2.1 過巻防止装置 |
ワイヤロープ又はつりチェーンを用いるつり上げ装置への装備の義務付けが,(構)第24条に規定されています。また,巻過ぎを防止するために自動的に動力を遮断して作動を制動する機能を有すること,つり具上面と接触する恐れがあるものとの間隔が,直働式(重錘式やホイスト用)では0.05m以上,その他(ギヤ式やねじ式)では0.25m以上になるように調整できる構造であること等,具体的な制限内容と具備すべき能力などは,(構)第25条及び(安)第18条に規定されています。
巻過ぎの場合は,巻上用ワイヤロープ切断によるつり荷の落下等の重大災害に至る恐れがあるので,クラブトロリ式天井クレーンの場合は,直働式で動力回路を,その他で操作回路を遮断するなど,2系統の過巻き防止装置を設けることが多くなっています。
さらに巻下げ操作による逆巻での巻過ぎを防止するために,下限も検出対象とすることを推奨しています。 |
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2.1.1 重錘式リミットスイッチ(直働式) |
つり具が上昇して重錘を押し上げると,操作用ワイヤロープの張力がリミットスイッチ操作レバーの重錘質量より軽くなり,カム軸を回転させて内部の接点が開く構造です。
作動位置は重錘の位置(=操作用ワイヤロープの長さ)で決定するため,動作位置の誤差が少なく,巻上用ワイヤロープ交換後の再調整も不要ですが,操作用ワイヤロープも巻上用ワイヤロープと同様に経年取替えすることを推奨します。 |
図1 重錘式リミットスイッチ |
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2.1.2 ギヤ式リミットスイッチ(その他) |
巻上ドラムの回転をチェーン等を介してリミットスイッチのウォーム軸に伝達し,ウォームホイールと共に回転するカムの凹凸でマイクロスイッチの接点を開き,回路を遮断する構造です。
全揚程をカムの回転に置き換えるため,停止精度が悪く,巻上用ワイヤロープ交換後の再調整が必要になりますが,複数のカムと接点を装備可能で,上限や下限以外にも,任意の高さ検出が可能になります。 |
図2 ギヤ式リミットスイッチ |
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2.1.3 ねじ式リミットスイッチ(その他) |
巻上ドラムの回転をチェーン等を介してリミットスイッチのスクリューに伝達し,スクリューに組み込まれたトラベラーが左右に移動することにより,停止位置で固定されたレバースイッチの接点を開き,回路を遮断する構造です。
全揚程をトラベラーの移動量に置き換えるため,停止精度が悪く,巻上用ワイヤロープ交換後の再調整が必要になりますが,複数の接点を装備可能
で,上限や下限以外にも,任意の高さ検出が可能になります。 |
図3 ねじ式リミットスイッチ |
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2.1.4 ホイスト用(直働式) |
つり具が上昇してレバーを押し上げると,リンクがリミットスイッチシャフトに回転を与え,スイッチシャフトのカムがスイッチを作動する構造で,1段目は巻上用電磁接触器の操作回路を,2段目は巻上モータの主回路を遮断します。
作動位置は固定されており,巻上用ワイヤロープ交換後の再調整は不要です。上限2段は同一系統の検出方式であるため,リミットレバー・スイッチレバー・ロッド等に異常がある場合は,いずれも作動しない可能性もあり,注意が必要です。 |
図4 ホイスト用リミットスイッチ |
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2.1.5 電気チェンブロック用(直働式) |
つり具が上昇して圧縮バネの上面が本体側のガイドバネを押し上げると,リンクがカム軸に回転を与え,カムがリミットスイッチを作動する構造で,ホイスト用と同様に,1段目は巻上用電磁接触器の操作回路を,2段目は巻上モータの主回路を遮断します。なおホイスト用とは異なり,下限やキンクの検出も可能です。
作動位置は本体側のガイドバネ取付位置で決定されるため,巻上用チェーン交換後の再調整が必要です。上限2段と下限およびキンクのいずれも同一系統の検出方式であるため,リンク・カム軸・カム等に異常がある場合は,すべてが作動しない可能性もあり,注意が必要です。 |
図5 電気チェンブロック用リミットスイッチ |
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2.2 過負荷防止装置 |
ジブクレーンには,過負荷防止装置(*)の装備の義務付けが,(構)第27条に規定されています。
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:下記いずれかに該当する場合は,過負荷防止装置以外の過負荷を防止するための装置 |
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①つり上げ荷重が3 t未満 |
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②ジブの傾斜角度及び長さが一定 |
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③定格荷重が変わらない |
天井クレーンにつきましても,基発第134号「クレーン製造許可の取扱いについて」の中で,下記について指導するよう通達されており,つり荷の荷重のみを検出する装置(=過負荷防止装置以外の過負荷を防止するための装置;以下『ロードリミッタ』と記述)の装備を求められています。
① |
主巻と補巻の巻上げ又は巻下げを同時に行うことを目的とするクレーンの場合は,主巻と補巻それぞれのフックにかかる荷重の合計値が主巻の定格荷重を超えない装置及び補巻フックにかかる荷重が補巻の定格荷重を超えない装置を備えること |
② |
複数のフックを用いた「共づり」作業を目的とするクレーンの場合は,各々のフックの定格荷重を超えない装置を備えること(*) |
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*:巻上げ及び巻下げの同調装置並びにトロリの衝突防止装置も具備のこと |
ロードリミッタには,ひずみゲージやバネで検出するもの,モータへの負荷電流を検出するもの等があります。なお,バネ式には偏心軸荷重検出式や,ロープ張力検出式なども含まれます。
過荷重検出時に警報や表示灯で運転者へ注意を促す機能を備えるものや,自動的に巻上を停止する機能を備えるもの,あるいはそれら複数の機能を備えるものがあります。なお,自動停止機能を備えていない場合は,警報等による注意喚起後直ちに当該操作を中止する必要があります。 |
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2.2.1 ひずみゲージ式 |
ひずみゲージ式のロードリミッタには,引張型・圧縮型・ピン型・ワッシャ型・軸受型などがあり,クラブトロリの構造や検出対象によって使い分けられています。
いずれもひずみゲージを備えた検出部の信号を増幅器を通して演算部へ送り,設定値と検出値の比較を行って制御信号を出力するものです。目的に応じオプションを装備することにより,計量&荷重表示,和算制限などの機能を追加することが可能です。
取付状態や給油状態の確認は1ヶ月に1回以上,動作確認は1年に1回以上,設定荷重の調整は2年に1回以上,それぞれ定期的に実施されることを推奨します。なお設定荷重の調整には,校正済のウェイトを使用してください。 |
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図6 ひずみゲージ式ロードリミッタ(引張型) |
図7 ひずみゲージ式ロードリミッタ(圧縮型) |
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2.2.2 偏心軸荷重検出式(バネ式) |
荷重(W)がかけられたときに生じる偏心軸の回転力を利用してマイクロスイッチを作動する構造です。荷重(P)はモーメントのつり合いより,『P=W・e/l
』となります。
荷重をつってマイクロスイッチが作動する位置に調整ボルトを固定することにより,任意に検出荷重を設定できます。取扱上の注意点はひずみゲージ式ロードリミッタとほぼ同じで,取付状態や給油状態の確認は1ヶ月に1回以上,動作確認は1年に1回以上,設定荷重の調整は2年に1回以上,それぞれ定期的に実施されることを推奨します。 |
図8 偏心軸荷重検出式ロードリミッタ |
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2.2.3 ロープ張力検出式(バネ式) |
イコライザシーブや固定端付近のワイヤロープに直接取り付け,三点支持でロープ張力を検出してマイクロスイッチを作動する構造です。
ワイヤロープ交換時ごとに,取り外し・取り付け・調整が必要になります。取付の際は,上限リミットスイッチが作動しても干渉しない位置に取り付けるよう注意してください。 |
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図9 ロープ張力式ロードリミッタ |
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2.2.4 電流検出式 |
巻上モータの入力電流を電圧に変換し,基準となる指令値より高い場合に過荷重と判定する方式で,巻上速度が一定であるホイストでは一般的な検出方式です。
インバータホイストの場合は,巻上速度の情報等も取り込み演算した結果で判定するため,低速時等の定格速度以外においても過荷重が検出可能です。 |
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図10 電流検出式ロードリミッタ |