転倒事故の主因はオーバーロード(過荷重)です。転倒事故を防止するポイントをまとめると、次のようなことが挙げられます。
〈転倒事故を防止するポイント〉
①アウトリガーは最大に張出す。
②アウトリガーの設置地盤は養生する。
③作業は空車時定格総荷重に基づいて行う。
④旋回時には作業領域に注意する。
⑤積荷を降ろすときは車体の安定度に注意する。
以下で転倒を防止するポイントについて説明します。 |
(1)アウトリガーは最大に張出す。
積載形トラッククレーンの性能は、アウトリガーの張出し幅によって変化します。最小張出しの性能は、最大張出しに比べ大幅に低下します(表3)。さらに、張出し幅が狭くなるほど転倒に至るまでの余裕が少なくなるので注意が必要です。これらのことからアウトリガーは最大に張出すことが原則です(図13)。 |
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①アウトリガーは最大に張出す。
アウトリガーは常に最大に張出してください。最小張出しまたは中間張出しで作業が可能な場合でも、安全のため、最大に張出して設置することを原則にしてください。やむを得ず最小張出しもしくは中間張出しで作業する場合には、「空車時定格総荷重表」(表3)のアウトリガー張出し幅に応じた性能で作業してください。ただし、中間張出しで作業する場合で、中間張出しの性能が設定されていない場合には、最小張出しの性能で作業してください。
②アウトリガー張出し幅が左右で異なるときは、張出し幅の小さい性能で作業する。
やむを得ず左右の張出し幅が異なるアウトリガー設置状態にしたときは、必ず張出し幅の小さい性能で作業してください。アウトリガー張出し幅の大きい領域でつり上げ、張出し幅の小さい領域に不用意に旋回すると転倒する恐れがあります。張出し幅の小さい領域へ旋回するときは、つり荷の質量が張出し幅の小さい「空車時定格総荷重」以下であることを確認した上で、作業を行ってください。
③3段ジブ以上の作業はアウトリガーを最大に張出す。
ジブが長くなると安定度は悪くなりますので、3段ジブ以上を伸長して作業を行う場合は、原則としてアウトリガーを最大に張出してください。やむを得ず中間張出しまたは最小張出しで作業する場合は、機種によって作業できるジブの段数は異なりますので、作業開始前に「取扱説明書」や「空車時定格総荷重表」等で確認しておく必要があります。 |
(2)アウトリガーの設置地盤は養生する。
安全な作業を行うためには、車体とつり荷を十分支持することのできる堅い地盤の上にアウトリガーを設置することが必要です。軟らかい地盤の上にアウトリガーを設置すると、アウトリガー受皿が地中に沈んで車体が傾き、最悪の場合転倒します。また、一見して堅そうな地盤でも、内部の状態によっては車体を支える力が不足する場合があります。次のような地盤に対しては十分注意を払い、地盤の養生を行ってください。
①簡易舗装の路面
②歩道等の敷石路面
③掘削工事後に埋め戻した場所
④埋め立て地
⑤路肩や掘削穴の近辺
〈地盤の養生〉
軟弱地など車体とつり荷を支える力が不足する場所にアウトリガーを設置する場合、下記の処置を行って地盤を養生してください(図14)。
①傾斜地及び凹凸のある場所は、水平に設置できるように地盤を整地する。
②地盤にかかる力を分散させるために、地盤の状態に見合った大きな面積と十分な強度のある鉄板や木材を敷き、その中央部にアウトリガー受皿を設置する。 |
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(3)作業は空車時定格総荷重に基づいて行う。 |
積載形トラッククレーンは荷台の積荷によって安定度が変化し、積荷がないときが最も不安定になります。この最も不安定な状態を基準に設定された「空車時定格総荷重」で作業する事が基本となります。「空車時定格総荷重」は荷台に積荷がないときに、クレーンに負荷できる最大の荷重(つり具の重量を含む)をいい、クレーンの強度と安定度に基づいて決められています(図15)。 |
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したがって、通常の作業はこの「空車時定格総荷重」の性能で行います。「空車時定格総荷重」はクレーン作業が後方領域または側方領域で行われるときのもので、前方領域は考慮されていません。前方領域では安定度が悪くなりますので、「空車時定格総荷重」の25%以下で作業してください。 |
(4)旋回時には作業領域に注意する。
積載形トラッククレーンの作業領域は図16のようになります。クレーン作業時には、この作業領域に示された積載形トラッククレーンの特性をよく理解することが必要です。作業領域図からは次のことが分かります。
①空車時定格総荷重は後方領域、側方領域とも同じ値に設定されています。
②後方領域は最も安定がよく、安定に関係なくウインチ能力一杯の荷物をつり上げることができます。このため、後方領域で荷物をつり上げ、側方領域へ旋回するときはオーバーロードによる転倒に注意しなければなりません(図17) |
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(5)積荷を降ろすときは車体の安定度に注意する。
車体の安定度は荷台に積荷を積載しているときと空車時では大きく異なります。積荷が減るに従って安定度は悪くなりますので、荷台から積荷を降ろすときは特に注意が必要です(図18)。
荷台から積荷を降ろすときは、次のことに注意してください。
①つり荷の質量が「空車時定格総荷重」以下であることを確認する。
②たくさんの積荷は、作業半径が順次小さくなるように、荷台後方の積荷から降ろす。
③後方領域から側方領域へ旋回するときは、つり荷が荷台の外へ出たら、万一バランスを崩しても、転倒する前につり荷が先に接地する安全な高さまで降ろしてから旋回する。
④側方領域での作業は、後方領域よりも安定度が悪くなります。後方領域から側方領域へ旋回するときは、安定度を確認しながらゆっくりと旋回する。 |
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