 |
 |
| 原因や対策を学び職場の転倒事故を防ぐ―各年代の転倒災害の実態― |
|
 |
 |
 |
|
 |
(独)労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所 リスク管理 研究グループ 研究員 柴田 圭 |
 |
|
 |
|
 |
|
|
 |
 |
| |
|
ここでは、転倒に至る原因と、転倒直前に行っていた行動から場合分けをしている。転倒直前の行動としては、歩行を伴わない単純な動作のみの「単純動作」、同じく歩行を伴わない複雑な動作の「複雑動作」、歩行のみの「純粋歩行」、歩行中に複雑動作を行う「ながら歩行」に分類している。詳細については、参考文献2)を確認されたい。
|
|
表1に、小売業における転倒リスクの高い行動様式と転倒の原因及び典型的事例を示す。若壮年群(16~44歳)では、すべり、つまずき、踏み外しを引き起こしやすい行動は特に見られない。すべりによる転倒については、すべりに至る床・路面状況が判別しやすいため、その原因別の分析も行っている。すべりの原因としては、水系、氷・雪に大別しており、油系によるものはその他となっている。若壮年群では、水系で濡れた面、氷・雪によるすべりを引き起こしやすい行動は特に見られない。
|
|
中年群(45~64歳)では、若壮年群と同様に、転倒3要因を引き起こしやすい行動は特に見られない。一方、純粋歩行は、水系で濡れた面にてすべりを引き起こしやすく、単純動作は氷・雪によるすべりを引き起こしやすい。典型的な事例としては、洗浄や清掃のために濡れている床面を通りながら物品を他所に取りに行く作業、凍結・積雪面における通勤用自家用車の昇降、冷凍庫への出入り等が挙げられる。
|
|
高年齢群(65歳以上)では、ながら歩行がすべりを引き起こしやすい。一方、水系で濡れた面、氷・雪によるすべりを引き起こしやすい行動は特に見られない。これは、同区分では統計数が少ないためであると考えられており、統計的な有意差はないが、傾向として、ながら歩行が氷・雪によるすべりを引き起こしやすいことが分かっている。典型的な事例としては、配達中の凍結路面での転倒が挙げられる。高年齢、足以外に注意が向かいやすい状態、低摩擦な路面の組み合わせにより転倒リスクが高い事例と言える。
|
| |
|
表1 小売業における転倒リスクの高い行動様式と転倒の原因及び典型的事例(2017年)2)
|
| 業種 |
転倒リスクの高い行動様式×転倒の原因 |
典型的事例 |
| 小売業 |
〈中年群(45~64歳)〉
・ 純粋歩行×水系で濡れた床面におけるすべり転倒
・ 単純動作×凍結・積雪面におけるすべり転倒
〈高年齢群(65歳以上)〉
・ながら歩行×すべり転倒
|
・洗浄や清掃のために濡れている床面を通りながら物品を他所に取りに行く作業(すべり)
・凍結・積雪面における通勤用自家用車の昇降、冷凍庫への出入り(すべり)
・凍結路面での配達(すべり)
|
|
| |
|
|
 |
|
|
 |
 |
 |
|
 |
|
|
 |
 |
| |
|
表2に、社会福祉施設における転倒リスクの高い行動様式と転倒の原因及び典型的事例を示す。若壮年群では、転倒3要因を引き起こしやすい行動は特に見られない。一方、複雑動作は、水系で濡れた面にてすべりを引き起こしやすく、純粋歩行は氷・雪によるすべりを引き起こしやすい。典型的な事例としては、浴室や廊下の清掃中に濡れた面での転倒が挙げられる。社会福祉施設では入浴介助の業務等があり、水濡れ面に接する機会が多く、すべり転倒リスクが高いものと言える。また、通勤途中や利用者送迎中、利用者自宅訪問途中での凍結路面による転倒が事例として見られ、社会福祉施設の特徴として、利用者と密接に関わり、施設と利用者自宅との移動が業務としてあるため、純粋歩行での氷・雪によるすべり転倒リスクが高いものと言える。
|
|
中年群では、純粋歩行がすべりを引き起こしやすく、ながら歩行がつまずきを引き起こしやすい。社会福祉施設では、配膳や清掃等の業務があり、手に物を持ちながら歩行し、つまずき転倒に至る事例が多く見られた。水系で濡れた面、氷・雪によるすべりを引き起こしやすい行動は、若壮年群と同様であり、典型的な事例も同様である。
|
|
高年齢群では、転倒3要因を引き起こしやすい行動、水系で濡れた面、氷・雪によるすべりを引き起こしやすい行動は特に見られない。
|
| |
|
表2 社会福祉施設における転倒リスクの高い行動様式と転倒の原因及び典型的事例(2017年)2)
|
| 業種 |
転倒リスクの高い行動様式×転倒の原因 |
典型的事例 |
| 社会福祉施設 |
〈若壮年(16~44歳)〉
・複雑動作×水系で濡れた床面におけるすべり転倒
・純粋歩行×凍結・積雪面ににおけるすべり転倒
〈中年群(45~64歳)〉
・複雑動作×水系で濡れた床面におけるすべり転倒
・純粋歩行×凍結・積雪面ににおけるすべり転倒
・ながら歩行×つまずき転倒
|
・ 配膳や清掃等の濡れた面における業務中に手に物を持ちながらの移動(すべり)
・入浴介助,浴室や脱衣所の清掃(すべり)
・ 凍結路面における通勤や、利用者送迎、施設と利用者自宅との移動(すべり)
・ 配膳や清掃等の業務中の手に物を持ちながら歩行(つまずき)
|
|
| |
|
|
 |
|
|
 |
 |
 |
|
 |
|
|
 |
 |
| |
|
表3に、飲食店における転倒リスクの高い行動様式と転倒の原因及び典型的事例を示す。飲食店においては、全ての年齢群において、転倒3要因を引き起こしやすい行動は特に見られない。一方、全体的に水系で濡れた面におけるすべり転倒の割合が大きいことが明らかになっている。つまり、全ての年齢群において、行動様式によらず水系で濡れた床面におけるすべり発生のリスクが高いと言える。これは、飲食店では業務上、水分を含む生鮮品を取扱った調理や配膳等、水で濡れた屋内を移動することが他の業種より多いためと考えられる。典型的な事例においても、そのような状況が多数見られた。
|
|
表3 飲食店における転倒リスクの高い行動様式と転倒の原因及び典型的事例(2017年)2)
|
| 業種 |
転倒リスクの高い行動様式×転倒の原因 |
典型的事例 |
| 飲食店 |
〈全ての年齢群〉
・ 行動様式によらず×水系で濡れた床面におけるすべり転倒
|
・ 水分を含む生鮮品を取扱った調理や配膳等における水で濡れた屋内の移動(すべり)
|
|
| |
|
|
 |
|
|
 |
 |
 |
|
 |
|
 |
|