1 作業方法の決定および労働者の適正な配置
職長は、職場において作業中の労働者を直接指導または監督する者であるから、まず、作業方法を定めて、労働者を適正に配置することが重要である。
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1.1 作業手順
「段取り8分」といわれるように、作業の手順(段取り)は重要であり、この手順を間違うと職場はムダ(非能率)、ムラ(悪い品質)、ムリ(不安全)が生じる状態となる。この職場の「ダラリ」をなくすために、作業の道しるべとなる作業手順書(マニュアル)の作成が不可欠となる。
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思想家であり民芸運動の主唱者であった柳宗悦は、「民芸」を「使いよく便利なもの、使ってみて頼りになるもの、簡素なもの」と定義したが、まさに、このことは作業手順書にも当てはまる。すなわち、作業手順書は、だれにとっても見やすく・わかりやすく・簡潔で使いやすいものでなくてはならない。
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作業手順書は、単にルールや禁止事項の押し付けとならないように、全員の共通認識のもと、過去の失敗や反省、ヒヤリ・ハット事例が組み込まれてるものが望まれる。
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また、平常の作業以外の、予期しない故障の復旧や補修工事等が必要となる作業(いわゆる「非定常作業」)に対する作業手順書も重要である。簡単に「想定外」として片づけるのではなく、本当に想定外なのかについて、非定常作業における具体的な時間の流れを想定して、対応すべき作業の優先順序、作業者の役割(ふさわしいのはだれか)などを決めておく。また、どのような作業手順書も作業の変化等に応じて定期的に見直すことをルール化し、見直しによって作業内容が変更になったときは、必ずリスクアセスメントを実行することを全員で習慣化する。
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1.2 労働者の適正配置
職長は、作業者を通じて業務を遂行ことができることから、各作業者のそれぞれの仕事が順調に進むように作業の割り当てをする必要がある。
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この場合、職長は、「作業の特性」(作業の種類・内容・条件等)と「作業者の特性」(作業者の年齢・性別・能力・日々の心身の状態・希望等)とをうまく組み合わせる(適正配置)ことに注意を払う。両者の特性の大小を比較して、作業の側に問題があれば環境や作業を改善するなどにより「作業の特性」を変え、人の側に問題がある場合には指導・援助により「作業者の特性」の向上を図り、負担を軽減する。それでもなお適応しないときは、最終的な措置として配置転換などを検討することとなる。作業者の配置に当たって職長は、作業者の希望をできるだけ配慮して、作業の割り当てをするように努める。
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2 労働者に対する指導または監督の方法
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2.1 指導および教育の方法
職長は、部下の働きを通して仕事の成果を上げることが期待されているから、「部下の育成」は、職長の重要な役割の一つである。部下「個人の能力」の向上により、「職場の水準」を引き上げ、作業を円滑に途絶えることなく進めていくことを常に心掛ける。したがって、職長教育は個人目標レベルと職場目標レベルを決定して実施する必要がある。
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また、労働災害の原因となっている不安全行動をなくすために、職長は、部下の教育を行うに当たっては、「知識教育」(知らないことの解決)、「技能教育」(できないことの解決)および「態度教育」(やる気のなさの解決)の3つを切り口とした教育を行う必要がある(図2)。
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なお、「起承転結」、「4コマ漫画」、「P(Plan計画)・D(Do 実施)・C(Check 検証)・A(Act改善)」などといった4段階のスタイルにみられるように、教育を効果的に進める方策の一つとして、次の「教え方の4段階法」がある。
- 第1段階 作業の重要性・意義・価値を理解させる。
- 第2段階 手順と急所を理解させる。
- 第3段階 理解度、応用力を確認する。
- 第4段階 教育達成度を評価する。
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2.2 監督および指示の方法
職長は、「人」、「物」、「作業」を適切に「管理」して、作業者の安全衛生を確保しながら、定められた期間内に、定められた品質のものを、定められたコストで生産する役割を担っている(図1)。そのため現場においては、適切な監督・指示(仕事の割り当てや注意事項の伝達等)を行う必要があり、相手にやる気を起こさせることとなる。指示を行うときには、以下の点に留意する。
- 作業者の能力に応じた指示 達成できる目標を与える。
- 具体的でわかりやすい指示 必要に応じて現物や図を使う。
- 自信を持った指示 あいまいな指示はせず、指示を変更する場合は、その理由を説明する。
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職長は、すべての業務を一人で行うことは不可能であるから、業務量を考慮して組織の一人ひとりの全員参加の下、役割分担を考えて、責任と権限を決めて実行する。
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なお、指導や指示を行う場合、時として部下からは無理な内容を押し付けられたと受け取られ、職場のパワーハラスメントに発展しないとも限らない。職場におけるパワーハラスメントとは、①優越的な関係を背景にした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるもので、①~③をすべて満たすものをいう。職長は、この点について十分に注意を払う必要がある。
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3 危険性または有害性等の調査(リスクアセスメント)およびその結果に基づき講ずる措置に関すること
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3.1 危険性又は有害性等の調査の方法及び調査の結果に基づき講ずる措置
職場には、建設物、設備、原材料、作業方法などあらゆる場や状況において、危険性あるいは有害性(リスク)が潜在して(隠れて)おり、それが時間的な経過の中において顕在化する(見えてくる)、すなわち「異常」な状態となる。この異常とは、法規、指針・作業標準などで定められている基準からずれていく、すなわち「正常」な範囲を超えた状態をいい、この状態をそのままにしていくと、いずれはトラブル→事故→災害となる(図3)。
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職長は、先取の安全衛生管理を行う役割を担っていることから、自らが中心となって全員で早期にこれらのリスクを洗い出して特定し、その評価を行い、災害の発生を防ぐ対策を講じなければならない(図4)。その際、「人(Man)」・「物(Ma-chine)」・「作業(Media)」・「管理(Management)」の4つの切り口(4M)から異常な状態を見つけることがポイントとなる(図1)。
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なお、特にハード対策(本質安全化および工学的対策)の低減措置を講ずることが難しく、まだリスクが残る(残留リスク)場合には、職長は主にソフト対策を具体的に示して部下に継続的に実行させ常にその実施状況を確認することが重要である。
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このように職長は、現場の知識、経験に基づいた意見をリスクアセスメントに反映させることが求められる。したがって、全員についての役割分担、手順などのルールを作って、リスクアセスメント結果に基づいて、事情場全体の安全衛生計画をさらに具体化した職場の安全衛生実行計画を作成することとなる。
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リスクアセスメントは、労働災害を防ぐ重要な方法であるとともに、職長が職場において部下に対するリーダーシップを発揮し、部下の信頼を得る手立てでもあるので十分に理解しておかなければならない。
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3.2 設備、作業等の具体的な改善
〈設備・機械の改善〉
職長は、常に問題意識を持ち、問題を見つけたら改善を進める。
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職場の安全衛生を確保する基本は、設備・機械の「本質安全化」が図られていることである。すなわち、図4で示すように、まず、職場から危険・有害なものをなくす、あるいはその危険性・有害性が極めて低いものに替えることが基本である。職長は、職場のリーダーとして、リスクアセスメントの実施等において全員でリスクをなくす活動を行うに際して、まずはこの本質安全化から検討を行うことを全員の共通の認識とすることが大切である。
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なお、個々の機械・設備の安全化を図るだけではなく、合わせて、作業者との調和(場所と流れ・保守点検)が図れるようにレイアウト(配置)を考慮する必要がある。レイアウトは、一度決められるとその変更は容易ではない。
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〈環境の改善〉
労働衛生管理の視点に立った職場環境の改善が必要である。職場における目に見えない疾病についてその「こわさ」を伝え、有害な要因をなくすとともに、より快適な職場環境を作り出すために職長の役割は大きくなっている。特に近年の化学物質による労働災害の発生状況に鑑み、これまでの「個別規制型」から、事業者自らが選択した方法に従って化学物質管理を推進する「自律的管理」に的確に対応することが求められている。これに伴って、職長教育の対象業種に「食料品製造業」及び「新聞業、出版業、製本業及び印刷物加工業」の2業種が新たに追加された。また、リスクアセスメントの実施義務対象物質の大幅な増加、労働者に対する適正な保護具使用の監視の強化など、職長の役割はますます高まってきている。
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〈作業の改善〉
職長は、設備や機械、環境の改善とともに、より安全に、より良く、より早く作業を行うために、それが最良の方法で行われているか、常に問題意識をもって作業の方法を改善し、部下の能力を発揮させる必要がある。
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作業の改善に当たっては、まず作業を細かく観察して手順ごとに分解して、それぞれの手順について、5W1H、すなたち、なぜ必要か―なにをするのか―どこでするのか―いつするのか―だれがするのか―どんな方法が良いかにより現状のままで良いのかの自問自答を行い、その結果、分解した手順について、「取り去る」、「結合する」、「組み替える」、「簡単にする」などの見直しを行う。
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4 異常時・災害発生時における措置
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4.1 異常時における措置
異常、すなわち職場や作業が危険の状態になったときに対応できる措置基準を作成して、それに基づいて作業者を教育・訓練を行う。また、異常に対して正常な範囲は、具体的な職場や作業において一定の許容された範囲といえるので、その許容範囲をわかりやすく現場に表示するようにする。
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なお、職長は、先取の安全衛生管理を役割としていることから、部下が異常を発見した時には、直ちに報告を求め、連絡、相談をすること(いわゆる「報連相(ほうれんそう)」)が大切であり、職長として、以下の点に留意する。
- 報連相ができる雰囲気づくり
- なぜ報連相が必要か 問題を早く解決するため。他の現場・仲間にも知らせるため
- できる限り窓口の一本化(簡素化) 混乱をなくす。現場の状況を理解する。
- 過度な要求(速く・正確に)をすることは抑える 現場の状況に思いをいたす。
- 事後のフォロー 状況・結果のフィードバック、ねぎらい
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4.2 災害発生時のおける措置
災害が発生した時の基本的な流れは、以下のとおり。
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職長は常日頃から、この基本的な流れに基づく実践的な訓練を定期的に実施する。その際、部下に対して単なる参加型の訓練では効果は期待できず、自分がその時リーダーであったならばどうするかを想定させた訓練を行うことがポイントである。なお、原因の分析・究明をするに当たって、職長は、それが「責任の追及」ではなく、再発を防止するための「原因の究明」であることを自らの態度や言動で示すことにより、作業者は安心して災害発生時の状況を話し、ともに対策を検討することができることとなる。
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5 作業に係る設備及び作業場所の保守管理
以上の1から4の他、職長として行うべき労働災害防止活動に関するものとして、次の事項がある。
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〈整理・整頓・清掃・清潔〉
整理・整頓・清潔・清掃(4S)は、安全衛生の基本であり、作業の能率および製品の出来具合にも大きく影響することから、職長の率先垂範の下に全員の協力によって進める必要がある。そのためには、作業場における4S についての基準を明確にして、それぞれの箇所や物に対する責任者を決めることがポイントとなる。なお、4S については単に道徳的・教訓的な事柄と捉えられがちであるので、安全衛生・品質・能率の視点から「しないとどうなる」かを教えると説得力を増す。
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〈点検〉
4S の状態やそもそも設備や作業自体は、時間的な経過とともに基準に沿った正常な状態からズレた状態に変化していくのでこれを早期に発見するために点検することが不可欠である(図3)。異常は、早く発見すればするほど、その対策は容易であり、費用もかからず、また、作業への影響も少なくて済むことから、職長は、点検計画を作成して、分担を決定し、また、任せきりにせずに、点検結果とともに点検状況も確認する。さらに、マンネリを防ぐために、点検基準や点検方法について全員で討議を行い、必要に応じて改正を行う。
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