイントの確認
遵守事項の確認
作業手順の確認
日誌の記録
機材の現場搬入
荷おろし場所の指示
搬入経路の指示
立ち入り禁止措置
作業場所,ゴンドラを設置する場所の下方など通行人の多いところでは監視人の配置
水平親綱の設置
墜落のおそれのある場所で,安全帯をかける設備のない場合は水平親綱を設ける。
台付けワイヤロープの取り付け
設置計画に従い正しく行う。
台付けワイヤロープが建物の角などに接触する場合はゴム,布,角あて養生材を用いて保護する。
突りょう,フックの設置
突りょう,フックに取付けられた控えロープを建物側に固縛する。
設置計画に従い正しい位置に設置する。
突りょう,フックの相互の間隔はゴンドラケージつり心と等しくする。
つりワイヤロープの取り付け
台付け装置との取り付けはシャックルを用いて行う。
フックの場合はつりワイヤロープの取り付け位置に正しく取付ける。
つりワイヤロープが地上に達したことを確認する。巻過防止装置用のゴムオモリを取付ける。
キャブタイヤケーブルの取り付け(電源が上にある場合)
キャブタイヤケーブルを建物側に固縛する。
キャブタイヤケーブルを下す。
キャブタイヤケーブルが地上に達したことを確認する。
垂直親綱の取り付け
建物側に垂直親綱を緊結する。
親綱が地上に達したことを確認する。
ロリップを取付ける。
キャブタイヤケーブル・ワイヤロープの取付け
電源キャブタイヤケーブルをゴンドラケージ側操作盤に接続し,正しく動作することを確認する。
ワイヤロープをゴンドラ巻上機に挿入する。
つりワイヤロープの端末にエンドクリップ(抜けどめ)を取付ける。
ゴンドラのつり込み・試運転
屋上作業員は台付け装置,つりワイヤロープとの接続部等の確認をする。
突りょう,フックの設置状態の確認をする。
地上作業員はゴンドラ左右のワイヤロープを交互に巻き,つりワイヤロープを緊張させる。
つりワイヤロープを緊張させ,屋上側に異常の無いことを確認する。
ゴンドラ内作業員がゴンドラを地上から30cm~40cm まで上昇させ,衝撃テストを行う。
屋上作業員は異常のないことを確認し,ゴンドラ内作業員に連絡する。
試運転を行う。

 


4.ゴンドラ使用時の注意事項
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① ゴンドラにその積載荷重を超える荷重をかけて使用してはならない。
② ゴンドラの作業床で,脚立,ハシゴ等を使用してはならない。
③ ゴンドラの操作員は,ゴンドラを使用中にその操作位置を離れてはならない。
④ ゴンドラの作業を行う者は必ず安全帯,命綱,保護帽を使用しなければならない。
⑤ ゴンドラ作業箇所の下方には立ち入り禁止措置をしなければならない。
⑥ 強風,大雨,大雪などの悪天候時*には作業を行ってはならない。
⑦ 作業を行う場所には安全に作業が出来るように必要な照度を保持しなければならない。
* 悪天候:強風とは10分間の平均風速が毎秒10m以上

大雨とは一降りの降雨量が50mm 以上
大雪とは一降りの積雪量が25cm 以上

 


5.日常的な点検・管理
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(1)作業開始前点検
  ゴンドラを使用して作業を行うときは,その日の作業を開始する前に作業開始前点検を行わなければならない。
(2)定期自主検査
  ゴンドラは1月以内ごとに1回定期に自主検査を行わなければならない。但し1月を超える期間使用しないゴンドラの当該使用しない期間においてはこの限りでない。


 

 


6.おわりに
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 過去に発生したゴンドラの災害事例を分析すると,そのほとんどが機械面(ハード)ではなく運用面(ソフト)に原因があります。事前調査を注意深く行い,得た情報により確実な設置計画をたて,その計画に従って手順を守り確認をしながら作業を進め,事故の無い明るい現場を実現してください。
 

(日本ビソー(株)仮設ゴンドラ事業部本部 藤田宏)


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