⑴作業環境の改善
①遮光 作業環境のWBGTを下げるには、作業場に直射日光が差し込まないようにすることが最も効果的である。屋外では簡易なものや移動式のものでもよいので、日光を遮る屋根やひさし、簡易テントやビーチパラソル等を設置して日陰を作る。屋内の場合は、窓にシェードやブラインド、遮光・遮熱シートを設置する。窓辺には植栽を施し、いわゆる緑のカーテンを育てることも検討できる。工場の屋根や壁等には赤外線による輻射熱を遮断する遮熱シートを設置することや遮熱塗料を塗布すること、建屋の屋根や壁に散水して冷やすこと、職場と壁の間に遮光板(遮熱板)を設置することを検討する。工場の出入口から差し込む日光は自動開閉式の扉や簾などで工夫してなるべく遮光する。
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②断熱 職場の近くに熱気が対流している時は、発生源を隔離して作業者がいない空間で仕切り、熱上昇する気流を局所排気装置によって上方から排出する。熱気のある部屋の壁や扉には、対流熱や伝導熱を遮断するために不燃性で熱伝導率の低い断熱材を入れる。
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③送風 扇風機等による送風で広範囲の皮膚に風を当てられれば、汗の蒸発が促されて非常に効果的である。気温が40℃程度でも汗が出ている場合は送風するほうが熱中症予防として有利である。体温より高い空気温による送風であっても蒸発熱で皮膚温を下げる作用のほうが皮膚に対流熱が伝わる作用を上回るからである。送風時に皮膚表面を水で濡らせば汗の代わりになる。窓の開放や天井ファン等の全体換気による風の効果は限定的なので、作業者の場所に向かって大型の送風機で送風するほうが効果的である。
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④冷風機・スポットクーラー 空気を冷却できれば送風の効果は一層大きくなる。屋外や工場のような広い空間でも作業者に直接に冷風を当てられれば効果がある。水を浸透させた素材に空気を通過させたり冷水に空気を通したりできれば、空気から蒸発熱が奪われて気温が下がり冷風ができる。この仕組みを利用した冷風機の利用を検討する。また、冷媒を使用した熱交換器を備えたスポットクーラーの利用を検討する。なお、冷気と別に排出される熱気はなるべく工場外に排気する。
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⑤置換換気 事務室の天井又は上方に設置されたエアコンは作業者に直接冷風を送るほか扇風機の併用で作業者の周囲に冷気を対流させるが、工場全体に冷気を対流させることは難しい。そこで、広い空間では床面や壁の低い位置から冷気を送り込み、熱気を天井の排気口から排出させることで、作業者がいる高さに快適な温度層を形成する置換換気を検討する。ただし、この方式では空気層を乱さないように供給する冷気は低風速となる。熱源による上昇気流、開口部からの風、日射による影響等がある場合は制御が難しいこともある。
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⑥ミスト噴射 高圧の水をノズルから噴霧して微細なミストを発生させるとすぐに気化して空気の温度が少し下がるので、その空気が作業者の周囲に対流すれば冷気を感じることができる。ただし、冷気を感じる領域は限られ、狭い空間では湿度が上昇するおそれがある。一方、ミストが皮膚に当たって体表面が濡れ、気流があれば、汗の代わりになる。
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⑦除湿 エアコンを除湿に設定して空気中の水蒸気量が減れば、汗が乾きやすくなるので皮膚から蒸発熱を奪い体温を下げる効果が期待できる。高温の蒸気が出る場合は上方から建屋の外に排出する。
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⑧散水・打ち水 屋根への散水や地面への打ち水は、気化熱を奪うことで屋根や地面の温度を下げる。ただし、頻回に又は連続して実施することは難しいことが多く、逆に、湿度の上昇を招くことに注意が必要である。
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⑵作業負荷の軽減(表1)
①身体負荷の軽減 身体負荷が高いと筋肉で栄養を分解する際に化学反応熱が発生して体温が上がる。熱中症予防基本対策要綱が示す暑熱順化者の「WBGT基準値」は、身体作業強度に応じて25~33℃まで幅があり、楽な座位であれば33℃でも熱中症にはなりにくいとされる。筋肉を使う動作を減らすことができれば熱中症予防に効果的である。重量物の挙上、階段の昇降等を長時間又は繰り返し行う作業があれば、人や物品の移動が減るように工程や配置の見直しや昇降運搬の機械化を検討する。
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②連続作業時間の短縮 作業環境の改善や身体負荷の軽減が難しい場合は、一回の連続作業時間を短縮する。暑熱な環境での連続作業時間は1時間未満とし、他の作業をさせたり休憩を取らせたりして体温を正常化させる。複数の作業者で共同又は分担で作業をしたり、短時間で交代する体制にしたりすることで、各人が暑熱な環境からこまめに離れられるようにする。
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③休憩時間の確保 作業環境のWBGTが高く、身体作業強度が高く、作業服の通気性や透湿性が悪いほど体温は上昇しやすい。衣服の条件によっては15分で深部体温が上昇する。休憩中に、作業者の体温と体液量(心拍数、体重)を作業前の状態に戻すことをめざす。ACGIHの勧告では、WBGTの基準を2℃上回ると作業時間と休憩時間の長さを概ね1:1にすることが求められている。快適な作業環境であれば、休憩ではなく他の軽作業に従事してもよい。
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表1 身体作業強度等に応じたWBGT基準値
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(厚生労働省 令和7年「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」実施要綱 より)
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| 区 分
| 身体作業強度(代謝率レベル)の例
| WBGT基準値
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| 暑熱順化者のWBGT基準値 ℃ |
暑熱非順化者のWBGT基準値 ℃ |
| 0 安静 |
安静、楽な座位 |
33 |
32 |
| 1 低代謝率 |
軽い手作業(書く、タイピング、描く、縫う、簿記);手及び腕の作業(小さいペンチツール、点検、組立て又は軽い材料の区分け);腕及び脚の作業(通常の状態での乗り物の運転、フットスイッチ及びペダルの操作)。
立位でドリル作業(小さい部品);フライス盤(小さい部品);コイル巻き;小さい電機子巻き;小さい力で駆動する機械;2.5km/h以下での平たん(坦)な場所での歩き。 |
30 |
29 |
| 2 中程度代謝率 |
継続的な手及び腕の作業[くぎ(釘)打ち、盛土];腕及び脚の作業(トラックのオフロード運転、トラクター及び建設車両);腕と胴体の作業(空気圧ハンマーでの作業、トラクター組立て、しっくい塗り、中くらいの重さの材料を断続的に持つ作業、草むしり、除草、果物及び野菜の収穫);軽量な荷車及び手押し車を押したり引いたりする;2.5km/h~5.5km/hでの平たんな場所での歩き;鍛造 |
28 |
26 |
| 3 高代謝率 |
強度の腕及び胴体の作業;重量物の運搬;ショベル作業;ハンマー作業;のこぎり作業;硬い木へのかんな掛け又はのみ作業;草刈り;掘る;5.5km/h~7km/hでの平たんな場所での歩き。
重量物の荷車及び手押し車を押したり引いたりする;鋳物を削る;コンクリートブロックを積む。 |
26 |
23 |
| 4 極高代謝率 |
最大速度の速さでのとても激しい活動;おの(斧)を振るう;激しくシャベルを使ったり掘ったりする;階段を昇る;平たんな場所で走る;7km/h以上で平たんな場所を歩く。 |
25 |
20 |
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身体を冷却する服の着用をしていない等、特段の熱中症予防対策を講じていない場合における「休憩時間の目安」:暑熱順化した作業者において、WBGT基準値~1℃程度超過しているときには1時間当たり15分以上の休憩、2℃程度超過しているときには30分以上の休憩、3℃程度超過しているときには45分以上の休憩、それ以上超過しているときには作業中止が望ましい。暑熱順化していない作業者においては、上記よりもより長い時間の休憩等が望ましい。
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⑶作業中の注意
①巡視 暑熱な職場では、管理監督者が職場巡視により作業を観察し、作業が遅れているなど違和感があれば作業者の体調を確認することが望ましい。巡視中に熱中症対策用品の使用など現実に実施できそうな作業環境改善や作業負荷軽減の方策を想起できた場合は、それを管理者に提案する。
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②声掛け 暑熱な職場では、作業前、作業中、休憩開始時、作業再開時、作業終了時など、作業中を通して、監督者や作業者が意識的に声を掛けて、相互に体調を確認するよう習慣づける。あらかじめ当日の相方(バディ)を決めて、作業中に相互に声を掛け作業を観察させる。様子がおかしいと感じたら、速やかに管理者や監督者に通知して早めに休憩を取らせるよう提案することが望ましい。
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③申出 作業前や作業中に食事の未摂取や体調不良を申し出ることを躊躇する作業者は多いが、これらの者が最も熱中症になりやすい。管理監督者は、体調不良を訴えた者には申し出た勇気を讃えて、いつでも正直に申告できる雰囲気を普段から醸成しておく。
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④時刻調整 屋外作業では、時間帯ごとに日影を選んで作業を行う。一般に、午前中は建物の西側で、午後はその東側で作業をすれば、職場が日影になる時間帯が多くなる。屋内作業では、日射の強い日は屋根や壁が温まり、屋内の作業者に輻射熱が届き、夕方からは屋内のほうが屋外よりもWBGTが高くなることがあるので、最も暑くなる14時以降は身体負荷の高い職務を避けることを検討する。
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⑤疲労防止 身体負荷が続き疲労が蓄積して作業効率が低下すると、暑熱な環境下での作業に長い時間がかかるようになる。その際、筋疲労に脱水が重なると筋組織が壊れて生じた物質で腎機能が障害される。そこに暑熱な環境からのうつ熱が加わると体温は一層上昇しやすくなる。このように身体の疲労は熱中症を増悪させる。実際に、熱中症の統計から重症の熱中症は14~17時に多く発生する。すなわち、暑熱な職場では、身体負荷の高い作業や長時間の作業を回避するなどして、身体の疲労がなるべく生じないように配慮することが望ましい。
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⑥作業中止 ACGIHや熱中症予防対策要綱は、安静にしていても、①心拍数≧180-年齢、②体温>37.5℃、③体重減少≧1.5%のいずれかが生じた場合は、その者の作業は中止させるよう指導している。心拍数は、手首の親指側で橈骨動脈か頸部の内頸動脈を触って15秒間の脈拍数を4倍する方法などで測定する。体温は、市販の電子体温計を使って腋窩(腋の下)で測定する。共同利用する体温計の近くにはエタノール消毒液を整備する。体重は、脱水量を評価する指標なので、本来は下着以外を脱いで作業前に測定し、作業中や作業後に汗を拭きとって同じ服装で測定することが望ましいが、正しく測定することが難しい場合は、普段の体重を記録しておき、異常を感じた際に比較するなど現実的な測定法を工夫する。
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⑦水と塩の補給 発汗によって血液中の水と塩(ナトリウム)が失われる。1日3回の食事を摂り、発汗も少量であれば、腎臓が尿の成分と量を調節するので体液は自然に回復するが、短時間に大量の発汗があると血管内で脱水やナトリウム濃度異常が生じる。発汗量は1時間に1Lを超えることもある。そこで、水とナトリウムの喪失量に応じたこまめな補充が必要である。 労働安全衛生規則第607条は、事業者が「塩及び飲料水を備えなければならない。」と規定している。塩飴1個(食塩0.1~0.2g)につき100~200mLの水を飲む。大量の水だけを一気に飲むと、水分の多くは尿として体外に出てしまい、脱水は改善しない。また、血清ナトリウム濃度が低下して手足がこむらがえり(熱けいれん)を生じやすくなる。熱中症予防対策要綱は、ナトリウム40~80mg/100mL(塩分濃度0.1~0.2%)の飲料を勧めている。スポーツ飲料は、汗の成分に似たミネラルを含むのでそのまま摂取できる。のどの渇きに任せて飲むのではなく、作業開始前から飲み始めて20~30分ごとに200mL程度を飲むと体液が維持されやすくなる。
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⑧ウェアラブルデバイスの活用 近年、作業現場で体温・心拍数などを測定できるウェアラブルデバイスが数多く上市されている作業者の自覚症状に基づく申し出のみに頼ることなく、客観的な体調変化を把握する方法として有効な場合がある。ウェアラブルデバイスを使用する場合は、高体温・高心拍数などのアラートが出た際の対応方法(休憩、身体冷却、水分・塩分補給、受診等)をあらかじめ決めておき、作業者・管理監督者が把握しておく必要がある。また、製品によっては測定精度が悪く、科学的根拠に基づいてはいない場合があることに注意が必要である。
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⑷服装の選択
①クールビズ 2005年から、政府は、事務所における過度な冷房の使用を慎み、28℃の室温に合わせて、ネクタイや上着を着用せず快適で働きやすい開襟シャツなどの軽装で業務を行う「クールビズ」という取組を推進している。2012年から、環境省はポロシャツやTシャツなど一層カジュアルな服装も可とするスーパークールビズを提唱している。安全上や儀礼上の問題がなければ、かりゆしやアロハといった半袖短パンのほうが体熱を放散しやすくなる。
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②通気性 汗の蒸発を促すには、皮膚表面に風がよく通る服装が望ましい。長袖と長ズボンの作業服はゆったりと着られるサイズで皮膚や下着との間に空間ができるものがよい。
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③透湿性 皮膚と衣服の間で汗が蒸発した水蒸気が飽和すると汗が蒸発しなくなる。これを防ぐには、衣服の内側にある水蒸気が外側まで通過できるような微細な孔が開いた多孔質の素材で透湿性に優れた生地の衣服を選ぶ。
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④吸水性 肌着には、綿等の吸水性に優れた天然繊維が良い。近年は、繊維の形状、組合せ、縫製等の改良で、皮膚表面の汗を毛細管現象で吸い取る吸水性(吸汗性)に優れた多孔質の化学繊維が開発されている。
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⑤速乾性 肌着が吸い取った汗が生地の外側に向けて蒸発すれば蒸発熱が奪われ、肌着が冷えて皮膚からの熱放散も促される。速乾性に優れているのはポリエステル等の化学繊維であるが、近年は、湿ると緩み乾燥すると縮むことで水分を通過させやすい化学繊維も開発されている。実際には、肌に触れる側には吸水性が高い繊維を使用し、その外側には速乾性が高い繊維を組み合わせた吸汗速乾の素材が開発され、肌着やスポーツウエアとして利用されている。
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⑸熱中症対策用品の活用
①遮熱服 火炎や加熱炉など熱源に面した職場では、赤外線を透過や吸収せず反射するようにアルミ箔で表面を覆った消防服のような作業服を着用する。この衣服は逆に体熱の放散を妨げるものが多いのでこまめに脱いだり、後述の冷却製品を併用したりする必要がある。
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②送風機付き作業服 作業服下部の左右に取り付けた電池式の小型電動送風機で作業服の中に外気を送風し、その風が作業服の生地を通過せずに体表面をめぐって襟元や袖口から抜けることで、皮膚又は肌着からの汗の蒸発を促す作業服が約20年前から普及してきた。上半身全体に風が通るような着用法が望ましい。ただし、有害な化学物質の気中濃度が高い環境では使用できない。なお、気温が40℃など皮膚表面の温度より高い場合でも、発汗していれば、蒸発熱による冷却効果のほうが、取り込んだ外気による熱風の影響よりも大きいので、着用してよい。
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③冷風送気装置 圧縮空気を断熱膨張させて気体の温度を下げてホースで送気し、作業服の下に着用するベストやエアラインマスクの中に供給する装置が上市されている。安定的に冷えた空気が皮膚表面に対流する。圧縮空気の供給源にホースが届く範囲であれば広く活用できる。ただし、ホースが暑くなった床の上を通らないように注意する。
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④冷水循環装置 チラーで水を冷却する方式や氷水を入れた容器を背中に担ぐ方式で、チューブを張り巡らせたベストにポンプで冷水を供給する装置が上市されている。冷水が皮膚表面に対流して体熱が放散される。チラーの方式は、冷水の温度を一定に維持できるが電源やホースの引き回しが必要である。背負う方式は、氷が融解してしまうと効果が下がるが作業範囲の制限はない。また、近年は着用タイプ以外にも、フォークリフト等の座面に設置するタイプも上市されており、運転作業に活用されている。
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⑤つば・ひさし・垂れ 頭部はブリム(つば)の広い帽子やサンバイザー(ひさし)や垂れの付いた帽子で遮光し、輻射熱を遮断する。垂れに冷媒を挿入できるものもある。紫外線を遮光する日焼け防止用の用品であれば、赤外線を吸収しやすい黒色ではなく銀色や白色で赤外線を反射するものが良い。作業者が連続歩行する場合や通風が確保されている場合は、ひさしや垂れが風通しを遮らないものが良い。安全帽(ヘルメット)の内部は頭から出る汗で水蒸気が飽和して蒸れが生じやすい。そこで、通気孔付きのヘルメットや電動ファンで内部に送風するヘルメットが活用されている。ヘルメット後部に電動ファンを取り付けて後頸部に送風する製品も上市されている。
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⑥冷媒密着 保冷剤(冷媒)を肌に密着させて伝導によって体熱を奪う製品も数多く上市されている。冷媒を入れたベストやチョッキを着用するものや頸部に直接当てるものがある。冷媒には、氷水、相変化材料のジェル、ドライアイス、ペルチェ素子などが使用される。ただし、冷却効果や持続時間には限界があるので、現場の用途に応じて有効なものを選択して使用する。
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⑦プレクーリング 作業開始前や作業の合間に、細かい氷が液体状になったアイススラリーを体内に流し込み、消化管内で氷の融解により体熱を奪い、あらかじめ体温を下げる方法がある。長距離走などのスポーツでは広く使用されており、消防士など他の冷却方法が難しい時の対策として活用できる。アイススラリーの入手方法として、スラリー製造機による製造、既製品の飲用、過冷却冷蔵庫による製造などが挙げられる。
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⑹休憩場所の整備
①休憩場所 休憩場所は、作業場所から2~3分で移動できる涼しい場所に設置する。屋外では、風通しの良い日陰を選ぶ。扇風機で送風してもよい。屋内では、冷房温度を一般の事務所よりも少し低めの22~24℃に調節して作業者が効率的に体温を正常化できるようにする。全員が、ヘルメット、作業服、保護具、靴等を脱いで座れるようにして、体重計、体温計、秒針付きの時計を備え、清潔に維持する。横臥できる設備があればなお良い。
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②冷蔵庫・冷凍庫 休憩場所には、冷蔵庫と冷凍庫を設置し、飲料、氷、保冷剤等を共用と個人用を区別して保管する。休憩中にアイススラリーを飲用すれば体温の正常化が期待できる。
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③下肢冷却(図1) 短い休憩時間中に体温を下げるのは容易ではないが、プラスチックプールを整備して膝から下の下腿を冷水又は水道水に浸すことができれば、対流による熱放散が促され、効果が期待できる。
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厚生労働省 令和3年度「見える」安全活動コンクール 「「足湯」ならぬ「足水」ハウスでヒンヤリ!」より
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⑺健康管理
①始業前の体調確認 毎日の始業前に、管理監督者は、作業者の脱水、発熱、飲酒、欠食、寝不足について確認する。スポーツ飲料を摂取させるなどの対処をしても暑熱な作業に従事させるにはリスクが高いと判断した場合は、別の作業に従事させるか休養を取らせる。正直に体調を職場で申告できる雰囲気は普段から醸成しておく。
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②持病への配慮 糖尿病などの持病があったり自律神経に作用する薬を内服していたりすると末梢血管の拡張や発汗が不十分となり通常の作業者と比べて体温調節が困難になることがある。高血圧症、心臓病、腎臓病などは、主治医から水分・塩分摂取を制限されている場合もある。産業医や主治医に暑熱な環境で業務に従事していることを自ら告げて、個別に配慮が必要な事項があれば、医師から意見を述べてもらうか申し出るよう促す。
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③暑熱順化 暑熱な環境において約1週間連続して汗をかくことで、体温上昇時に早めに発汗が始まり、発汗量も増えて体表面から蒸発する水分が増えて、体温上昇を抑制しやすくなる。また、発汗によるナトリウム喪失も減り、熱中症リスクが低下する。これを暑熱順化と呼ぶ。WBGT基準値は、暑熱順化者とそうでない者で1~5℃異なる。暑熱な環境における業務が想定される時は、作業者に対して1週前からサウナやジム等を利用して発汗する生活を送るよう勧めておくのが良い。なお、暑熱環境にさらされない期間が数日あると暑熱順化されていない状態に戻ってしまうため、連休明けは注意を要する。
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⑻重症化防止
①応急処置 軽い脱水による熱中症は日常生活でも生じるが、体温上昇による重症化の防止が重要である。熱中症を疑う作業者は、風通しの良い日陰で衣服や靴を脱がせ、蓋を開けずにペットボトルを渡し、自分で開栓して飲めないようであれば直ちに救急搬送する。救急隊が到着するまでは、体表面を濡らして風を送り蒸発を促して体温を下げる。急速に冷却するには体表面に水道水をかけたりプラスチックプールに浸けたりするのが最も効果的である。熱中症は急激に悪化することがあるため、熱中症を疑う作業者は決して一人にせず、目を離さないことが重要である。
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②緊急連絡網の整備 職場で熱中症を疑う事例が生じたら躊躇せずに管理監督者に報告する。体温が高く応答が不自然など重症化を疑う場合は一刻も早く救急搬送する。その際、事業場内で誰に何を連絡してどのように搬送するのか、あらかじめ取り決めておき、作業者に周知しておく必要がある。2025年6月から、①報告体制の整備、②実施手順の作成、③関係労働者への周知は、罰則付きで事業者の義務となったことに留意が必要である。
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③熱中症予防管理者の選任 暑熱な職場では、STOP!熱中症 クールワークキャンペーン(令和7年2月28日付け労働基準局安全衛生部労働衛生課公表)が勧奨する熱中症予防管理者を選任し、職場におけるWBGT低減対策の検討、作業開始前の体調確認、職場巡視、労働者の水分・塩分摂取の確認など現実的な熱中症予防対策の推進を担当させる。
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④教育研修 職場の管理者、監督者、労働者に対して、熱中症の発生機序、現実的な予防対策、発生時の救急処置について衛生教育を実施する。
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