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小型移動式クレーン(ミニ・クローラクレーン)の安全運転のポイント
spacer.gif  (一社)日本クレーン協会技術普及部
1 はじめに
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 「ミニ・クローラクレーン」とはコンパクトなボディにクローラ(履帯)による走行機能を有し、4本のアウトリガーを装備した小型移動式クレーンです。
 機体のシートに座りながら走行、クレーン作業が可能な乗車型(図1)とシートが無い非乗車型(図2)があります。「ミニ・クローラクレーン」は、機体に装備した4本のアウトリガーで機体の安定を保ちながらクレーン作業を行います。
 同じく小型移動式クレーンの積載形トラッククレーンと比較して、走行体がゴムクローラ(ゴム履帯)であるため、アスファルト・コンクリート道路、建築物の床面等の整地された場所は勿論、未舗装通路、建築や土木作業現場、軟弱地も走行が可能です(図3)。
 
 走行姿勢は外形寸法もコンパクトに設計されています。一般的には、走行時全幅が600mm~800mm未満で、霊園、墓地での狭い通路、坂道、数cmの段差がある通路も走行できます。建築現場で廊下や部屋のドアを開けて、室内の移動も可能です(図4)。
 従って、狭い場所への進入性に優れ、積載形トラッククレーンが入り込めない建設現場や不整地、屋内作業現場でのクレーン作業を可能にします。
 また、走行姿勢がコンパクトにもかかわらず、クレーン作業をする場合には、4本のアウトリガーを張出すことにより、クレーン作業が可能になります。アウトリガーは、クレーン設置場所の広さに応じて、段差のある場所、凹凸のある場所、障害物を避けて、張出し角度、張出し長さを選択して設置することができます(図5)。
 


2 転倒災害およびその防止対策について
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 「ミニ・クローラクレーン」の転倒災害は、主に次のことが原因で発生しています。
①アウトリガーの張出しが不完全だった。
②オーバーロード(過荷重)だった。
③アウトリガーを設置した地盤が軟弱だった。以下に、その対策を述べます。
(1)アウトリガーの張出しが不完全
「ミニ・クローラクレーン」は、アウトリガーを地形・地盤に合わせて設置することが可能ですが、相反する危険が存在することを忘れてはなりません。
【対策1】
アウトリガーは、最大(標準)張出し状態でクレーン作業を行う。
 『アウトリガー最大(標準)張出し状態』を図6に示します。
アウトリガーの設置角度を、最大(標準)角度にする。
アウトリガー屈折部のピンを、最大位置にする。
アウトリガーのスライド部を、最大に引き出す。
 
 取扱説明書、クレーン運転士教本などには『アウトリガーは必ず最大張出しで作業してください』と説明されています。
 図7および表1の事例では、定格荷重表を見ると、最大張出しの状態で作業半径2.5mでは定格荷重が1.38トンです(例1)。狭い通路などでアウトリガーが最大張出し状態で設置できない時は、作業半径2.5mでは定格荷重が0.34トンです(例2)。
 
 取扱説明書には、アウトリガーの旋回設置角度によるクレーン作業を禁止している範囲が明示されていますので、確認しておくことが必要です(図8)。
 最大張出しのアウトリガー方向から、最大張出しができなかったアウトリガーの方向へ旋回する場合に、転倒災害が多く発生しています。
(2)オーバーロード(過荷重)
 「ミニ・クローラクレーン」は、積載形トラッククレーンと比較して機体質量が軽いので、アウトリガーを最大(標準)張出しにすることが必要です。
【対策2】
アウトリガーを最大(標準)張出しにする。
定格荷重を確認して、クレーン作業を行う。
 『定格荷重』とは、荷をつり上げ旋回しても転倒しない、どの位置でも安全につり上げることのできる荷重です。
 図9のような場合には、作業禁止範囲への旋回作業は厳禁です(転倒します)。ご使用になるクレーンの定格荷重表にて、安全に旋回作業ができるか確認しておきましょう。
(3)アウトリガーを設置した地盤が軟弱
 クレーンを設置する地盤の状況等の確認は、安全作業の必須条件であり、クレーン作業開始前の基本的な確認事項の一つです。これを怠ると、必ず転倒事故につながります。アウトリガーを最大(標準)位置に張り出しても、設置した地盤が軟弱であれば転倒します。
【対策3】
・アウトリガーを設置する地盤の状況をクレーン作業開始前に点検する。
・必要に応じて地盤に養生をする。
 「ミニ・クローラクレーン」は、山間部および不整地の未舗装地面にアウトリガーを設置することも少なくありません。敷板、枕木、盤木等々の準備をしておき、これらを適切に使用して、アウトリガーから地盤に加わる接地圧を下げることが必要です。敷板等を使用していても、クレーン作業により外れることがありますので、作業中でも確認してください。
 「ミニ・クローラクレーン」は、最近の建築現場でもよく見かけることがありますが、床面上でクレーン作業をする場合は、床面の強度が心配になります。床面の強度にも限界がありますので、アウトリガーから床面に加わる荷重を算出して、安全を確認することも是非行ってください(図10)。


3 危険予知について
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 定格荷重表の範囲内でクレーン作業を行うことを遵守していれば、転倒事故は防ぐことができます。(勿論アウトリガーの張り出し・設置は、最大(標準)位置で行うことが必要です。)
 「ミニ・クローラクレーン」は、コンパクトであるために、狭所・室内・屋内で使用されることが多くあります。その際のクレーン作業計画では、クレーン性能の100%近くで機種を選定される場合がありますが、是非余裕のある安全なクレーン作業を行っていただけるよう、1クラス上のクレーンを使用することを望みます。
 「ミニ・クローラクレーン」の多くは、遠隔操作が可能です。クレーンの周囲に注意しながら、安全な位置での操作ができますので、大いに活用するべきでしょう。
 また、荷のつり上げ高さを、地切りした程度におさえて旋回操作をした場合は、転倒が始まっても、荷が地面に早々に着きますので転倒防止になります。必要以上に荷をつり上げないようにしましょう。地面の凹凸、障害物等がある場合は、直前・直後でつり荷の高さを調整してください。


4 安全装置について
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 移動式クレーン構造規格により、つり上げ荷重が3トン以上の移動式クレーンには『過負荷防止装置』を装備することが義務付けられています。一方、「ミニ・クローラクレーン」はつり上げ荷重が3トン未満の機種が多く、『過負荷防止装置以外の過負荷を防止するための装置』を備えることが要求されています。
 また、昨今の安全意識の高まりにより、特にアウトリガーの張出し状態によってクレーン性能が変わることに対して、オペレーターをアシストする機能が求められています。
 以下に最近の機種に装備されている安全装置について紹介します。
(1)過負荷を防止するための装置
 平成30年2月26日の移動式クレーン構造規格の改正(厚生労働省告示第33号※1)により、平成31年3月1日以降に製造される、つり上げ荷重が3トン未満の移動式クレーンにも、『荷重計以外の過負荷を防止するための装置』(「定格荷重指示装置※2」または「定格荷重制限装置※3」)の取り付けが義務付けられました。
 これは「ミニ・クローラクレーン」も例外ではありません。従って、現在販売されている「ミニ・クローラクレーン」には、過負荷を防止するための装置が標準装備されています。
※1  クレーン又は移動式クレーンの過負荷防止装置構造規格等の一部を改正する告示
※2 定格荷重指示装置:定格荷重※4を超えるおそれがある場合に、当該荷の荷重が定格荷重を超える前に警音を発する機能を有する装置
※3 定格荷重制限装置:定格荷重を超えた場合に、直ちに当該移動式クレーンの作動を自動的に停止する機能を有する装置
※4 定格荷重:ジブ長さ、作業半径、作業領域、アウトリガーの張出し状態に応じてつり上げることができる最大の荷重
(2)アウトリガー張出し状態自動検出
 制御技術および検出技術の向上により、次のような検出器をアウトリガーに装備することで、機体に対してアウトリガーをどの位置に張り出しているかを演算で求めることができます。
・アウトリガー屈曲部の開き量
・アウトリガーのスライド部の引き出し量
・アウトリガーの設置角度(旋回方向)
・アウトリガーの押し出し量
 こうすることにより、ジブ(ブーム)の旋回方向に応じて、異なる定格荷重(最大張出し性能・中間張出し性能・最小張出し性能・作業禁止方向)を自動的に選択するものです。
 例えば、従来機では4本のアウトリガーのうち1本でも最大張出しでない場合、安全のために安定度が得られる作業領域も含めて全ての作業領域(全周)において、最小性能(定格荷重が最大張出し時に比べて大幅に低下)で使用する必要がありました(図11左)。
 そこで、アウトリガーの張出し状態を自動検知することにより、アウトリガーの張出し状態(機体の安定度)に応じた定格荷重に自動で切り換えるため、4本のアウトリガー全てを最大に張り出せない現場でも、安定度が得られる領域では最大性能で作業することができる機種もあります(図11右)。
 
(3)作業領域制限機能
 多彩なアウトリガーの張出しパターンは、現場に応じた機体の設置が可能となり、あらゆる作業現場でクレーン作業が行えるという利点がある反面、その張出し状態によっては作業禁止領域(機体の安定度が著しく低い領域)が発生してしまうことがあります。
 そこで、液晶カラーディスプレイ(図12)によりアウトリガーを設置する時点で作業禁止領域を把握することができ(図13)、クレーン作業時には作業禁止領域に近づくにつれてクレーンの作動速度を徐々に減速し、作業禁止領域に入る前にクレーンの作動をゆっくりと停止させることで、転倒事故を未然に防止することができる機能を有している機種もあります。
 


5 おわりに
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 安全に作業をするためには、クレーンが常に健康な状態(クレーンの性能、機能、品質等を常に維持する)でなければなりません。月例検査、年次検査を励行することでクレーンの健康を維持することも必要です。
 また、優秀なオペレーターとは、常に安全作業に心掛け、災害防止に努力をしている人であると考えます。
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