従来の強風対策の見直しに際し,クレーン製造者側の認識確認と設置事業者側の現場状況について確認したところ以下のような点で安全対策の考え方で乖離が見られた。 |
2.1 クレーン設計上の現状 |
クレーン設計上の風荷重については,クレーン構造規格第9条に基づき作動時風速を16m/s,停止時(暴風時)風速を55m/sとして設計されていることは周知の通りである。
また,第11条第2項には「~構造部分の強度に関し最も不利となる場合~」と規定されているが,これは同解説にもある通り作動時における条件を示している。
このことから構造規格の中では停止時(暴風時)におけるクレーン(ジブ)の姿勢については明確な条件が示されていない。
一方,クレーン等安全規則第31条の3においては「~ジブが損壊するおそれのあるときは当該ジブの位置を固定させる等によりジブの損壊による労働者の危険を防止するための措置を講じなければならない。」と規定されており,同解説ではその措置についてジブの固定の他,「~ジブの安定が保持される位置にセットし,自由に旋回できる状態としておくこと~」と記述されている。
これらのことから停止時(暴風時)においてはジブ角度を最下限(最大半径)の状態とし,旋回をフリーとして設計されている(図1)。 |
|
|
図1 |
|
2.2 建設現場の現状 |
建設現場の状況は,敷地状況・建物規模・工法および工程等によりクレーンの設置位置,台数が決定されるが,敷地が狭い場合や複数台のクレーンを設置した場合にはジブ先端が隣地境界線の外に出たり,構造物やクレーン同士が衝突するなど必ずしも設計・製造者が認識しているような状態にクレーンの姿勢を保つことができないのが実情である。
このため事業者各社は労働者の危険を防止する措置として,ジブを出来る限り起し(45~60度以上),旋回固定(ブレーキロック)の状態でフックを構築物等に固定するなど従来から一般的に提案されている台風等の強風対策で対処している(図2)。 |
|
|
図2 |
|
また,建設現場では以下のような問題も抱えている。
|
1)クレーンの設計計画時にはつり荷の重量,作業半径,設置位置,クライミングの時期等についての検討は慎重かつ十分に行われる。
しかし台風時等の事前対策は設置条件が現場毎に異なっているために個々の条件毎に対策が必要となるが,対策としてのステー位置,控え索のアンカー位置の追加等については現場の進捗状況によって変化し,建物側のコンクリート等の強度発現とのタイミングのずれなどにより台風対策として効果の得られない場合もあるため事前計画だけでは十分とは言えない。 |
2)工事の進捗に伴い設置状況が変化するため,台風接近に伴い実施する台風対策はその時点の状況に適した対策に再検討する必要があるとともに当該地域への台風接近の可能性が高くなった時に集中する。かつ他の台風対策作業にタワークレーンが使用されるためタワークレーンに対策を施すタイミングは最終段階になることもある。
さらに該当する現場が重なった場合など技術(指導)員等が全て現場を見切れない状況も多く,的確な対策が取られない場合もある。特にタワークレーンの設置数からすると中・小型機種が多いがこの種のクレーンでは専属のオペレータがいない機種が多く十分な対策が取られない場合も多くある。 |