昨年、前田建設工業にて検証された当社ウェアラブル製品 hamon について、最初に簡単に紹介する。当製品は、タンクトップ型のスマートウェアで、胸の下の部分の左右に当社製銀めっき繊維 AGposs で開発した電極が装着されており、左右のセンサーが取得する電位差により心電波形を取得する仕組みである。当社は医療機器メーカーであり、当技術に基づいた心電図取得のための医療機器を販売している。このような波形データは、心拍変動解析(HRV)による研究やアルゴリズムに活用される。
hamon は、心電波形に基づいて分析するストレスや体調などのアルゴリズムをサービスとして提供しており、暑熱リスクのみならず、労働現場における様々なフィードバックを提供している。
当製品は、図3に記載の通り、スマートウェアに装着したトランスミッタから無線通信である Bluetooth により、スマートフォンへデータを送信し、スマートフォンから当社クラウドサービスを介して、各社の管理者へリアルタイムでのデータ提供を行い、見守りサービスを実現している。当サービスは、現在ではおよそ10社程度が利用している。
また、熱中症リスク環境下におけるウェアラブル着用での見守りサービスを実現するにあたっては、さらに大きな課題である「IT リテラシー」の問題があった。現場では様々な知識、経験の方が業務に従事しており、IT 機器の利用についても、それぞれに理解が異なる。そのため、個々の方のITスキルにより、想定する利用ができないことがあり、IT リテラシーによる利用の制約という問題があった。リストバンド型が利便性を最優先に考えるときに、IT リテラシーによる制約をどのように克服するかが当社だけでなく、業界全体の課題と言える。この中で、当社は、2021年5月に hamon band というリストバンド型製品を発売した。当製品は、脈波(PPI)を取得し、その脈波データで深部体温の上昇変化推定アルゴリズムを動かし、ネットワーク対応をあえてしないことで、充電して腕に装着すれば勤務時間中は見守りをしてくれるという特徴を持っている。またリスクスコアを出した場合も、利用者により認識が異なるという問題が発生するため、緑、黄、赤という信号機と同じアラートを出すことにより、ユニバーサルデザインとしてのウェアラブル製品とした。発売より3万本、300社以上に利用が広がり、2024年に発売する次期モデルは予約注文で3万本程度となり、一層の利用増が見込まれている。