spacer.gif
積載形トラッククレーンの安全運転のポイント(1)
spacer.gif  HidekiTakahashi 古河ユニック(株)開発設計部部長 高橋英樹
1 はじめに
spacer.gif spacer.gif
 
 積載形トラッククレーン(図1)は、車両搭載形クレーンや、クレーン付トラックなどと呼ばれ、道路運送車両としては、トラックに属するものですが、クレーンの分類では移動式クレーンの中のトラッククレーンに含まれます。
 構造は、クレーンのユニットがトラックの運転室と荷台との間に架装(キャブバック架装)されるものがほとんどであり、荷台に貨物を積載することができ、クレーン作業と運搬の両方の機能を持っています。
 つり上げ荷重が3トン未満のものがほとんどであり、「吊る、積む、運ぶ、降ろす」といった一連の作業を一台で行うことができるため、さまざまな業種で幅広い用途に使用されています(図2)。
 
 平成30年2月26日の移動式クレーン構造規格の改正によって、平成31年3月1日以降に製造された、つり上げ荷重が3トン未満の移動式クレーンは、荷重計が認められなくなり、過負荷防止装置または過負荷を防止するための装置(安全弁および荷重計を除く)の装備が義務化されました。これにより安全性が格段に向上しています。
 しかし、平成31年3月1日より前に製造された、つり上げ荷重が3トン未満の移動式クレーンは、過負荷防止装置に代わるものとして、つり上げる質量を検出する荷重計が取り付けられているだけです。そこで本稿では、未だに移動式クレーン構造規格改正前の荷重計のみが装備されている積載形トラッククレーンが多数稼動していることを鑑み、移動式クレーン構造規格改正前に製造されたクレーンを含めた安全運転のポイントについて述べます。


2 積載形トラッククレーンの運転及び玉掛け作業の資格
spacer.gif spacer.gif
 
(1)運転資格
 積載形トラッククレーンの運転は、そのつり上げ荷重に応じた資格を有する者でなければ就業できません(表1図3)。(道路交通法第2条第1項第1号の道路上を走行させる運転を除く)道路(道路交通法第2条第1項第1号に規定する)上の走行運転については、当該自動車の運転免許所有者であることが必要です。
 
(2)玉掛け作業の資格
 積載形トラッククレーンでは、クレーンの運転のほかに玉掛け作業も併せて行うことが多いため、玉掛け作業を行うには、次の資格を有する者でなければなりません(表2図4)。


3 主な用語の説明
spacer.gif spacer.gif
 
(1)つり上げ荷重
 つり上げ荷重は、アウトリガーを最大に張り出してジブ長さを最も短く縮小し、ジブの傾斜角を最大にしたときに負荷させることができる最大の荷重です(定格総荷重の最大値)。つり上げ荷重にはフック、グラブバケット等のつり具の質量が含まれています。
(2)定格荷重
 定格荷重は、定格総荷重から、フック、グラブバケット等のつり具の質量を差し引いた荷重です(図5)。すなわち、実際にフックにかけたりグラブバケット等で、つかんだりすることができる最大の荷重です。
(3)定格総荷重
定格総荷重は、移動式クレーンの構造及び材料並びにジブの長さ、ジブの傾斜角の変化(最大から最小)に応じて負荷させることができる最大の荷重です。この場合、フック、グラブバケット等のつり具が含まれています(図5)。
 
(4)空車時定格総荷重
 空車時定格総荷重は、積載形トラッククレーンのみに使用される用語でトラックの荷台に積み荷がない状態(空車時)における安定度に基づいて決められています。
 また、アウトリガーは最も安定度の高い最大張り出し幅で、ジブ方向が後方、側方つりの状態での性能を表しています。この場合、フック、グラブバケット等のつり具が含まれています。


4 積載形トラッククレーンの安全装置等
spacer.gif spacer.gif
 
 積載形トラッククレーンの安全装置等は、移動式クレーン構造規格によって装備と機能の保持が義務付けられています(図6)。
[主な安全装置] (移動式クレーン構造規格)
巻過防止装置等 第24条
  巻過防止装置 第25条
  巻過ぎを防止するための警報装置
  (巻過警報装置) 第26条
過負荷防止装置及び過負荷防止装置以外の過負荷を防止するための装置
  (つり上げ荷重が3トン未満) 第27条
安全弁等 第28条
警報装置 第30条
傾斜角指示装置 第31条
外れ止め装置 第32条
(1)巻過防止装置、巻過警報装置
 巻上げ用ワイヤロープは、巻過ぎるとフックの上面がジブなどに激突してジブを破損させたり、ワイヤロープが切断してつり荷が落下したりするおそれがあります。これを防ぐために、フックが上限の高さまで巻上がると、巻上げ用ワイヤロープに沿って下げられているおもりを押し上げて巻過スイッチが切れて回路を遮断し、自動停止する装置を「巻過防止装置」といい、巻過スイッチの作動により警報を発する装置を「巻過ぎを防止するための警報装置(巻過警報装置)」といいます(図7)。
(2-1)過負荷防止装置
 移動式クレーン構造規格では、つり上げ荷重が3トン以上の移動式クレーンは過負荷防止装置の取り付けが義務付けられています。
 過負荷防止装置は、以下の仕組みによるものです。
①ジブの長さ、ジブの傾斜角を計測し、計測した現在の姿勢から、コンピューターに記憶させてある定格荷重を導き出します。
②圧力検出器にてジブ起伏シリンダの保持圧力を計測し、上記①で計測したジブの長さ、ジブの傾斜角を勘案してつり荷の質量を計測します。
 また、ジブの先端に荷重検出器を装備し、ワイヤロープの張力からつり荷の質量をダイレクトに計測するタイプのものもあります。
③上記①、②を比較し、クレーンの負荷状態が定格荷重に近づくと警報を発して運転を行う者に注意を喚起するか、又は定格荷重を超えると自動的にクレーンの作動を停止させます。
(2-2)過負荷防止装置以外の過負荷を防止するための装置
 平成30年2月26日の移動式クレーン構造規格の改正(厚生労働省告示第33号※1)によって、平成31年3月1日以降に製造される、つり上げ荷重が3トン未満の移動式クレーンにも、荷重計が認められなくなり、過負荷防止装置または過負荷を防止するための装置(安全弁および荷重計を除く)として、「定格荷重指示装置※2」または「定格荷重制限装置※3」)の取り付けが義務付けられました。
 これにより安全性が格段に向上しており、荷重計のみを装備している積載形トラッククレーンをお使いの方の買い替えが、迅速に進むことが望まれるところです。
※1  クレーン又は移動式クレーンの過負荷防止装置構造規格等の一部を改正する告示
※2 定格荷重指示装置:定格荷重を超えるおそれがある場合に、当該荷の荷重が定格荷重を超える前に警音を発する機能を有する装置
※3 定格荷重制限装置:定格荷重を超えた場合に、直ちに当該移動式クレーンの作動を自動的に停止する機能を有する装置
(2-3)荷重計
 平成31年3月1日より前に製造された、つり上げ荷重が3トン未満の移動式クレーンは、過負荷を防止するための装置として、つり上げる質量を検出する荷重計が取り付けられています。
 荷重計の中でも油圧式荷重計は、巻上装置用油圧モーターの作動圧力を質量に変換したものです(図8)。したがって、巻上装置の巻上げ時のみつり荷の質量を示し、停止時や巻下げ時、また他の操作時にはつり荷の質量を示さないのでメーカーの取扱い説明を十分理解して使用する必要があります。
 また、ジブの先端に荷重検出器を装備し、ワイヤロープの張力からつり荷の質量をダイレクトに検出するタイプもあります。このタイプですと、油圧式荷重計と異なり、常時つり荷の質量を表示してくれるもので、油圧式の荷重計よりも安全性が向上しています。
(3)安全弁等
 安全弁は、油圧回路の異常な圧力上昇を防止し、油圧機器を保護するための装置です。
(4)警報装置
 警報装置は、移動式クレーン作動時に周囲に警報を発して、つり荷にはさまれる等の災害を防止するための装置です。
(5)ジブ傾斜角度計(荷重指示計)
 ジブ傾斜角度計は、ジブの傾斜角を表示する装置でジブ側面に取り付けられています。荷重指示計は、ジブの傾斜角、ジブの長さによるアウトリガー最大張出時の空車時定格総荷重の関係を表示する装置で、ジブ側面に取り付けられています(図9)。
 荷重指示計(図9)は、ジブを起伏させたときに、各ジブの長さによって空車時定格総荷重を指針が示しますので、これを読み取って荷重計が示した荷重と比較し、荷重指示計(図9)の空車時定格総荷重を超えないよう注意して操作する必要があります。
(6)外れ止め装置
 外れ止め装置は、荷をつり上げる場合のフックから玉掛け用ワイヤロープ等が外れるのを防止するための装置です(図10)。
spacer.gif
[ホーム]