「墜落制止用器具の規格」改正は、ISO規格等に整合させることを原則としている。
そのため、部品毎(ハーネス本体・ショックアブソーバ・コネクター等)に性能を確認する試験を行うことになる。 |
一方、強度面においてISO規格等と整合させることによって生じる、重量増加、外観の大型化によることで作業性を損なう労働災害の誘発が懸念されることから、日本人の体格等を踏まえ、一部は従来の「安全帯の規格」に定められていた規格値も取り入れられている。 |
また、技術の進展に迅速に対応するため、「墜落制止用器具の規格」には、構造や強度(静的・動的)および試験方法の基本的な要件を定め、部品の仕様や詳細な試験方法・判定基準等については「JIS規格」に定められている規定を引用することになっている。
(構造規格の見直しは、大きな問題がない限り改正されないが、JIS規格は5年ごとの改正(見直し)が基本となっているため、JIS規格を引用することで迅速な対応できるとの考え方である。) |
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4.1 静的性能(部品の強度) |
コネクタ(フック/カラビナ)および巻取り器の強度については、前述したようにISO規格等と整合させることによって重量増加、外観形状の大型化等により労働災害の誘発のおそれがあることから従来の規格値(11.5kN以上)となっている。一方、ベルト・繊維製ロープ等の引張強度については、重量増加が少ないため(比重1.1程度)現行の規格に比べ高強度(22.0kN以上)の規格値となっている。 |
フルハーネス(本体)については、新たに足部方向の強度が規定され、静的トルソー(引張試験に用いる人体の胴体型の冶具)の頭部方向に15.0kN、足部方向に10kNの引張荷重を加えた場合に破断しないことと規定された。 |
この試験方法を図8に示す。 |
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4.2 耐衝撃性等 |
(1) フルハーネス(本体)の衝撃試験 |
フルハーネスの性能を確認するため、トルソー(落下試験に用いる人体の胴体型をした重り)にフルハーネスを装着させた状態で、テストランヤード(ワイヤー)を連結し、足部および頭部方向から1m自由落下させる。 |
この試験においてフルハーネスが破断することなく、トルソーを確実に保持しなければならない。また、落下制止後のトルソーの傾き角度も規定されている(図9フルハーネスの衝撃試験)。 |
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(2) ショックアブソーバの種別と性能 |
ショックアブソーバには、第一種、第二種の2種類が設けられ、それぞれ単体での性能が規定されている。第一種は、落下体質量(85kg、100kg)を、それぞれ1.8m自由落下距離させた時、衝撃荷重は4kN以下で、ショックアブソーバの伸びは1.2m以下の性能を有しなければならない。一方、第二種は、落下体を、4.0m自由落下距離させた時、衝撃荷重は6kN以下、ショックアブソーバの伸びは1.75m以下の性能を有しているものでなければならない。と規定されている。また、ショックアブソーバには、その種別、使用可能質量、標準的な使用条件の下で行った最大自由落下距離、および落下距離の表示が義務付けられている(図10ショックアブソーバの表示例)。 |
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■ショックアブソーバの表示内容と数値について |
①標準的な使用条件とは。 |
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耐衝撃性能(フルハーネスとランヤードを組合せた状態)の試験は、「標準な使用条件」を下にして行う。その条件とは、フルハーネスとランヤードを結合するD環の高さ(b)を1.45m、ランヤード長さを(c)を1.7m、そのランヤードのフックを連結する設備(手すり等)の高さ(a)を0.85mとした場合を目途としている。(図11作業中のイラスト参照)。ショックアブソーバに表示の数値は、上記の試験結果を示している。 |
②自由落下距離とは。 |
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作業者がフルハーネス型を着用した状態で墜落すると、当該フルハーネス型にランヤードを接続する部分の高さから、フック等の取り付け設備等の高さを減じたものにランヤードの長さを加えた距離を落下することになる。(図11のA参照)。 |
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すなわち、ランヤードを接続する部分の高さ1.45mと、フックを連結する設備の高さが0.85mであるためその差は0.6mで、この値にランヤード長さ(1.7mの場合)を加えた長さの2.3mを最大自由落下距離注―2として表示している。言い換えれば、墜落後にランヤードが緊張し、ショックアブソーバが作動するまでの距離である。 |
③落下距離とは。 |
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作業者の墜落を制止するときに生じる、ショックアブソーバの伸び、ランヤード及び、フルハーネスの伸び等に自由落下距離を加えた距離(図11のB)である。 |
④使用可能質量とは。 |
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装着する作業者の体重に、装備品を加えた質量をいう。 |
⑤追加落下距離とは。(この距離は自由落下距離に含まれているため表示されていない。) |
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フックを掛ける設備等の高さと、ランヤードを接続している「D環」の高さの違いによることで発生する距離をいう。(フルハーネス型の場合は0.65m、胴ベルト型の場合は0.1m) |
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(3) イラストによる自由落下距離および落下距離の説明 |
図11は標準的な使用条件の下において、フルハーネス型の自由落下距離と落下距離を説明したものである。フルハーネス型で落下を制止した状態の落下距離Bは、ショックアブソーバの伸びにランヤードおよびフルハーネスの伸びを加えた値になる。従って、ショックアブソーバに表示されている落下距離以上の作業高さで使用しなければ足下が地面に到達(衝突)するおそれがある。 |
追記: |
胴ベルトにおいても、自由落下距離および落下距離の考え方は同じ考え方である。但しランヤードを結合するD環の高さは腰部付近となるため追加落下距離は0.1mとなる。(再掲) |
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注―2 |
2.3mの最大自由落下距離について |
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「墜落制止用器具の規格」では、第一種ショックアブソーバの自由落下距離は1.8mと規定されているのに対し、ショックアブソーバには、最大自由落下距離を2.3m(ランヤード長さ1.7mの場合)と表示している。この自由落下距離について基発0125第2号(「安全帯の規格の全部を改正する告示に施行について」には、「第一種ショックアブソーバに係る落下試験については、1.8mを超える自由落下を落下させ、第一種の基準に適合することを確認することは、より安全な措置であることから認められること。」と示されている。 |
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